【医療ニュースPickUp 2016年2月23日】朝食の欠食と脳卒中との関連が明らかに JPHC研究 成果報告より
2016年2月4日、国立がん研究センターはJPHC研究の成果報告として、「朝食の欠食と脳卒中との関連性」に関する論文が公開されたと公表した。この研究により、朝食を毎日摂取する群と比較し、週に0〜2回しか摂取しない群では、脳出血のリスクが高くなることが示唆されたという。この研究成果は、アメリカの専門誌「Stroke」に掲載され、Webでも公開されている。
今回は「朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係」についての検討
研究チームによると、朝食の欠食により、肥満、高血圧、脂質異常症、および糖尿病のリスクが上がることについては、これまでも多くの研究で示されてきたが、一方で「朝食の欠食」が、どの程度「脳卒中および虚血性心疾患のリスク」を上げるのか、という観点での研究はほとんど見受けられなかった。
特に、脳卒中に関する研究はこれまで行われてこなかったため、今回、「朝食欠食と脳卒中および虚血性心疾患との関係」についての検討を行ったという。
今回の研究では、平成7年(1995年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、平成10年(1998年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2015年現在)管内に居住していた住民への多目的コホート研究を行った。
そのうち、45~74歳の男女で、循環器疾患およびがんの既往がなく、アンケートの朝食に関する項目に回答した82,772人(男性38,676人、女性44,096人)について、分析を行った。
研究チームは、研究開始のアンケート調査により、被験者を4つの群に分けた(朝食の回数が、週に0〜2回、週に3〜4回、週に5〜6回、毎日)。その後、平成22年(2010年)まで追跡調査を行ったところ、朝食を週に0〜2回摂取する群の発症リスクは、朝食を毎日摂取する群と比較して循環器疾患で14%、脳卒中全体で18%、脳出血で36%高くなっていた。
一方で、くも膜下出血、脳梗塞および虚血性心疾患については、朝食の回数との関連は見られなかった。
これまでにも、朝食の重要性が指摘されてきたが、本研究は、朝食の欠食と脳出血リスクとの関連性を示した、世界初のコホート研究であり、今回の結果は「朝食の重要性」を支持するものとなる。
脳出血の最も重要なリスク因子は高血圧だが、朝食の欠食から空腹によるストレスなどが生じ、朝の血圧が上昇することで、脳出血のリスクが高くなっていた可能性が示唆された。
その一方で、朝食欠食とくも膜下出血、脳梗塞および虚血性心疾患との関連は見られなかったが、その理由としては、日本人は欧米と比較すると虚血性心疾患の発症率が低く、くも膜下出血および虚血性心疾患などについて統計学的な検討を行えるほどの症例数が無かったこと、脳梗塞に関しては、早朝の血圧上昇が脳出血ほどの重要な因子ではない可能性があるという。
参考資料
国立研究開発法人 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター
多目的コホート研究(JPHC Study) 朝食の欠食と脳卒中との関連について
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3768.html
PubMed
Association of Breakfast Intake With Incident Stroke and Coronary Heart Disease: The Japan Public Health Center-Based Study.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26732562
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
親から子供へ「朝ごはんはちゃんと食べなさい!」というお小言は、どこの家庭でも1度は聞かれる言葉ではないでしょうか。その理由としては「朝食を食べないと午前中の活動量が低下する」とか「授業中に頭が回らない」などのことだと思いますが、脳出血にも関連性があるとは。確かに、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などのリスクは考えられますので、突き詰めれば「脳卒中および虚血性心疾患のリスク」も上がるわけだから…という点で、納得です。
高校生くらいの頃、朝の通学電車や朝礼で「貧血で倒れる」女子をよく見かけましたが、私自身はなぜか朝から食欲がありましたし、親からも「朝ごはんはちゃんと食べなさい!」と言われ続けて育ったので、一人暮らしをしている時期でも、朝ごはんは欠かさず食べていました。
中学、高校ともに、朝っぱらからグラウンドを走り回る生活(クラブ活動です)だったことも、あるかもしれません。だって、朝ごはんを食べないと、走れないのですよ、本当に。
高校生の頃に何度か、寝坊して「朝食なし」で学校(朝練)へ行ったこともありますが、学校までたどり着くまでの間に必ず、パンやおにぎりを食べていました。
中高年といわれる年代になった今でも、この習慣は続いていますが、友人・知人の中には「朝食は食べない」という習慣の人もいます。そういえばその人たちはみな、やや肥満気味かも。この研究結果を、ぜひ読んでほしいと思います。
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