【医療ニュースPickUp 2015年12月15日】子宮頸がんワクチンの影響 名古屋市の調査結果および厚労省の審議結果より
2015年12月14日、名古屋は、同年9~10月に行われた「子宮頸がん予防接種調査結果」を公表した。2015年8月12日時点で名古屋市に住民票のある、中学3年生から大学3年生相当の年齢の女性、およそ7万人を対象に行われた住民へのアンケート調査の結果であり、回収率はおよそ43%(7万人中3.8万人)。全国でも例を見ない、自治体主導の大規模調査であり、関係者からの注目を集めていた。
名古屋市総合リハビリテーションセンターでは支援が開始
この調査では、月経不順や月経異常など月経に関することから、「身体が痛い」「頭痛がある」「疲れやすい」などの24種類の症状があるか、アンケートによる回答を得た。結果を公表した河村市長は、女性の場合は年齢によっても「痛みを感じやすい」などの特徴があり、それらの数値を補正し、専門化による分析を行った結果、接種者と未接種者との間で「症状に(統計的な)有意差はなかった」との見解を発表した。
名古屋市では、かなりの予算をかけて予防接種事業に力を入れており、2016年1月からは名古屋市内に、子宮頸がん予防接種による健康被害について、専用の相談窓口を設けるという。名古屋市総合リハビリテーションセンターでの支援を始めるとも述べている。
一方、同年12月13日に大阪市内で行われたシンポジウムでは、子宮頸がん予防接種後の副作用に苦しむ女子生徒が、自らの思いを語った。この女性生徒は現在高校生だが、中学1年で接種を受けた直後から体調を崩し、現在も月に数日しか登校できない日々が続いているという。
また、2015年12月14日には厚生労働省の疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会)の審議が行われ、子宮頸がん予防接種(HPVワクチン)や日本脳炎などの予防接種後に発症した副作用についての審議を行った。
その結果、HPVワクチンを含む5件の症例に対し、予防接種と疾病(多発性の疼痛、検体権、下肢の痛みなど)との関連性を認めた。ただしこの中には、日本脳炎予防接種による健康被害も含まれている。
「子宮頸がん予防接種の接種者と非接種者間での(症状の)相違はない」という調査結果がある一方で、実際に予防接種後の副作用に苦しむ人たちがいて、予防接種と疾病・障害との因果関係があると認められる人たちもいる。
予防接種による副作用は、どのようなワクチンにでも一定数のリスクがあり、子宮頸がんワクチンに限ったことではない。今回名古屋市による調査結果は、「健康に関心が高い人ほどアンケートに回答した」など、データそのものにも偏りのある可能性が否定できない。今後、データの信頼性については議論を呼ぶ可能性もある。
参考資料
名古屋市 子宮頸がん予防接種調査を実施します
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000073419.html
同上 子宮頸がん予防接種調査票見本
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000073/73419/mihon.pdf
名古屋市長河村たかし 定例記者会見 H27.12.14.wmv
https://www.youtube.com/watch?v=X1m5wTR1Rlw&feature=youtu.be
産経ニュース 子宮頸がん調査「43%回収」 名古屋市、l12月に結果公表へ
http://www.sankei.com/life/news/151119/lif1511190028-n1.html
朝日新聞 子宮頸がんワクチン被害少女が訴え「薬害の怖さ知って」
http://www.asahi.com/articles/ASHDF76F2HDFULBJ008.html
厚生労働省 第111回疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会
審議結果
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000106916.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
子宮頸がんワクチンの問題は、どうなるのでしょうか。
名古屋市の調査結果は、ある意味、衝撃でした。「因果関係がある」という結果を期待していたわけではありませんが、「特に因果関係は無い」という結果が出たということは、今後、他のワクチンと同様に、「接種を推奨」される可能性も出てくるのではないかと思います。確かに厚生労働省も「因果関係あり」と認めてはいますが、この5例の中には、日本脳炎が1例、ポリオが1例、PCV+Hib+DPT-IPVが1例、そしてHPVが2例です。これだけで比較するのは難しいことですが、敢えて深読みするなら、他のワクチンよりもHPVの方が多い?とも見えてしまいます。
私にも小学生の娘がいますので、彼女が中学生になる頃には、どうなっているのかという心配があります。世界的には、他のワクチンと同様に扱われている国もあり、学校で女生徒にだけ接種する、という地域もあります。
確かに、子宮頸がんは怖いものですが、それを(今のところは)100%予防できるか分からない予防接種により、子どもたちの未来に影響がある可能性があるなら、個人的には「娘には受けさせたくないなぁ」というのが、本音ではあります。
今後、子宮頸がんワクチンがどうなっていくのか、動向には注目していきたいです。
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