【医療ニュースPickUp 2015年10月9日】 国民医療費が初めて40兆円超え 厚生労働省の統計結果より
厚生労働省は2015年10月7日、2013年度の国民医療費の概況を公表した。これによると、2013年度の国民医療費は、7年連続で過去最高を更新し、初めて40兆円を超えたことが分かった。
厚生労働省のまとめによると、2013年度の国民医療費は40兆610億円。2012年度に比べて8493億円増加、割合では2.2%増加していた。これで、2006年度には一度減少した国民医療費は、翌年の2009年度以降、7年連続で過去最高を更新し、初めて40兆円を超えたこととなった。
国民1人当たりの平均31万4700円
内訳をみてみると、国民1人当たり平均31万4700円であり、2012年度と比較して、7200円、割合にして2.3%増加した。年代別では、
- 0~14歳: 14万9500円
- 15~44歳: 11万4400円
- 45~64歳: 27万7200円
- 65歳以上: 72万4500円
となった。
単純に計算すると、65歳以上の国民医療費の平均は、65歳未満の平均17万7700円と比較し、およそ4倍となっていることが分かった。
診療種類別でみると、一般診療所への入院医療費、入院時食事・生活医療費、療養費等では2012年度よりも減少しているものの、病院への入院医療費は2280億円増加(割合にして1.6%増加)。
入院外医療費では、病院で1460億円(割合では2.7%)増加、一般診療所で689億円(割合では0.8%)増加していた。増加額がもっとも高かったのは薬局調剤医療費で4013億円(割合では6.0%)増加していた。2012年度と比較して、増減額は130億だが、増加率がもっとも高かったのは訪問看護医療費で、13.6%の増加がみられた。
医科診療医療費を主傷病による傷病分類別にみると、
- 循環器系の疾患:5兆8,817億円(構成割合20.5%)
- 新生物:3兆8,850億円(構成割合13.5%)、
- 筋骨格系及び結合組織の疾患 :2兆2,422億円(構成割合7.8%)、
- 呼吸器系の疾患:2兆1,211億円(構成割合7.4%)
- 損傷、中毒及びその他の外因の影響 :2兆466億円(構成割合7.1%)
となっている。
参考資料
厚生労働省 平成25年度 国民医療費の概況 結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/13/dl/kekka.pdf
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/13/dl/toukei.pdf
同上 プレスリリース
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/13/dl/houdou.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
厚生労働省の統計結果には、昭和30年ころからの統計データがグラフ化されています。これによると国民医療費は、昭和50年ころから急激に伸び始め、過去に2回ほど、前年より減少した年度はあったようですが、ここ数年の延び率は再び大きなものになっているようです。
対国民所得比率、対国内総生産比率ともに順調に(?)伸び続け、2013年度と2012年度を比較すると、どちらも若干の減少になるようですが、それでも、対国民所得比率は、2007年度くらいから10%を超えています。
単純に「医療費」という金額で考えれば、昭和30年代とは物価そのものもが違いますし、物価の上昇に合わせて医療費も高くなるのは分かります。しかし、国民所得比率や国内総生産比率が高くなるというのは、それなりに「国民一人ひとりが医療にかけるお金」が高くなっていることになります。
厚生労働省の区分では、上位5疾患を「循環器系」「新生物」「筋骨格系及び結合組織の疾患」「呼吸器系の疾患」「損傷、中毒及びその他の外因の影響」としていますが、実はもっとも医療費が多いのは「その他」、これら以外の疾患によるものです。65歳未満ではおよそ半数が「その他」、65歳以上では「循環器系」が全体の1/4を占めますが、「新生物」は、65歳を基準にして考えても大きな差がないというのは、比較的若いころに発症するがんが増えてきている、ということなのでしょうか。
いずれにしても、年々増え続ける医療費。今後も、少なくても数年間は、この傾向が続くと考えられます。特に若い世代の負担をどうやって軽減していくのか。「高齢者の健康維持」が、国としてのもっとも大きな課題なのかもしれません。
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