【医療ニュースPickUp】2015年7月2日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
地域包括ケア求める研究がスタート 医療ビッグデータの活用への第1歩
2015年6月29日、科学技術振興機構(以下、JST)は、筑波大学を中心とした「医療・介護の地域包括ケア求める研究がスタートした」と公表した。この研究は、田宮菜奈子筑波大学医学医療系教授が代表、高橋秀人福島県立医科大学教授、野口晴子早稲田大学教授が副代表を務め、東京大学、岡山大学、横浜市立大学、福岡大学、東京都長寿医療センター研究所、社会保障人口問題研究所、産業技術総合研究所、保健医療科学院などが加わる。研究期間は2年間。
この研究が目指すところは、「医療・介護における地域包括ケアのための効果的サービス提供のあり方を探るとともに、地域や国の政策立案に貢献する研究拠点を確立し、明日の日本を築く礎となることを目指す」というもの。
この研究では
- 全国データをはじめとする種々のビッグデータを活用した介護保険に対する調査・分析
- 介護保険サービス利用の実態把握とサービスの質の評価
- 地域でケアを必要とする者とその家族のニーズの実体と各種サービス利用の関連の分析
- 医療と介護のより効果的な連携やバランスの検討等、総合的な解析
- 全国データを入手し、独立したデータベース室を設けて適切に管理・利用する
- 医療保険及び各市町村介護保険のレセプトデータ等を各モデル地域拠点で適切に管理する
- データ研究支援センターおよびモデル地域への実装拠点の整備
- 質の高い地域包括ケアに向けた政策決定に資する各都道府県および市町村への還元資料算出システムを構築
- 構築したデータベースに基づく分析結果や、地域別の還元資料をモデル市町村に還元
- 地域のPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクル実施を支援
- 根拠に基づく政策策定に関する担当者の教育の実施
などを行うとしている。
2015年3月に、国は「各地自治体における“地域包括ケアシステム”を構築する」という方針を打ち出した。今後は、医療と介護をどう連携させるか、地域にある社会資源をどう活用するか、高齢者の生活をどう守るのか、具体策の検討が、各自治体で始まっている。
この研究が今後、自治体や国における医療・介護施策に貢献することを期待したい。
参考資料
Science Portal 医療・介護の地域包括ケア求める研究スタート
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2015/06/20150629_01.html
筑波大学 ビッグデータを活用した地域包括ケア推進のための研究プロジェクトを開始!
http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/150625tamiya1.pdf
厚生労働省 地域包括ケアシステム
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
厚生労働省の資料を読むと、少子高齢化が齎す影響について、様々なことが書かれています。やはり、支える方の労働者人口は減少し続けるので、結果的に「高齢者を誰が支えるのか」という問題がすぐそこまで来ているのは確実ですね。今さら?という感じもしなくはないのですが。
今後の日本は「高齢者同士で助け合って支え合わないと、ムリ」という風潮になってくるかもしれません。医療や介護は、雇用を生じる一方で、慢性的な人手不足な分野です。特に介護の分野は、もっと給料を上げるとか、国をあげての政策を進めないと、先が見えない分野だと思います。誰だって、安い給料でツライ仕事はしたくないですよね。
そう考えると、ロボットの開発とか、外国人介護者の導入とか、これまではあまり受け入れられなかった施策も、これからは進んでいくのでしょう。
ところで、最近よく耳にする「医療ビッグデータ」という言葉。すでに10年前くらいにはあちこちで囁かれていましたが、「これを使うと何が分かるか」というところまで、医療+介護およびITの全分野に精通した人は、いなかったのかもしれません。自分自身、大変興味のある分野ではありますので、今後、この研究がどうなるか、注目していきたいと思います。
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