【医療ニュースPickUp 2015年9月22日】 国立がんセンター 10年間での“胃がんのなりやすさ”を公表
2015年8月3日、国立がん研究センターは、多目的コホート研究(JPHC Study)から、10年間で胃がんに罹患する確率を導き出したと公表した。胃がん検診における“ABC分類”を用いて、性別、年齢と他のリスク因子(喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品摂取)から、胃がんの罹患確率を予測したもの。この研究結果は、「Int J Cancer」に、2015年7月28日付でWeb公開されている。
生活習慣の見直し、検診を受けることが重要
今回の多目的コホート研究では、研究開始時(平成5年)に血液を提供した被験者約1万9000人を、平成21年まで追跡し、”10年間で胃がんに罹患する確率を予測するモデル”を作成している。
国立がん研究センターの研究チームは、血液検査によるABC分類の胃がんリスクの他、、喫煙、胃がんの家族歴、高塩分食品の摂取のデータを組み合わせて検討を行った。その結果、次のような条件と確率が導き出されている。
●男性が10年間で胃がんに罹患する確率
- モデル:40歳、ABC分類:A群、他のリスク因子全て無の場合、0.04%
- モデル:70歳、ABC分類:D群、他のリスク因子全て有の場合、14.87%
●女性が10年間で胃がんに罹患する確率
- モデル:40歳、A群、他のリスク因子全て無からの場合、0.03%
- モデル:70歳、D群、他のリスク因子全て有の場合、4.91%
同じく国立がん研究センターが公表している「院内がん登録 2013 年集計報告」によると、2013年に新たにがんと診断された人のうち、胃がんは男性では大腸がんに続いて2位、女性では乳房・大腸・肺に続く第4位である。
胃がん発症リスクとして挙げられている「ピロリ菌感染」を早期に治療することで、胃がん発症リスクを下げることも可能だが、日本人の間では依然として罹患率が高いのが胃がんである。
そんな中、血液検査による「ABC分類は」、胃がんのリスク分類として注目されている。今回の研究結果からは、ABC分類のうち、BCD群ではA群に比べて胃がんのリスクが高いこと、B群からD群まではその他のリスクの有無により胃がんリスクに幅がみられたが、A群では、その他のリスクの有無に関わらず、一貫して胃がんリスクが低くなることが分かった。
これらのことから、特にBCD群の場合は、生活習慣の見直しや、必要な検診を受けるなどの予防行動が必要であるとしている。
参考資料
国立がん研究センターがん予防・検診研究センター
多目的コホート研究(JPHC Study)10年間で胃がんに罹患する確率について―生活習慣リスク因子とABC分類を用いた予測モデルの作成
http://epi.ncc.go.jp/jphc/745/3696.html
同上
10年間で胃がんに罹患する確率について―生活習慣リスク因子とABC分類を用いた個人の胃がん罹患の予測モデル―
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3693.html
PubMed
Prediction of the 10-year probability of gastric cancer occurrence in the Japanese population: the JPHC study cohort II.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26219435
国立がん研究センター 院内がん登録2013年集計報告
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150803.html#02
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本人は比較的、“胃がん患者が多い”といわれていますよね。胃がんの発症とピロリ菌感染の関係が明らかになるにつれ、ピロリ菌除菌に保険が適応されるなど、さまざまな措置が取られるようになったためか、新たに胃がんを発症する人は、今後は減少傾向になるのかもしれません。
この研究結果をみると、ピロリ菌の感染が陰性かつ萎縮性胃炎がない場合だけリスクが低く、それ以外はリスクが高くなる、となっています。
ABC分類でのA群はまさに前者ですが、D群とは「ピロリ菌感染陰性+萎縮性胃炎あり」ですので、その時点でピロリ菌がいなくても、胃炎から胃がんに発展する可能性がこれだけ高くなる、というのも事実なんですよね。
この場合の萎縮性胃炎の原因とは、何だったのでしょうか。勝手にピロリ菌がいなくなるのか、そもそもピロリ菌以外の原因で胃炎が起きているのか。いずれにしても、喫煙や高塩分食品の摂取は、身体にとって良いことではない、というのが良く分かる結果だったのではないかと思います。
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