【医療ニュースPickUp 2017年10月4日】2025年の健康保険組合、保険料は1.4倍、4分の1が解散危機に
2017年9月25日、健康保険組合連合会(健保連)は、2025年に被保険者1人当たりの保険料が約4割増加するとし、さらに健保組合のうち4分の1が解散の危機を迎えるという推計を発表した。
健保連は、大企業が運営する全国1399(2016年4月1日現在)の健康保険組合で構成される団体であり、被保険者である大企業の社員とその家族を合わせると、加入者は約3000万人。全国民のおよそ4分の1を占める。
健保連の推計によると、国民医療費は2015年度の42.3兆円から、2025年には57.8兆円に膨らむと予想されている。
国民医療費が増大する主な要因は、医療費全体の約6割を占める高齢者医療費だ。
特に75歳以上である後期高齢者の増加が、大きな負担となっている。
尚、後期高齢者の1人当たり医療費は、0~64歳の5倍超。1947から1949年生まれの団塊の世代が、2025年にすべて75歳以上に達する。
すると、2015年に国民医療費の36%だった後期高齢者の医療費は、2025年には44%を占めるようになり、金額も15兆円から25兆円と1.7倍に膨れ上がるという。
このように、高齢者医療費の負担が増加していく中、医療保険の収支を均衡させるためには保険料率を上げることになり、2015年度には9.1%だったの平均保険料率が、2025年度には平均11.8%に上昇。
その結果、被保険者1人当たりの年間保険料は、2015年の平均47万6000円から、2025年の65万7000円(原則企業と折半)と、およそ1.4倍に上昇するという。
また、健康保険組合の4分の1を超える380組合では、収支を均衡させる推計保険料率が、協会けんぽの保険料率である12.5%を超える計算となる。
これらの企業は、自前で保険を運営するメリットがなくなるため、解散を検討することになる。
中小企業が加入する協会けんぽの運営には国費が使われているため、多くの企業が健保組合から協会けんぽに移れば、国の財政負担が増えることになる。
また、こうした保険料負担の増加による、個人消費や企業活動などの経済への影響も懸念される。
参考資料
健康保険組合連合会 2025年度に向けた国民医療費等の推計
http://www.kenporen.com/include/press/2017/20170925_1.pdf
健康保険組合連合会 2025年度に向けた医療・医療保険制度改革について
(基本的な考え方)
http://www.kenporen.com/include/press/2017/20170925_3.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
膨張し続ける医療費、留まるところを知らないという印象を受けました。
自分の勤務先が加入する健保組合での現在の保険料率で考えると、基本的に「月収が30万円」の人は、厚生年金保険料が54,000円超、折半額(自分で負担する金額)は27,000円を超えています。
「医療保険」とはいえ、実際に毎月そんなに医療費がかかる診療や治療を受けるかといえば、いわゆる「生産人口年齢」の人は「NO」ですよね。一時的には入院・手術などで医療費がかさむことはありますが、それがずっと続くとなると「何のために稼いでいるのか」というジレンマが生まれそうです。
そしてこういった世界を「自分の子どもたち世代に負わせたくない」という考え方からさらに少子化が進むという、悪循環も見え隠れします。
実は、平成26年4月、消費税が8%になった際に、診療報酬もそれなりにアップしています。本来、公的医療保険でカバーされる医療(社会保険診療)は非課税ですが
- 医療機関は、患者さんから消費税を回収できない
- しかし医療機関は、医療機器や薬品を仕入れる業者に対し、消費税を払っている
つまり、診療を行うために必要な医療機器や薬品、医療材料の業者への消費税は、医療機関の持ち出しということになります。
消費税がアップすると、医療機関の負担もアップするため、次回予定れている消費税アップの際には、医療機関側の負担が増大することになります。
この分を補てんするため、診療補修がアップすると予測されています。
それでも足りない医療費。健康保険組合が解散してしまうと、医療費はさらに国の財政を圧迫すると考えられます。
単に保険料率を上げることが良いのか、それよりも医療材料や薬品などの価格を下げる方が良いのか。今後の動きに注目したいと思います。
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