【医療ニュースPickUp 2015年8月29日】 HPVワクチン接種後の副作用に対する手引きを公表
2015年8月19日、日本医師会は「HPVワクチン接種後に生じた症状に 対する診療の手引き」(以下、手引書)を、ホームページ上で公開した。一般向けにも公開されており、厚生労働省のサイトからも確認することができる(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/)。
HPVワクチン接種後に 症状が生じた患者への対応
子宮頸がんワクチンを巡っては、“接種後にみられる症状とワクチンとの因果関係”は未だにすべてが解明されていない。2013年に定期接種化されたものの、ワクチンの接種後に“全身の痛みが出る”などの報告が続出したため、それからわずか数か月で、厚生労働省は“HPVワクチンの接種に対する積極的な呼びかけ”を中止している。
これらの事柄に対し、日本医学会会長の髙久史麿氏は手引書の冒頭で「このような状況は先進国では日本だけに見られる状態であり、将来、子宮頸がんの発症が他国に比べて著しく高いという事態がおこる可能性を否定することができない。」と述べている。
手引き書は、全19ページ、第1章から第3章、および参考資料という4部構成となっている。このうち、第1章は「HPVワクチン接種後に 症状が生じた患者への対応」となっており、
- 基本的な診療姿勢について
- 面接・問診のポイント
- 診察のポイント
- 検査
- 診断
- 鑑別診断
- 治療のポイント
がまとめられている。
例えば、“治療のポイント”としては、次のような”患者への説明の仕方“といった、日常診療で必要となる説明内容が記載されており、これらを“くり返し説明すること”となっている。
- 痛みなどの症状は神経系の反応であり、原因を特定することが困難であること
- 神経系の変調によって起きた痛みであり運動は可能なこと
- 人のせいではないこと
- 動などにより筋力を付けていくとたとえ痛みがあっても困らず生活はできるようになるものであること
さらに第2章では“協力医療機関等との連携”について、簡潔にまとめられている。
また、ワクチンの接種対象となるのが小学校6年生から高校1年生までの女子であり、家での生活の他にも学校での生活が重要なウエイトを占める時期であるため、第3章では“日常生活の支援と、学校(職場)、家庭との連携”についてまとめられている。
また、2014年9月に厚生労働省から出された通知により、各都道府県で1つ以上の“適切な診療を受けられる体制の整備”が進められており、2015年7月1日現在では、全国47の全都道府県において、1か所以上の協力医療機関が選定されているという。
日本医師会 会長 横倉義武氏は手引書の冒頭で「この手引きが、より多くの臨床の現場で活用され、診療の一助と なることを切に願うものである」と述べている。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
HPVワクチンについては、2013年の定期接種化後の騒動も含め、時々話題にのぼることもあります。折しも、名古屋市では「HPVワクチンの接種対象者への大規模調査」を行うと発表していますし、全国のいろいろな地域で、患者さん(副作用に苦しむ人を、ここでは便宜上、こう呼びます)の支援団体のようなものも出来ていますし、主要なメディアが患者さんへのインタビューなどをとりあげることもあります。
自分に置き換えてみると、うちには小学生の女の子がいますので、どうしようか、というのは非常に悩ましい問題でもあります。将来のがんを防ぐために、(今ところは、若干)危ない橋を渡るのか、性教育をしっかりすることを条件に、橋を渡ることを見送るのか、かなり大きな決断に迫られるかもしれません。
支援医療機関ができました、診療体制は整いました、という状況がある一方で、やはり苦しみは極力避けさせてあげたい、と思うのが母親としての本音ですし、親が悩む理由を子どもが理解したら、うちの子は「受けない」と言うだろうな、と思います。
接種対象年齢まであと数年、数回にわたる家族会議が必要かもしれません。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート