【医療ニュースPickUp 2016年4月19日】薬剤に関する安全性速報の浸透率 薬局の2割が知らず PMDA調査より
2016年4月18日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下 PMDA)は、「医療機関における安全性情報の伝達・活用状況に関する調査」を公表した。
2割の調剤薬局はブルーレターの情報を「知らない」と回答
この調査は、全国の保険診療を行う診療所や調剤薬局に対して行われた調査であり、2015年10月6日から同年12月14日の期間に、郵送あるいはウェブ調査票への入力により行われた。
全国の診療所・調剤薬局のうち、それぞれ10%の施設が無作為抽出にて選出されたが、診療所からの回収率は53.1%(4,611施設)、調剤薬局からの回収率は68.2%(3,842施設)であった。
調査結果の概要をみると、診療所では
- 診療所における「PMDAのホームページあるいはPMDAナビの利用者」は12.8%にとどまっている
- 診療所において、安全性情報の入手のために活用している情報源は、MR(製薬企業の医薬情報担当者)が86.3%、医薬品・医療機器等安全性情報が68.0%、DM(製薬企業のダイレクトメール)が67.4%、MS(医薬品卸販売担当者)が66.5%と、上位を占めていた
などが明らかとなった。
一方、調剤薬局においては、
- PMDAのホームページを頻繁又は時々利用している施設は44.4%、全く利用していない施設は21.0%
- PMDAメディナビに登録している施設は44.1%。登録していても有用な情報源にPMDAメディナビを挙げている施設は36.9%と、十分に活用されていない状況にある
などの実態が明らかとなった。
調剤薬局への質問票には、抗てんかん薬「ラミクタール錠(一般名:ラモトリギン)の事例」が挙げられているが、ラミクタール錠の安全性速報(ブルーレター)による注意喚起の内容を「知っている」と回答したのは8割にとどまり、およそ2割の調剤薬局では、情報が知られていなかったことが分かった。
さらに、常時在庫している医薬品の安全性情報を「十分に管理できていない」と回答した施設は、4割以上に上った。また、RMP、患者向医薬品ガイド、重篤副作用疾患別対応マニュアル、RMPに基づき作成された資材等が、充分に活用されていない状況も明らかとなった。
PMDAは、副作用のフォローなど、かかりつけ薬剤師に求められる機能を果たすには、全ての医薬品に関して重要な安全性情報を迅速に入手、管理することが必要であるとし、さらに「関係者等と連携して、これらのツールの改善に努めるとともに、内容及び活用方法の周知を図っていく」としている。
参考資料
PMDA
医療機関における安全性情報の伝達・活用状況に関する調査
https://www.pmda.go.jp/safety/surveillance-analysis/0010.html
同上 平成27年度 診療所における医薬品安全性情報の入手・伝達・活用状況等に関する調査 調査結果のポイント
https://www.pmda.go.jp/files/000211636.pdf
同上 調査結果報告書
https://www.pmda.go.jp/files/000211637.pdf
同上 平成27年度 薬局における医薬品安全性情報の入手・伝達・活用状況等に関する調査 調査結果のポイント
https://www.pmda.go.jp/files/000211644.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回、こういった調査が行われていることを始めて知りましたが、この調査は平成22年度(2010年度)ころから毎年行われているようです。過去の調査結果も見ましたが、調査内容がそもそも毎年異なっているようで、例えば「ラミクタール錠のブルーレター」を例として挙げて質問したのは、今回が初のようです。これ、来年も同じ内容でアンケート調査を行うと、結果は変わるのでしょうか。
かつては、診療所の中に大きな薬の棚があり、その診療所で処方される薬剤が揃っていました。今ほど「新薬が登場!」というサイクルは短く無かったと思いますので、新しい薬剤の情報や、ブルーレターのようなものも、浸透率は高かったのかもしれません(時間は今よりもかかったとは思いますが)。
ところが、医薬分業になってからは、調剤薬局で取り扱う薬品の種類が増え、新薬も続々出てきますし、同じ効果のある後発薬もどんどん出てきますから、常に新しい情報を得ることが難しくなってきた、ということなのかもしれません。
とはいえ、患者側からすれば、薬剤のことは調剤薬局の薬剤師さんからの説明を信じるしかありませんし、医師に「このお薬を出します」といわれたら、従うことが常ですよね。
薬剤に関する新しい情報を得る手段は問いませんが(患者側にとってはあまり大きな問題ではない?)、特にブルーレターのような大事な情報は、すぐに届いて欲しいと思います。
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