【医療ニュースPickUp 2016年4月24日】増加を続ける糖尿病性腎症の「重症化予防プログラム」を策定 厚生労働省
2016年4月20日、厚生労働省は、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム(以下、本プログラム)を策定した」と公表した。2016年3月24日には、日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚生労働省の三者で、「糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定」を締結しており、今回、公表されたプログラムの策定には、日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚生労働省が関わっている。
地域の実情に応じ柔軟に対応が可能
本プログラムの目的は、「重症化リスクの高い医療機関未受診者等に対する受診勧奨・保健指導を行い治療につなげるとともに、通院患者のうち重症化リスクの高い者に対して主治医の判断で対象者を選定して保健指導を行い、人工透析等への移行を防止する」ことにある。
一方で、本プログラムはあくまで「先行する取組の全国展開を目指し、取組の考え方や取組例を示すもの。
各地域における取組内容については地域の実情に応じ柔軟に対応が可能であり、現在既に行われている取組を尊重。」されるべきであるとし、特に後期高齢者については、年齢層を考慮した対象者選定基準を設定することが必要であるとしている。
本プログラムにおける、受診勧奨・保健指導の対象者は、以下のいずれにも該当する者としている。
- 2 型糖尿病であること:以下のa から c までのいずれかであること
- a.空腹時血糖 126mg/dl (随時血糖 200mg/dl)以上又は HbA1c 6.5%以上
- b.糖尿病治療中
- c.過去に糖尿病薬使用歴又は糖尿病治療歴あり
- 腎機能が低下していること
- 尚、これらの対象者は、以下のいずれかの方法で抽出されることとなっている。
- 健康診査データ・レセプトデータ等を活用したハイリスク者の抽出
- 医療機関における抽出
- 糖尿病治療中断かつ健診未受診者の抽出
これらの方法で抽出された対象に対し、例えば「手紙送付、電話、個別面談、戸別訪問等による受診勧奨」や、あるいは「電話等による指導、個別面談、訪問指導、集団指導等による保健指導」などを行うこととしている。
参考資料
厚生労働省 糖尿病性腎症重症化予防プログラムの策定について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000121935.html
糖尿病性腎症重症化予防プログラム(概要)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000122030.pdf
糖尿病性腎症重症化予防プログラム
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000121902.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
糖尿病が原因となる「糖尿病性腎症」は、本当に怖いなと思います。いくつかの統計データなどをみると、
- 年間で新たに「人工透析」を始める人は、3万人以上
- そのうち、「糖尿病性腎症」が原因で人工透析を始める人は、およそ44%の1万6千人程度
だそうです。かつては「慢性糸球体腎炎」の患者さんの方が多かったようですが、1998年あたりから逆転し、現在は「糖尿病性腎症 : 糖尿病性腎症 = 2:1」くらいのようです。
糖尿病と診断されてから、およそ10年くらいで「糖尿病性腎症」になることが多いようですから、少なくても10年前には「糖尿病の疑い」などを指摘されていた人が多いはずですよね。そのまま受診をしないとか、生活習慣に気を使って来なかった人は、もっと早い時期に人工透析が必要となるのでしょう。
今回、厚労省がこういったプログラムの制定に至った理由の1つには、医療費の高騰もあるのではないでしょうか。人工透析を受けると、1か月あたりおよそ40万円程度必要であり、しかも高額になるため、手続きをすれば患者側の負担は減ります。
ということは、医療保険の中で賄われなくてはなりませんから、少しでも患者数を減らしたいという意図が見え隠れしています。
もちろん、他の疾患で人工透析が必要になる人もたくさんいますが、糖尿病や糖尿病性腎症にならない生活を重視するというのは、理に適っていると思います。
しかし、それまで受診をしてこなかった人に、どのような保健指導を行えば受診をするようになるのでしょうか。その手法が気になるところです。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート