【医療ニュースPickUp 2016年7月22日】「がんの5年相対生存率」データを公表 国立がん研究センター
2016年7月22日、国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区、略称:国がん)がん対策情報センター(センター長:若尾文彦)を中心とする厚生労働科学研究費補助金「都道府県がん登録データの全国集計と既存がん統計の資料の活用によるがん及びがん診療動向把握の研究」研究班(研究代表者:がん対策情報センター がん登録センター 松田智大)は、「地域がん登録」データを活用して「がんの5年相対生存率」を公表した。
21県の644,407症例の集計
「地域がん登録」のデータは、これまでにも何度か活用されており、地域がん登録事業実施全県への呼びかけにより行われた統計では、2011年2月に「2000年~2002年の診断症例」から集計されたものが公開され、2013年には「2003年~2005年の診断症例」から集計されたものが公開された。今回で3回目になる。
今回は21県の644,407症例(参加は27県)について、全部位と部位別、臨床進行度別、年齢階級別で、5年相対生存率の集計が行われた。
全部位での5年生存率
今回の集計結果では、男性59.1%、女性66.0%、男女計62.1%となり、前回よりも3ポイント以上向上している。しかし、その背景には、前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんが増えたことの影響も考えられるという。
部位別5年相対生存率
男性:前立腺、皮膚、甲状腺、膀胱、喉頭、結腸、腎・尿路(膀胱除く)などが高く(70-100%)、白血病、多発性骨髄腫、食道、肝および肝内胆管、脳・中枢神経系、肺、胆のう・胆管、膵臓が低かった(0-39%)
女性:甲状腺、皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部、直腸などが高く、脳・中枢神経系、多発性骨髄腫、肝および肝内胆管、胆のう・胆管、膵臓が低かった
年齢階級別生存率
加齢とともに生存率が低くなる傾向があるものの、若年者より高齢者の生存率が高い部位や、年齢と生存率との相関が明確ではない部位もあった
また、部位に関わらず、臨床進行度が高いほど生存率は低下、逆に早期で診断されると生存率が良好であることが分かった。
「地域がん登録」は、1950年代よりスタートしているが、2012年診断症例で初めて47全都道府県の登録データが揃い、今回の集計対象診断年(2006~2008年)では、前回集計の7県から21県に大幅に増加している。しかし日本のがん登録は、がん登録の標準化、データの精度が未だ十分ではなく、罹患数・率や生存率をそのまま他県と比較するためには、まだまだ課題があると指摘されている。
参考資料
日本のがん生存率の最新全国推計公表
全部位5年相対生存率62.1%(2006-2008年診断症例)
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160722.html
がん情報サービス 「全国がん罹患モニタリング集計 2006-2008年生存率報告」(7月22日更新)
報告書
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/monitoring.html
同上 最新がん統計
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
先週に続き、国立がん研究センターの統計データに関するニュースです。
「地域がん登録」という言葉を耳にするようになって久しいですが、今回初めて、「全国がん罹患モニタリング集計」の報告書を見てみました。実際に「地域がん登録」のデータを提出しているのは47都道府県すべてのようですが、では一体、何を登録しているのか?という疑問がありましたが、それもおおよそは理解できたと思います。
この集計(報告書?)には、「目標モニタリング項目及びコード区分」が明記されています。その中には、登録すべき項目が明記されていますが、これがなかなか、ボリューム大のように思います。確かに、全国から集まったデータで何かの集計・分析を行うには、かなり詳細なデータの方が良いのは分かりますが、全がん患者さんの分のデータを登録するのは、かなりの労力が必要だと思います。
大よそは標準 DBSに則っているようですが、中には独自システムで対応している県もありました。そういったところも、統一されたシステムへの項目対応などをしているようですが、本当の意味で、全国統一データにより集計されるまでには、まだ時間がかかりそうです。
高齢化の進展に伴い、がん罹患者数は年々増え続けていますが、治療技術の進歩により、5年生存率が向上、というのも現実にはあります。しかしそれでも、全死因のトップががんであることには、変わりありません。
こういったデータが、単に「長生きできるようになったね」で終わるのではなく、がん予防やがん治療の研究者の支えとなり、いずれは「がんにならない方法」が見つかると良いのですが。
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