【医療ニュースPickUp 2016年4月26日】ジカウイルス感染症 カリブ海地域での感染が拡大?
2016年4月20日、WHOは「セントルシアの国際保健規則(IHR)国家担当者が、国内感染によるジカウイルス感染症の患者2人の症例を、PAHO/WHO(汎米保健機構/世界保健機構)に報告した」と公表した。各患者の血液検体は、3月29日にカリブ保健機関(CARPHA)に送らて検査を受け、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法検査により、ジカウイルス陽性であることが確認されたという。いずれの患者も、流行地域への渡航歴がなく、国内感染であることが分かった。
ジカウイルスの感染例は66の国と地域で確認
WHOの見解では、セントルシア(これまでに感染発生がなかった地域)にも、ジカウイルスが地理的に広がっていることを示している。セントルシアとは、カリブ海地域にある島国であり、他国から蚊が飛来するとは考えにくい地域である。今回報告された患者の、感染地域への渡航歴が無いことからも、国内感染例であることが確認された。
一方で、WHOでは「新たな国からの国内での感染伝播の報告による、全体でのリスク評価には変更はない」としている。ジカウイルスの媒介能力をもつ「シマカ属の蚊(日本ではヒトスジシマカ)」が生息する地域においては、ウイルスを持つ蚊が生息している以上、ジカウイルス感染の拡大を防ぐことは難しい。
重要なのは、世界中のさまざまな地域にこれらの蚊が広く地理的に分布していることであり、WHOは引き続き、利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスク評価を行っていくこととなる。
今年1月にはプエルトリコでも国内感染例が確認されている。その後も、2016年4月21日にはペルーで初の国内感染例を認めている。WHOでは同日、「Zika situation report」も公表している。
これによると、2007年1月1日から2016年4月20に、ジカウイルスの感染例は66の国と地域で確認されている。また、アルゼンチン、チリ、フランス、イタリア、ニュージーランド、ペルー、ポルトガル、アメリカでは、国内感染例が確認されているという。
参考資料
厚生労働省検疫所 FORTH
2016年04月21日更新 ジカウイルス発生状況について -セントルシア
http://www.forth.go.jp/topics/2016/04211305.html
WHO Zika situation report
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/21-april-2016/en/
同上 Zika virus infection – United States of America - Puerto Rico
http://www.who.int/csr/don/8-january-2016-zika-usa/en/
同上 Zika virus infection – Saint Lucia
http://www.who.int/csr/don/20-april-2016-zika-saint-lucia/en/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
昨年から世界的な問題となっている「ジカウイルス感染症」ですが、カリブ海地域にある小さな島国でも国内感染って、本当に拡大しつつあることが分かります。
今回取り上げた、セントルシアやプエルトリコは、カリブ海に浮かぶ小さな島国です。お隣の国や島とはかなりの距離がありますから、蚊が自分で飛んできたとは考えにくいです。もしかすると、お隣の国(島)からの荷物にくっ付いてきた?とも考えられますが、それでも、ジカウルスは南米大陸を出て、確実に北上しているようです。
気候の違いをみると、セントルシアやプエルトリコは、赤道に近い地域であり、いわゆる常夏の国ですよね。蚊なんて1年中、その辺を飛んでいるのかもしれません(行ったことがないので分かりませんが)。一度、感染が拡大し始めると、衛生環境なども関係してくると思いますので、それこそ「患者急増!」となる可能性もありそうです。
試しに、人口密度で日本も含めて比較してみると
セントルシア(約270人/㎢) < 日本(約340人/km2) < プエルトリコ(約400人/km2)
という感じのようです。プエルトリコって、日本よりも人口密度が高いのですね。
日本は、そろそろ「ヒトスジシマカの活動期」に入る頃です。特に妊婦さんや小さなお子さんは、十分注意してほしいと思います。
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