【医療ニュースPickUp 2017年11月24日】関東の集団食中毒、15都県91人が同じ遺伝子型のO157に感染していた?
平成29年夏に関東で相次いで発生した腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒問題について、厚生労働省は同年11月17日に調査結果のとりまとめを有識者会議で報告した。
7月17日~9月1日の間に発症が確認された141件のO157VT2の遺伝子型を分析した結果、このうち91件が同一遺伝子型であることが判明。食中毒調査では、惣菜チェーン店や飲食店が提供した食品が原因とされたものの、すべての事例に共通する発生要因については特定に至らなかった。
同省は、8月第33週に発生件数が過去のピークを越えたO157VT2について、42の地方自治体から提出されたデータをもとに遺伝子型を分析した。
この遺伝子型のO157は7月下旬から散発的に増え始め、7月24日~8月8日の週で報告件数が50件となり、第一のピークを形成。その8割が東京都(17件)、神奈川県(14件)など関東地方からの報告だったが、調査の結果、それらの関連性は確認できなかった。
そして次週の8月9日から8月17日にかけて第二のピークが発生。これらは埼玉県、群馬県などで報告され、8月11日に前橋市内の惣菜店の惣菜を食べた3歳女児が死亡した集団食中毒は、この中に含まれていた。
惣菜チェーン店で発生した食中毒では、患者24名のうち22名がこの惣菜チェーンのサラダを食べたが、残る2名はサラダ類を食べておらず、感染源は不明。また、製造施設で保存されていた食品サンプル、従事者、施設内からはO157が検出されなかった。
同報告では、7月下旬に各地で散発した個々の事例を関連づけるものがなく、自治体間の情報共有や検査結果の集約が遅れたこと、共通の調査票の配布が1か月以上経過した後だったことなどが感染拡大や、原因究明の困難さにつながったと分析している。
今回の一連の経緯を踏まえ、同省では今後の対応として、
- 広域発生事例を早期に探知するための協議会を設置
- 地方自治体と国の連携と感染症・食中毒の調査協力マニュアルを策定
- 国が情報をとりまとめ、地方自治体間での共有を支援
- 食品サンプルや記録保存のあり方について課題を整理
などの対策について検討を進める方針。
O157による感染症は、年間を通じて発生する可能性があるため、厚労省は引き続き予防対策の啓発と、発生した際の速やかな対応を自治体に求めている。
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参考資料
厚生労働省 腸管出血性大腸菌感染症・食中毒事例の調査結果取りまとめについて
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000185420.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回は、今年夏に発生した、北関東の惣菜店の惣菜が原因と思われる集団食中毒に対する調査報告、というテーマのニュースです。
集団食中毒が発生した場合、一般的には「O-157 による感染」というところまでは報道されていますが、それより詳しい「遺伝子型」については、一般への報道が行われることは稀なのではないでしょうか。
食中毒を起こさないように気をつける立場の人たちも、そこまでは分かりませんから、やはり「手洗い・うがい・手袋の交換」が、食中毒予防には重要な行動となるのでしょう。
今回、厚生労働省が取りまとめた今後の対策の中で、すぐにでもやって頂きたいと個人的に感じたのは「食品サンプルや記録保存のあり方について課題を整理」の部分です。
私自身もこの集団食中毒に関しては、厚生労働省が公表している情報や、メディアからの情報が主な情報源です。その中で、実際にこの件が明るみにでてから数日後、食品サンプルをどう保管しているのか、そこから検査用のサンプルをどう取り出しているのかを、メディアの情報で目にしました。
それを見たとき「そのやり方では、見落としは絶対出るだろう」と感じたことを良く覚えています。
分かりやすく例えるなら、段ボール箱いっぱいくらいの非常に大きなサンプルの塊の中からほんの一部をスプーンで掬い取る、というイメージです。
もちろん、保管方法やサンプルの採取方法は法的な決まりがありますし、サンプルばかり取っておいても販売側のコストがかさむだけですから、より多くのサンプルを保管とか、より多くの検体を採取するなどは、運用上は難しいのだと思います。
しかし、菌が増殖する状況と同じ状況を作り出して検査しなければ、あるいは保管サンプルに対して検査サンプル量の割合を増やさなければ、きちんとした「検査」にはならないような気がしてなりません。
すべてのサンプル内に均等に広がっているわけではありませんし、冷蔵・冷凍保存されていればさらなる増殖をしないためです。
こういった問題は、全国的に統一するのは難しいのは分かりますが、何とか上手く「満遍なく検査できる方法」が見つかると良いかと思います。
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