【医療ニュースPickUp 2017年11月10日】がんの緩和ケア、研修により、7年間で診療医師の知識14%増、困難感6%減に
医師の緩和ケアに関する知識と困難感について、過去7年間で医師全体の知識スコアは14%増加し、困難感スコアは6%減少したことがわかった。
2017年11月2日、国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターを中心とする「がん対策における緩和ケアの評価に関する研究」研究班が明らかにした。
この研究は、2008年と2015年に行われた全国調査の変化を検証し、全国のがん診療連携拠点病院などで医師を対象に実施されてきた緩和ケア研修会の効果を調査したもの。
研究結果は、米学術雑誌「Cancer」掲載、これに先駆けて、オンライン版でも公開されている。
緩和ケア研修会は、政府が2007年に策定したがん対策推進基本計画に掲げられた「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により、緩和ケアについての基本的な知識を習得する」という目標に基づいて行われている。
研修会を修了した医師は、2008年の開始から2017年7月末までに、10万人以上となった。
全国調査の対象となった国内の医師は、2008年が48,487人、2015年は2,720人となっている。
この2つの全国調査において、医師の緩和ケアの理念や疼痛管理に関する知識と、症状緩和や専門家の支援などで感じる困難感の変化を検証した。
その結果、医師全体の知識スコアの上昇と、困難度スコア平均値の現象がみられた。
また、2015年の調査対象者のうち、性別や臨床経験年数、専門領域、勤務病院種別、看取り経験などの背景要因が似ている医師同士619組を比較して、研修修了者と未修了の医師の「緩和ケアに関する知識と困難感の違い」を検証した結果、知識スコアの平均値は16%差、困難感スコアの平均値は10%差と、統計的に有意な差が見られた。
これらの結果から、がん対策推進基本計画に基づいて2007年度から推進されてきた緩和ケアの施策は、その効果が確認されたことになる。
今後は緩和ケアの実際の提供状況や、実際に緩和ケアを受ける患者や家族の療養状況への効果を明らかにすることが期待されると、研究班は述べている。
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参考資料
国立研究開発法人 国立がん研究センター プレスリリース がん診療に携わる医師の緩和ケア知識・困難感を調査7年で知識スコア14%増、困難感スコア6%減緩和ケア研修会の効果も明らかに
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2017/1102/20171101185108.html
日本緩和医療学会 PEACE PROJECTについて
http://www.jspm-peace.jp/about/index.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今でこそ、「緩和ケア病棟」や「緩和医療」などが、がん専門の医療機関に限らず、設置(実践)されるようになってきましたが、確かに10年以上前は、まだまだ医師以外の医療者の中には、今一つ根付いていない考え方だったかと思います。
患者さんの一番近くにいる「看護師」でも、緩和医療に目を向けているのは、限られた人たちだったのではないでしょうか。
日本で「緩和ケア病棟」が導入されたのは、1980年代の最初の頃だったようです。当時は「ホスビス」と呼ばれていたそうですが、現在では「ホスピス」も「緩和ケア」も、ほぼ同等の意味で使われているのではないしょうか。
独立型の「ホスピス」病棟を日本で最初に導入したのは、聖隷三方原病院だといわれています。「ホスピス」は元々、中世のヨーロッパで、巡礼者を宿泊させる設備を備えた修道院や教会のことを指したようですから、そこから時代とともに発展し、日本でもキリスト教に関係の深い病院でスタートしたことは、当然のなりゆきだったのかもしれません。
NPO法人 日本ホスピス緩和ケア協会のサイトによると、現在の日本には、緩和ケア病棟のある医療機関が386(施設累計)、病床数は7904(病床累計)あるそうです。
これを多いと感じるのか、少ないと感じるのか。私個人としては「意外と少ない」と感じました。
日本は現在、3人に1人はがんで亡くなるといわれています。
がん患者さんすべてが、緩和ケア病棟やホスピスで最期を迎えるわけではありませんが、「入りたくても入れない」患者さんも、数多くいるのではないでしょうか。
在宅よりも医療に近く、病院よりは家に近い、ちょうど中間くらいの施設があれば、がん患者さんご本人だけではなく、安心した最期が迎えられるご家族も増えたりしないだろうかと、個人的には考えています。
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