【医療ニュースPickUp 2017年4月13日】厚生労働大臣 予防医療も見越したガバナンス改革の必要性を明示
2017年4月12日、首相官邸において、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が開催された。この会議には臨時議員として塩崎厚生労働大臣が出席し、「予防・健康・医療・介護のガバナンス改革」題された資料(以下、本資料)を提出した。
本資料には、今後の日本の保健医療福祉における「自発的な行動変容を促すことが必須である」と明示されている。
新たに「がん検診」と「歯科検診」の実施状況等を追加
本資料には、医療費の抑制に向けた動きとして、保険者機能の強化、保健ガバナンス強化(都道府県)、診療報酬改定、支払基金改革、薬価制度改革などが挙がっている。
また、介護費の抑制に向けた動きとして、保険者機能強化、保健ガバナンス強化(都道府県)、介護報酬改定が挙がっている。
保険者機能の抜本強化に向けては、全ての保険者による自発的な取り組みが必要であるとし、法定義務である特定健診・特定保健指導の実施率の低さ、あるいは予防・健康づくりの取り組みの不十分さに対し、健康保険料の加算(ペナルティ)および減算(インセンティブ)が必要であるとしている。
また、各制度に対する共通の評価指標に、今後は新たに「がん検診」と「歯科検診」の実施状況等を追加するとしている。
一方、都道府県による保健ガバナンスの抜本強化としては、大きく2つの検討課題を挙げている。
- 地域における「予防・健康・医療・介護」は密接に関連するが、制度としてはバラバラで、都道府県の役割が限定的である
- 都道府県を、個人・保険者・医療機関等の自発的な行動変容を促す司令塔と位置づけ、制度(権限)・予算(財政)・情報(データ)・人材などの面で、抜本的な保健ガバナンスの強化が必要
内閣府ではほかにも、「医療提供状況の地域差」なども検討課題としており、今後の各地域や各保険者での取り組みが、注目されている
参考資料
平成29年第5回経済財政諮問会議 配布資料
資料4 予防・健康・医療・介護のガバナンス改革(塩崎臨時議員提出資料)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0412/shiryo_04.pdf
同上 配付資料 医療提供状況の地域差~評価・分析WG(4月6日) 藤森委員提出資料より~
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2017/0412/sankou_01.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ひさしぶりのニュース記事です。今回は新年度ということもあり、内閣府の諮問会議の内容をピックアップしました。
本資料では、医療費の伸びと介護費の伸びの原因が挙げられています。これによると、医療費は過去10年間で28%上昇、その要因の約半数は、高齢者の増加にあり、予防・健康づくり、受診行動の変容が必要だそうです。
それ以外の要因に対しては、医療費の適正化や薬剤等の費用の適正化が必要、となっています。一方、介護費用が上昇する要因は、やはり高齢者の増加。今後はますます、この部分への対策も必要となりそうです。
折りしも、来年度は「診療報酬と介護報酬の同時改定」があります。今回のような「医療や介護の連携」とか、「都道府県が司令塔となって」という話は、数年前からもちらほら言われてきたようにも思います。
しかし今回、塩崎厚生労働大臣が、改めて「特定健診・特定保健指導の実施率が高いところにはインセンティブ、低いところにはペナルティ」という発言をしていることから、今後はますます「予防」の面における、保険者や都道府県の役割が、大きくなってくるのでしょう。
おそらく、診療報酬・介護報酬の改定にも、このあたりの考えが盛り込まれるのではないかと思われます。
なお、本資料をよく見ると、「都道府県本庁に、行政医師が1名しかいない県が10県」だそうです。
行政保健師、行政看護師はそれなりの人数がいると思うのですが、医師となるとやはりまだまだ不足しているようです。こういったところにも、「医師」に対するニーズがあるのかもしれません。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート