【医療ニュースPickUp 2015年9月22日】 国立がんセンターが5年生存率を集計 2007年度の集計結果より
2015年9月14日、国立がん研究センター(以下、国がん)は、がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率の集計結果を、初めて公表した。これは、施設所在地の都道府県別に集計し、全がんおよび主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の集計結果を報告書にまとめたもの。集計対象は177施設約17万症例で、初めて全国規模での「都道府県別5年相対生存率」が提示されたこととなる。
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今回の集計における「全がんの5年相対生存率」は64.3%、既存集計である「地域がん登録」の58.6%よりやや高く、「全がん協による集計」の69.0%よりやや低い傾向がみられたが、比較的早期に発見・治療が行われた例や、手術可能な症例が多かったなど、調査を行った対象患者の背景が影響しているとみられている。
主要5部位全病期の5年相対生存率は、胃がん:71.2%、大腸がん:72.1%、肝臓がん:富山県(51.3)%、肺がん:39.4%、女性乳房がん:92.2%であった。
また、地域別の集計も行われている。5年相対生存率がもっとも高かった都道府県は以下の通り。
全がん:東京都(74.4%)、胃がん:福井県(77.7%)、大腸がん:香川県(79.6%)、肝臓がん:大分県(42.9)%、肺がん:新潟県(49.0)%、女性乳房がん:長野県(96.1)%
一方、それぞれのがんに対して、5年相対生存率がもっとも低かった都道府県は、以下の通り。
全がん:青森県、茨城県(ともに58.3%)、胃がん:埼玉県(60.9%)、大腸がん:青森県(63.0%)、肝臓がん:香川県(22.6%)、肺がん:北海道(26.9%)、女性乳房がん:青森県(81.1%)
胃・肝臓・肺については、生存率のもっとも高かった都道府県と、もっとも低かった都道府県を比較してみると、地域的なバラつきがみられた。この要因として国がんは「その背景にはがんの進行度が影響している可能性が考えられ、地域における病院が担う役割の差も影響していると考えられる」としている。
また、大腸・乳がんについては、都道府県による生存率のばらつきは少ない一方で、都道府県ごとにみると患者背景の差が見られている。
ただし、この集計結果はあくまで2007年当時のデータを元としている。この集計結果をみる時の注意点として国がんは「当時の院内がん登録はまだ課題が多かった時期であり、施設数が少ない都道府県のデータについてはかなりの偏り、あるいは不正確さが存在していることを想定する必要がある」としている。
参考資料
国立がん研究センター がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率初集計
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150914.html
同上 がん診療連携拠点病院 院内がん登録 2007 年生存率集計 報告書
http://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv_2007.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回の集計は、2007年のデータが元ですので、現在の状況とは少し違いがあるのだとは思います。しかし、集計データをみる限りでは、やはり肝臓がんや肺がんは、5年生存率が低いがんなのだということが、より明確に見えてきたのではないでしょうか。
今回の集計では、それぞれのがんの進行度合い(限局、領域、遠隔、全体)での5年相対生存率の違いも出されています。例えば女性乳房がんでは、限局の場合は98.9%、領域では89.6%、遠隔では40.3%ですが、これが肺がんになると、限局の場合は81.4%、領域では31.3%、遠隔では5.1%でした。一方、もっとも5年相対生存率が低かった肝臓がんでは、限局の場合は46.4%とおよそ半数が5年後も生きていることになりますが、領域では15.0%、遠隔ではわずか2.6%しか生きていないことになります。かなりシビアな結果ですよね。
私の周りでも、「5年以上前に初期の乳がんが見つかって手術したけど、今は元気」という人は数人いますが、例えば肝臓がんで手術を受けたけれども、5年足らずで亡くなっている人が数人います。このことを考えると、この集計結果は非常に納得のいく結果のように思えました。
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