【医療ニュースPickUp 2015年7月28日】 健康・医療研究への資金配分を1本化 健康・医療戦略推進本部会合より
2015年7月21日、政府は、「健康・医療戦略推進本部(本部長=安倍晋三首相)会合」を開き、健康・医療分野における研究開発の2016年度の予算配分に関する方針を決めた。
外国人患者に代わって問診票を作成
会合で公表された資料では、次の9分野のテーマが明記されており、それぞれに対し、これまでの取り組みの成果や、注力点が明記されている。
- オールジャパンでの医薬品創出
- オールジャパンでの医療機器開発
- 革新的医療技術創出拠点プロジェクト
- 再生医療の実現化ハイウェイ構想
- 疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト
- ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト
- 脳とこころの健康大国実現プロジェクト
- 新興・再興感染症制御プロジェクト
- 難病克服プロジェクト
政府は、医療分野での研究開発を促進する目的で、2014年5月に「健康・医療戦略推進法」および「独立行政法人日本医療研究開発機構法案」を可決し、2015年4月には「国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(以下、AMED)」の運用をスタートさせた。
今回の会合の中でも、AMEDや大学、研究機関などが連携し、基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの、一貫した研究開発を推進するとしている。例えば、AMEDに医療分野の研究開発関連予算を集約し、関係各省がそれぞれ実施してきた医療分野における研究開発について、
- 各省の枠を超えて、領域ごとに置かれるプログラムディレクター(PD)、プログラムオフィサー(PO)を活用した、基礎から実用化までの一貫した研究管理、
- 知的財産の専門家による知的財産管理、知的財産取得戦略の立案支援や、臨床研究及び治験をサポートする専門のスタッフ等の専門人材による研究支援
- 研究費申請の窓口・手続の一本化等による、研究費等のワンストップサービス化
などを実現させる方針。
政府が掲げている、健康・医療分野の研究開発予算は、およそ1400億円。2016年度については、内閣府と、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省との間で、今後検討されることとなる。特に、医療機器の開発については、新しい販路の開拓に加え、医療現場における機器開発の人材を育成し、「世界的な競争力を持つ革新的な医療機器の開発と事業化」も目指すこととしている。
参考資料
日刊工業新聞 政府、健康・医療戦略推進本部会合で予算配分方針決定-医療機器コンサル養成
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1020150722abba.html
首相官邸 健康・医療戦略推進本部
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201507/21kenko_iryo.html
同上 健康・医療戦略推進本部(第九回)議事次第
健康・医療戦略の実行状況と今後の取組方針2015(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai9/siryou1.pdf
同上 医療分野研究開発推進計画の実行状況と今後の取組方針2015(案
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai9/sankou2.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ここ最近、さまざまなところで「オールジャパン」とか「全国●●データベースの活用」という言葉を目にします。例えば、先日もここでお伝えした「ゲノム医療の実用化に向けた推進方針」もそうですし、5月頃のニュースでは、日本医師会が「医師による医療機器開発を支援」というものもありました。
これまでにも国はそれなりの予算を配分し、国立の機関を中心として、様々な取り組みをしてきたのだと思います。今後はお金の流を1本化し、省庁の垣根を超えてやりましょう!という動きが、具体化してきたことの表れなのだと思います。
今回、この資料を読んでみて、面白いと思ったのは、「9.難病克服プロジェクト」の中に、「医療用HALの医療機器としての薬事承認申請」というものがあったことです。
医療用HALは、茨城県つくば市にある企業が開発したものですが、この企業を設立したのは、筑波大学の山海教授。サイバニクス(Cybernics)という山海教授が確立した新しい学術分野の技術を使い、研究開発、製造、販売、保守管理などを行う企業です。その中で「HAL」は主力製品であり、すでに欧州では医療用の承認を受け、販売されています(ドイツ)。
日本では、まだ介護用の域を出ていないようです。個人的には、日本でも「医療機器」として認可され、HALを必要とする人に効果的に届くことが望ましいと思いますが、その対象が、まず「神経・筋の難病疾患の進行抑制治療効果を得るために」使われる、というのがなるほどと思いました。
私の身近には神経・筋の難病に苦しむ人は居ないのですが、近い将来、HALを身に着けた人に出会うかもしれません。「HALのおかげで世界が広がった」そんな言葉を聞けたら、ウレシイと思います。
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