【医療ニュースPickUp】2015年5月8日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
連休明け デング熱流行シーズンへの準備を
2015年5月7日、デング熱を媒介する「ヒトスジシマカ」の活動シーズンになり、注意喚起を促すニュースが報道された。特にゴールデンウィークが明けたこの数日は、海外旅行をした人を通じて、国内に多くのデング熱ウイルスが持ち込まれる可能性があるため、注意が必要だ。
特に、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどへの渡航歴は、感染している可能性が高くなるため、充分な聞き取りが必要となる。
日本ではちょうどこの時期から、「ヒトスジシマカ」が活動を始める。公園や民家のベランダなど、水が溜まっている箇所で冬を越した、「ヒトスジシマカ」の幼虫が成虫となり、飛散を始めるためだ。
成虫の「ヒトスジシマカ」の活動はおよそ10月下旬まで(南西諸島はさらに長い)。これから半年の間は、個人による予防もさることながら、自治体などによる「蚊を発生させない対策」も重点的に行う必要がある。
デング熱は昨年夏、東京都の代々木公園で蚊に刺されたことによる発症が報告され、話題となった。それまでの数年間は、年間で数人程度の報告数だったが、2014年は160例を超え、自治体による調査や対策などが重点的に行われるようになった。
デング熱に感染しても重症化することは稀といわれるが、高齢者や小児が感染した場合、状況によっては死に至ることもあるため、注意が必要となる。特効薬もワクチンも未だ開発途中であり、対症療法を中心とした治療を行うしか、回復する方法がない。
人の場合、感染蚊による刺咬後3~7日の潜伏期間後に、発熱・発疹・疼痛(関節痛)の3腫脹とともに発症する。全数把握の4類感染症であり、8~9月が発症のピークとなる。
日本での報告数は、2014年では169例であったが、2015年1月からの報告数はすでに74件となっている。もっとも報告数が多いのが東京都(累計22件)で、中でも新宿区からの報告数が16週(4月19日)までで12例と、もっとも多い。
デング熱を起こすウイルスには4種類の血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)があり、1つの型に感染しただけでは免疫を獲得するにとどまるが、回復後に別の型に感染すると、重症化する可能性が高い。
特に近年は、温暖化の影響もあってか、罹患数の劇的な増加が確認されており、日本だけではなく世界的にも感染リスクが高まっている。
季節性インフルエンザが流行する地域も残っているこの時期(特に東京都と新潟県では未だ警報レベル)、デング熱もインフルエンザ様症状で発症するため、その鑑別が重要となる。
国立感染症研究所からの注意喚起だけではなく、地域における流行状況の把握も、今後は必要となるであろう。
参考資料
NHKニュース デング熱 帰国後の発症者増 蚊の活動に注意を
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150507/k10010071631000.html
国立感染症研究所 IASR Vol. 36 p. 136: 2015年3月号 デング熱・デング出血熱 2011~2014年
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ta/dengue.html
同上 IDWE速報データ2015年第17週 全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別
http://www.nih.go.jp/niid/ja/data/5605-idwr-sokuho-data-j-1517.html
厚生労働省 デング熱・チクングニア熱等蚊媒介感染症の対応・対策の手引き
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/dengue_fever_jichitai_20150428-01.pdf
同上 デング熱診療ガイドライン (第 1 版)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/dengue_fever_houdou_20150421-01.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
昨年夏、デング熱の患者が報告されたというニュースを受け、「え?日本でデング熱?熱帯の感染症じゃないの?」と、かなり驚きました。少なくても一般的には「デング熱って何?天狗?」という印象だったのではないでしょうか。
とはいえ、日本でも年間に数人の方が発症していたという事実があり、それならなぜ今まで、自治体は対応してこなかったのかとか、色々と疑問に感じた人も多いかもしれません。
それはあくまで「年間、数人しかいなかったから」であり、「日本で刺されたことが原因じゃなかったから(海外で蚊に刺咬されたことが原因)」に他ならないのだと思いますが。
しかし昨年には、「明らかに日本で蚊に刺されて発症した」ケースが報告されたことで、大きな話題となり、自治体がやっと重い腰を上げた形になりました。
最近、「虫対策」に関する商品も増えてきたと思います。
ここ数年のアウトドア(山登りやキャンプなど)ブームもあり、子どもたちが山や公園で遊びたがる時期でもありますので、こういったものも活用しながら、個人的な対策も十分行っていこうと思います。
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