【医療ニュースPickUp 2015年11月20日】RSウイルス感染症、全国的に患者数が増加中 名古屋市が注意喚起
2015年11月18日、名古屋市は、RSウイルス感染症患者数が増加していることを受け、市のWebサイトで注意喚起を行った。名古屋市内における10月期のRSウイルス感染報告数は、233件で、前月比5.18倍となった。
過去10年間を比較すると、もっとも多い報告数
RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症であり、生後1歳までに半数以上、2歳までにはほぼ100%の乳幼児が初感染するといわれている。
感染後は、およそ4日から6日間程度の潜伏期間の後に発症、発熱、鼻汁、咳等の症状が、2~3日続くことが多い。特に、乳児が生後数週間から生後数か月に感染した場合、肺炎などの重篤な症状を引き起こす可能性がある。
RSウイルス感染症は例年冬期に報告数のピークが見られるが、今シーズンの名古屋市内の44週時点での報告数は、ここ5年間でもっとも多かった平成25年に続く多さとなっている。
東京都感染情報センターが公表しているデータによると、過去5年間の比較では、45週時点でもっとも報告数が多くなっており、46週時点ではやや減少傾向にあるが、中央区、新宿区、荒川区、八王子市などで、報告数が多くなっている。
全国的な報告数では、過去10年間を比較すると、44週時点でもっとも多い報告数となっている。総報告数は4740であり、第40週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。
感染経路は、飛沫感染と接触感染が主なものである。特に家族内では、これらの感染経路が重複し、伝播しやすいことも報告されている。仮に、家族内にハイリスクグループ(乳幼児や慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者)がいる場合は、重症例が生じやすいとされており、適切な感染予防策を講じることが重要となる。
例年、RSウイルスの感染者数は夏頃より始まり秋に入ると急増し、年末をピークに春まで流行が続くことが多い。2015/2016シーズンも、8月下旬から患者報告数が増加し始め、9月以降は、過去数シーズンと同様に報告数が増加しているため、注意が必要である。
参考資料
名古屋市 RSウイルス感染症 - 前月比の5倍以上報告されています -
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000076026.html
東京都感染症情報センター 定点報告疾病集計表週報告分
http://survey.tokyo-eiken.go.jp/epidinfo/weeklymap.do
国立感染症情報センター IDWR 感染症週報 2015年44週(10月26日〜11月1日): 通 巻 第17巻 第44号
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2015/idwr2015-44.pdf
同上 IDWR 2015年第37週(9月7日〜9月13日):通 巻第17巻第37号
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2015/idwr2015-37.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
乳幼児や高齢者がいる家庭では、もっとも恐れる感染症の1つが、RSウイルス感染症ではないでしょうか。
インフルエンザも怖いですが、特に1歳未満のお子さんは、重症化するのが怖い感染症の1つだと思います。
世の中には非常に数多くの感染症がありますが、保育園などに通う子どもたちの間では、ちょっとしたことで流行しますし、誰もが重症化するわけではないので、知らぬ間に他の子どもへ感染するケースも、多いのではないでしょうか。
ちょっと咳込んだり、多少の熱が出るくらいでは、適切な感染予防策を徹底するのは難しいのが、現実なのだと思います。特に0歳児、1歳児保育の現場では、1人が感染症になれば、順番にうつっていくのも、ある意味仕方のないことかもしれません。
とはいえ、同じ乳幼児でもみんなが感染して、重症化するわけではないですよね。早産、生まれた時に低体重児だった、呼吸器や循環器疾患の既往があるなど、「ハイリスク」となる条件があります。
もちろん、それ以外は感染リスクが無いわけではありませんが、必要以上に怖がるのではなく、他のウイルス性感染症にも気を付けながら「ウイルス性感染症に対する予防策」を徹底することを、考える方が先決ですよね。
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