【医療ニュースPickUp 2015年9月23日】 厚生労働省が文書改定を指示 がん新薬の副作用での死亡例を確認
厚生労働省は2015年9月15日、皮膚がんの一種である「メラノーマ」の治療薬として、2014年7月に承認された「オプジーボ(一般名・ニボルマブ)」を投与された患者のうち1人が、「重症筋無力症」を発症後に死亡していたとして、製造販売元である小野薬品工業(本社:大阪市)に対し、薬の説明文書の改定と、医師らへの注意喚起を行うよう指示した。
「重大な副作用」欄に記載された内容は
この薬剤は、「がん細胞の影響で抑えられていた免疫を再び活性化させる」という薬効が期待される、新しいタイプの薬剤である。
厚生労働省によると、同薬剤を服用した患者6人が、重症筋無力症や筋炎を発症。そのうち、80代の女性が死亡していたと報告された。この6人の患者はいずれも、同薬剤との因果関係が否定できないという。厚生労働用は、説明文書の「重大な副作用」欄に、以下の内容を追加するよう指示している。
●[重要な基本的注意]の項に、「本剤のT細胞活性化作用により、過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な疾患や病態があらわれることがある。観察を十分に行い、異常が認められた場合には、過度の免疫反応による副作用の発現を考慮し、適切な鑑別診断を行うこと。過度の免疫反応による副作用が疑われる場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与等を考慮すること。」を追記
●[副作用]の「重大な副作用」の項に、「重症筋無力症、筋炎:重症筋無力症、筋炎があらわれることがあり、これらを合併したと考えられる症例も報告されている。筋力低下、眼瞼下垂、呼吸困難、嚥下障害、CK(CPK)上昇等の観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。また、重症筋無力症によるクリーゼのため急速に呼吸不全が進行することがあるので、呼吸状態の悪化に十分注意すること。」を追記
さらに、大腸炎、重度の下痢関連症例が5例(うち、因果関係が否定できない症例4例)確認されていることから、●[副作用]の「重大な副作用」の項に、「大腸炎、重度の下痢:大腸炎、重度の下痢があらわれることがあるので、観察を十分に行い、持続する下痢、腹痛、血便等の症状があらわれた場合には、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。」を追記
尚、大腸炎、重度の下痢関連症を発症した5例のうち、死亡例は1例確認されているが、この症例に関しては、因果関係が否定されている。
参考資料
厚生労働省 薬 食 安 発 0 9 1 5 第 1 号
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000097454.pdf
PMDA ニボルマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について
http://www.pmda.go.jp/files/000207322.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ニボルマブは昨年7月より保険適応となった薬剤ですが、その頃の資料などを掘り返してみると、日本医師会から都道府県の医師会長へ向けて、「ニボルマブ(遺伝子組み換え)製剤の使用に当たっての留意事項について」という注意文書が発行されていました。
これによると、そもそも「ニボルマブ」は、これまでの抗悪性腫瘍薬とは異なる作用機序を持っていること、国内での治験症例が極めて限られていたこと、そのため製造販売後も一定数の症例データが集積されるまでの間は前症例を対象に使用成績調査を行うこと、などが明示されていました。
恐らく治験中に確認された副作用なのだと思いますが、間質性肺疾患による死亡例もあったようです。また、術後補助化学療法における有効性と安全性や、他の抗悪性腫瘍剤との併用に対する有効性と安全性も、十分には検証されてはいなかったようです。
今回は80代女性での死亡例が確認されていますが、そもそもこの薬剤の適応となる患者さんは、日本でどれくらいいるのだろうか、という点が気になりました。
新しい抗がん剤、と聞くと、他の治療法が見つからない場合は受け入れざるを得ないのだとは思いますが、もし自分が適応となった時はどうすべきか、じっくりと考えてみたいと思います。
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