【医療ニュースPickUp】2015年6月1日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
日本医師会が、医師による医療機器開発を支援
2015年5月20日、日本医師会は、医師主導による医療機器の開発・事業化を支援する取り組みを始めることを公表した。2015年6月上旬から、実用化に向けた支援業務を始める。
日本医師会では、医師主導による医療機器開発の必要性として、日本の医療機器市場の規模は、アメリカに次いで既に世界第2位であるものの、日本からの医療機器の輸出金額は輸入金額の半分にも満たず、輸入超過の状態が続いていることを挙げている。
今回の取り組みの目的としては、臨床医による新しい医療機器開発を支援することで、国民により高い治療技術を提供していくことを挙げている。そのための方法として、医療機器の開発や事業化を、円滑に進めていくための窓口を医師会に設置する。
ここに至るまでには、もう1つの背景もある。医療分野の研究開発及びその環境整備の中核的な役割を担う機関として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)が、2015年4月に設置されたことだ。
日本医師会では今回、AMEDを活用することで、新しい医薬品や先進治療等の開発を促進する。
新しい医療機器の開発から事業化に至るまでの相談業務は、専門知識を必要とする。そのため、本支援業務ではAMEDと協力して実務を行っていくことで、試作品の開発から知的戦略の立案、海外での事業化に至るまで、広く支援が行えるのではないかと期待感を示している。
日本医師会による実際の取り組みとしては
- 【ステップ1】:医師のアイデアを募集し、市場調査の部分を含めて、医師のアイデアやシーズの目利きを行い、この目利き部分で、開発や事業化の可能性が高いと判断された場合、個別面談により進め方を決定
- 【ステップ2】:医師の希望を踏まえ、具体的にはAMEDへの橋渡しや相談業務、コンサルティング会社の紹介などを行う
としている。
ステップ1までは、医師であれば誰でも無料で進めることが出来るが、日本医師会の会員では無かった場合、ステップ2の段階で「登録料」として1万円を徴収する。
今回、開発の対象とされているのは、メスや鑷子などの鋼製小物、カテーテルやペースメーカー等の治療に用いる器具や機器だけではなく、PCやスマートフォン上で稼働するプログラムなども含まれている。
日本医師会の羽鳥裕常任理事は「本支援は、開発アイデアを持ちながらも、日常診療に忙殺されている医師への支援を行うものである。多くの若手医師に対する治療技術のさらなる向上への啓発という意義も大きい」と述べている。
さらに、この業務を円滑に継続していくための費用面での課題を解決する方法として、日本医学会をはじめとする医療関連団体や厚生労働省、AMED、医療機器のメーカーや団体との連携を、積極的に図っていく方針。
これまでにも「医師が開発した」と言われる商品は、数多く世に出ている。医療機器の中にも、医師のアイデアを元に開発されたものがあるが、若い医師のアイデアから生まれた医療機器は、未だほんのわずかでしかない。この取り組みから生まれる医療機器が登場するのは、いつ頃になるのであろうか。
参考資料
日本医師会 医師主導による医療機器の開発・事業化支援について
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150520_31.pdf
同上 日医白クマ通信 定例記者会見 「医師主導による医療機器の開発・事業化支援について」
http://www.med.or.jp/shirokuma/no1883.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
これまでも、「●科の医師が開発しました」と銘打った商品は、いくつも世の中に出ています。しかし、医療機器となると、若手医師が…というものは少ないのではないでしょうか。
手術室に勤務していると、非常に数多くの医療機器や手術器具にお目にかかります。中には、「〇〇式」という名称の器械がありますので、そういうものは「〇〇医師が考案して開発・製品化されたものだろうな」という予測は出来ます。例えば、コッヘルはコッヘル医師が、ペアンはペアン医師が開発したものですし。いずれも1800年代とかの昔々のお話ではありますが……。
でも確かに、「こんなのあったら良いな」と医師が考えたとしても、それをどうやって開発(制作)するのか、どうやったら商品化できるのか、それを考えるのは難しいですよね。時間もお金もかかりますし、今の世の中、医療機器メーカー側の大々的な協力がなければ、実現しないだろうとは思います。
ですので、こういった取り組みは非常に面白いと思いました。数年後には「○○医師が考案した」というキャッチコピー付の医療機器が、世の中に数多く出てくると良いですね。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート