【医療ニュースPickUp 2016年7月7日】国民に「在宅医療のメリット」を周知できるか 厚労省が新たな会議を開催
日本における地域医療構想の実現と、地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題となっているが、その成否の鍵を握るのは、両者の接点となる在宅医療である。この様な状況の中、2016年7月6日、厚生労働省は「第1回 全国在宅医療会議」を開催した。この会議の目的は大きく2つある。
- 今後、医療計画、地域医療構想や地域支援事業により整備される在宅医療の提供体制を実効的に機能させていかなければならない
- 本会議は、在宅医療の推進という政策の達成に向け、在宅医療提供者、学術関係者、行政が、それぞれの知見を相互に共有し、連携して実効的な活動をしていくための考え方を共有する
厚労省サイト上で、在宅医療関連データを公開
国はこれまでにも、医療計画、地域医療構想、在宅医療・介護連携推進事業や、診療報酬の改訂等により、在宅医療の提供体制の構築に取り組んできた。しかしその一方で、
- 国民に対して、在宅医療が生活の質の向上に資する具体的な効果を必ずしも示すことはできていない
- 医療者側にいまだ存在する「在宅医療に対する固定観念や不信感を払拭しきれていない」
という課題が残されている。
この問題に対し、厚生労働省が主体となって、今回の全国在宅医療会議を開催するに至った。今後はこの会議を通じて、以下のような「在宅医療推進のための基本的な考え方」を共有し、これに沿って、関係者がとるべき具体的な対応について議論していくこととなった。
- 在宅医療に係る対策を実効性のあるものとして推進するため、必要な協力体制を構築し、関係者が一体となって対策を展開する
- 在宅医療の普及の前提となる国民の理解を醸成するため、国民の視 点に立った在宅医療の普及啓発を図る
- エビデンスに基づいた在宅医療を推進するため、関係者の連携によるエビデンスの蓄積を推進する。
尚、6日に行われた初会合では、「全国在宅医療会議」の下部組織となるワーキンググループを9月以降に設置し、「在宅医療を推進するための重点分野」を策定することとなった。重点分野とは、「在宅医療の特性を踏まえた評価手法の検討」および「在宅医療に関する普及啓発のあり方の検討」となっている。
また、厚生労働省は、在宅医療の推進に向けた研究を行うための環境整備の一環として、厚生労働省のサイト上で、在宅医療関連データの公開を開始した。
図1 在宅医療にかかる地域悦データ集の概要(厚生労働省のサイトより)
このデータを活用すると、例えば都道府県ごとの「在宅診療支援診療所」や「訪問診療を実施する一般診療所」のグラフなども、独自で作成することができる。
今後、これらのデータを活用した、各都道府県での「第7次保健医療計画(2018年度スタート)」が検討されると期待されている。
参考資料
厚生労働省 在宅医療の推進について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
同上 第1回 全国在宅医療会議資料
資料1 全国在宅医療会議 開催要綱
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129541.pdf
同上資料2 在宅医療推進のための基本的な考え方(案)について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129542.pdf
同上 資料3 今後の会議の進め方(案)について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129543.pdf
同上 資料4 在宅医療に関する統計調査等のデータの活用について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129544.pdf
同上 参考資料3 在宅医療にかかる地域別データ集
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129547.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
「全国在宅医療会議」なるものが開催されましたが、そのメインとなる目的は「国民に対して、在宅医療が生活の質の向上に資する具体的な効果示す」ことのようです。しかしもう1つ、「医療者側にいまだ存在する“在宅医療に対する固定観念や不信感”の払拭」もあります。
個人的には、確かに「国民への在宅医療の推進」を理解してもらうことも必要ですが、やはり医療者側が「ぜひ在宅医療へ」という動きにならないと、難しいのだろうとは思います。
例えば、末期がんの患者さんに対して「最期は在宅へ」という動きは、がんセンターのようなところであれば、進んでいるのだろうと思います。しかし、医療者がみなそう考えているかというと、やはり違うのかなと思う部分もあります。
それが必ずしも「固定観念や不信感」によるものかは分かりませんが、病院に勤務している医療者からすれば、在宅でこの患者さんはどうなるのだろう?という疑問は、ある程度持っているのではないでしょうか。
自分たちが診ることができない正解ですし。このジレンマのような感覚って、どうすれば消えるのでしょうか?それが、今後検討されていくのかなと、単純に考えました。
ところで、今回厚労省が公表したデータは、色々なところで利用できそうなデータです。
このデータの中には、これまでに公表されている複数の調査結果(医療施設調査や介護サービス施設・事業所調査など)が盛り込まれているようです。
これらのデータを独自で集めようとしても難しい部分がありますし、どこをどう探せば良いのか?まずそこが分かりにくい。その点、1つにまとめられている今回のデータは、色々な方法で活用できるのではないかと思います。
現在、当サイトでは各都道府県の「保健医療計画」に関するコラムを掲載していますが、2018年4月には、全国で一斉に新しいものに置き換わります(の、予定)。現在、各都道府県では色々な検討がなされていると思いますが、このデータもどこかで活用されるのではないでしょうか。
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