【医療ニュースPickUp】2015年5月27日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
薬剤の適正処方?社会保障制度の立て直し政策とは
2015年5月19日、政府は経済財政諮問会議を開催した。議題の1つとして「経済再生と両立する財政健全化計画策定」に向けての議論が行われた。その中で塩崎恭久厚生労働相は、後発医薬品(ジェネリック)の普及率に関して新たな目標を設定する意向を表明した。
現在の目標値は「2017年度末までに、数量シェアで60%以上」であるが、この目標自体は2013年4月から変わっていない。
今回提出された塩崎厚生労働相による資料では、「後発医薬品の使用加速化(適切な目標の設定と具体的な推進策)」が明記されており、今後は、現在の状況を加味した新しい目標の必要性について述べている。
塩崎厚生労働相が提出している資料では、「経済再生と財政健全化を両立させる新たな社会保障制度」として、他にも以下のような政策の必要性を掲げている。
【グローバル視点の医薬品政策】
- 成長戦略の実現に向け、医薬品・医療機器・再生医療等製品におけるイノベーションの推進等
- 患者が地域で必要な医療を効率的に受けられるような医療の質の向上とICTを活用したネットワークの構築
- 薬剤使用の適正化(多剤・重複投薬防止、残薬解消)
- ICTの活用による重複受診・重複検査の適正化
【医療・介護の産業化と国際貢献】
- 介護ロボット等の活用、データヘルスにおける民間サービス
- 医薬品・医療機器・再生医療等製品におけるイノベーションの推進
- 保健・医療分野での国際貢献
【負担能力に応じた公平な負担の確保】
- マイナンバーの活用と併せての検討
- 保険料や自己負担について負担能力に応じた公平な負担
また、新たな視点に立った社会保障政策の方向性として、2020年の基礎的財政収支の黒字化目標達成を目標として掲げており、新たな政策の策定は本年夏を目標としている。
同時に、民間力の活用、技術開発、生産性の向上など、経済成長への貢献も検討する方針。
厚生労働省では今年2月より「保健医療2035策定懇談会」を開催し、20年後の2035年を見据えた課題解決に向けた取り組みを行うとしている。
この会議では、国民からの声を広く受け付ける、特設サイトもオープンしている。ここ数年話題となっている残薬への対処、ジェネリック推進への提案など、自分の声を国政へ届ける良い機会ではないだろうか。
参考資料
内閣府 第6回会議資料:会議結果 平成27年 議事次第
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0519/shidai.pdf
同上 経済再生と財政再建を両立させる新たな社会保障政策(塩崎臨時議員提出資料)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0519/sankou_01.pdf
同上 甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0519/interview.html
厚生労働省 第5回「保健医療2035」策定懇談会 資料
資料3 「2035年の保健医療」に関する提案・意見の募集について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000083554.pdf
保健医療2035
“塩崎大臣へ、私のアイディア2035”(「2035年の保健医療」に関する提案・意見の募集)について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/opinion/
ミクスOnline 厚労省 ジェネリックの新数量シェア目標 18年3月末までに「60%以上」で決定
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/44061/Default.aspx
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
厚生労働省が公表している資料によると、2014年3月現在でのジェネリックの割合は、51.3%でした。
この時点でのジェネリックへの移行推進としては、健保組合によるリーフレットなどの配布、ホームページへの掲載、ジェネリック医薬品の差額通知の発出などがあったようです。
一方、地方自治体(国民健康保険)でも、ジェネリック医薬品利用差額通知書の送付、ジェネリック医薬品希望カード・ジェネリック医薬品希望シールなどの配布を行っているようです。平成25年度あたりからは、生活保護受給者に対して、可能な限り後発医薬品を処方するよう努める、ともあります。
それだけ色々な動きがあっても、移行がなかなか進まない理由はなんでしょうか。これは、最近話題となることが多い残薬の問題とも、根っこは似ているのではないかと、個人的には思います。
例えば、子どもの医療費って、●歳までは無料(自治体負担)というところも多いですが、そういった地域であれば、自分の懐は痛まないので、主治医に対して敢えて「ジェネリックにしてください」とは言いません。高くても安くても、保護者は気にしないのです。効くかどうかが一番の問題。
医療費負担が下がる、後期高齢者も同じ。余っているからムダということは分かっていても、自分の懐から出るのが少額であるほど、先発品かどうかは気にしません。
現在の高齢者は「お医者様」という感覚の人がまだまだ多いですし、自分から「ジェネリックにしてください」とは言い出しにくいのもあると思います。残薬も然り。残っていることを知られたくない、という心理もあるでしょう。
最近、残薬の問題で薬剤師の活躍が注目されつつあります。個人的には、こういったところをもっと活用できる方法も考えてみると良いのかな、と思います。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート