【医療ニュースPickUp 2017年9月15日】医療事故が年間3882件、うち死亡は338件。日本医療機能評価機構が公表
2017年8月28日、日本医療機能評価機構は「2016年に報告された医療事故」についてまとめた年報を公表した。それによると、2016年1月~12月の1年間に報告された医療事故は3,882件。そのうち8.7%にあたる338件で、患者が死亡していることがわかった。
また、同じ期間に報告されたヒヤリ・ハット事例は85万6,802件で、そのうち薬剤に関する事例が27万8,376件と、全体の3割を超える結果となった。
日本医療機能評価機構は、医療事故の発生予防、再発防止のために医療事故や、ヒヤリ・ハット事例の収集・分析を行い、定期的にこれらの報告書や医療安全情報などを提供している。
「当事者職種」は、看護師(2,409人)、次いで医師(2,280人)が突出して多く、他の職種は2桁以下となっている。
「事故の概要」では、「療養上の世話」において発生した事故が最多で1,430件(全体の36.8%)。
中でも整形外科(373件)、精神科(231件)での発生が多く見られた。さらに「治療・処置」における事故が1,168件(30.1%)となり、この2つで医療事故全体の3分の2を占める結果となった。
また、「事故の程度」で「死亡」338件以外の内訳を見ると、「障害残存の可能性がある(高い)」は398件(10.3%)、「障害残存の可能性がある(低い)」は1,101件(28.4%)と、生存している患者のうち4割近くが、何らかの障害が残った可能性が高いという結果になった。
「発生要因」においては、「確認を怠った」が1,167例(11.3%)と最多。次いで「観察を怠った」が1,090例(10.5%)、「判断を誤った」が995例で9.6%と、当事者の行動に関わる要因が多くを占めているが、「患者側」が要因となっている報告も1,164例(11.2%)が見られており、療事故の原因が必ずしも医療者側とはかぎらない状況がうかがえる。
さらにヒヤリ・ハット事例として報告された85万6,802件のうち、もし実施していたら死亡もしくは重篤な症状に至ったと考えられるケースは3,847件に及んだ。
医療現場では、確認・観察を徹底するための、さらなる業務見直しが重要と言える。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
「ヒヤリ・ハット」や「医療事故」という言葉は、医療者であればなるべく「聞きたくない言葉」かと思います。でも医療者だって人ですから、何一つ間違いを起こさないということはありません。問題は、起こさないように努力するべきである、という事かと思います。
私自身、医療事故までは無かったのですが、看護師として手術室に勤務しているときは、「ヒヤリ・ハット」の経験はあります。それは「投薬する薬剤を間違えた」などの事例でしたが、幸い、実際に投与する直前で気付き、患者さんへの影響を及ぼすようなことはありませんでした。
でもそれは、手術室勤務だったからなのか?と、今では思います。
手術室って、夜間や休日はギリギリしか人員がいませんが、平日の日中はそれなりに人員がいます。
薬剤や医療機器を使用する際、必ず「ダブルチェック」を行うのですが、ふと気づくと誰も周りにいなくて……という状況は、手術室ではまずありません。
そこに患者さんが居る限り、必ず1名以上の医師と1名以上の看護師がいる、というのが一般的かと思います。となると、ダブルチェックを看護師同士で出来なくても、同じ部屋にいる医師との間でダブルチェック出来れば良いわけです。これなら、ヒヤリ・ハットの確率も、各段に低くなります。
それでもやはり、「指示書にある薬剤の名称」と「手にしている薬剤の名称」が違うことが、時々はありました。一番多い間違いは、「ピオクタニン」と「インジゴカルミン」だったかもしれません。
実際、この間違いで術中使用寸前までいってしまった同僚もいます。もちろん、ヒヤリ・ハットの対象です。直接介助看護師が、清潔なシリンジで吸引する直前に「違うのでは?」と気付いて、発覚したのだそうです。
薬液の色が同じ(に見える)もの、バイアルの見分けがつきにくいもの、薬品の名称(成分名ではなく、商品名ですね)がそっくりなもの、医療者の周りには「間違い」を起こすものがたくさんあります。特に多いのが、今回の報告書でも結果が出ている「薬剤」ですよね。
どうにかならないのか、と常々思っていましたが、やはり今でも「どうにもなっていない」ものは、たくさんあるのかもしれません。
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