【医療ニュースPickUp 2016年4月30日】“予防接種のギャップを埋める”4月24日から30日は世界予防接種週間
2016年4月24日、WHO(世界保健機関)が毎年定めている「世界予防接種週間」(World Immunization Week)が始まった。期間中、WHOは世界各国に呼びかけ、予防接種推進にむけたキャンペーン、啓発活動、情報共有などを行っている。2016年のスローガンは、昨年に続き「"Close the immunization gap(予防接種のギャップを埋める)"」となっている。
世界ワクチン接種行動計画(GVAP)を承認
WHOのマーガレット・チャン事務局長は、「昨年度中は、ポリオや風疹、妊産婦・新生児の破傷風などの疾患に対しいくつかの注目すべき勝利を収めている。しかしこれらの勝利は限局的であり、ポリオは1、破傷風は3、風疹は1つの限定された地域で排除されている。現在の課題は、これらのような事例を作り出すことである」と述べている。
WHOによると、「予防接種により毎年200~300万人の死を回避している。しかしながら、世界的に予防接種の接種率が改善されれば、さらに150万人の死を回避することができる。現在では、推定1870万人の乳幼児(乳幼児のほぼ5人に1人)は、ジフテリア・百日咳・破傷風(日本ではDTP3)などの定期予防接種の機会を逸してしまっている」としている。
2012年には、WHOは重要な予防接種を世界中の人が受けられるよう、「世界ワクチン接種行動計画(GVAP)」を承認した。
【世界ワクチン接種行動計画】
ワクチンの接種環境をより公正なものとすることにより、何百万人もの感染による死亡を予防するロードマップのこと。世界各国では、2020年までに全国で90%以上、すべての地区で80%以上まで接種率を上げることを目標としている。
GVAPでは、ポリオの根絶を最初の目標として設定、さらに「ワクチンで防げる疾患に対するすべての制御」を進め、次世代ワクチンの研究・開発の推進も目標としている。
この計画は、国連、政府、国際機関、開発団体、保健の専門家、学術団体、(ワクチンの)製造者、市民団体など、複数の関係機関によって作成された。WHOは、GVAPに示されたロードマップを実施すべく、地域・国を支援する取り組みを進めている。
一方で、昨年は一部の国や地域においてワクチン接種率が向上したにもかかわらず、世界的にみれば、依然として目標値には届いていないという現実があり、WHOでは今後も、各国の活動を支援するとしている。
参考資料
WHO(世界保健機関) ニュースリリース
World Immunization Week 2016: Immunization game-changers should be the norm worldwide
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2016/world-immunization-week/en/
同上 メディアセンター
Immunization coverage
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs378/en/
厚生労働省検疫所FORTH 予防接種について (ファクトシート)
http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/04051353.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本で生活していると、ジフテリア・ポリオ・麻疹などはあまり縁が無いように感じてしまいます。生後しばらく経つと、自治体から「定期予防接種を受けましょう」というお知らせが来ますよね。
「そうか、必要なら受けとこう」と思えば、予診票をもって小児科へ行けば良いわけですから、特に定期接種になっている疾患については、あまり深く意識していないかもしれません。「受けたから大丈夫でしょ」という感覚ですよね。
ジフテリア・ポリオ・麻疹については、日本ではほぼ100%の接種率ではないでしょうか。しかし世界的には、85%程度のようです。まだまだ日本でいう「定期接種」になっていない国もあるようですね。
WHOのサイトにはこのほか、B型肝炎ワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチンの接種率が載っていますが、世界的な接種率はそれぞれ、82%、31%、19% だそうです。B型肝炎ワクチンが以外と多いように思いますが、ロタウイルスに至っては2割を切っているというのもちょっと驚きました。やはり、日本はワクチン接種率の高い国なのでしょう。
例えば、現在は任意接種である「ロタ」は、上に兄弟がいる場合、上の子の小児科受診の時に「もう生まれた?」とか「いつ生まれたの?」と聞かれることもあります。私自身も「ロタは生後2か月で受けるワクチンだから」と説明され、なるほどと思いました。
世界予防接種週間に先立ち、ユニセフでは「基本的な予防接種が受けられていない子どものおよそ3人に2人は、紛争により国内全土あるいは一部の地域が影響を受けている国で暮らしていることを明らかにした」と公表しています。東南アジアやアフリカ大陸の国々では、未だに60%以上の子どもたちが、生きるために必要なワクチン接種ができないという地域もあるようです。
中には予防接種に懐疑的な保護者もいるようですが、せっかく「受けようと思えばいつでも受けられる」国に住んでいるのなら、前向きに捉えてほしいなと思います。
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