【医療ニュースPickUp 2018年3月10日】服用1回のインフル新薬「ゾフルーザ」保険適用へ
2018年3月7日、塩野義製薬の新インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ®」(一般名:バロキサビル マルボキシル)の保険適用を、中央社会保険医療協議会(中医協)が承認した。錠剤タイプで1回の服用によって治療できるため、患者の飲み忘れを防ぎ、身体的負担も軽くする効果が期待される。適応は、インフルエンザA型またはインフルエンザB型への感染患者となる。
一般的にウイルスは、他の生物の細胞を利用した自己複製により増殖するが、同社が開発した「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害」という機序により、インフルエンザウイルスの遺伝情報を受け継ぐmRNAの合成を阻害する。従来とは異なる新たな作用機序の薬剤を、世界に先駆けて日本の製薬会社が製品化したことになる。
塩野義製薬のインフルエンザ治療薬には、先発として「ラピアクタ®」がある。しかしこれは点滴で投与されるため、患者自身だけでは服用できないという難点があった。
また、これまでに保険収載されている経口薬「タミフル®」や粉末の吸入薬「リレンザ®」は5日間服用する必要がある。1回の投与でよい「イナビル®」も、吸入薬は老人や子供には扱い方が難しいなどの課題があった。
一方、今回の「ゾフルーザ®」は、錠剤を1回経口投与するだけで良い。服用が簡単なうえ、ウイルスの増殖を防ぐため、従来の薬よりも早い効果が期待できる。
この製剤は、画期的な医薬品や医療機器などの審査を早める、厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象に指定されており、今年の2月23日には同制度による医薬品の製造販売承認の取得第1号となった。今回の決定は、さらに同製剤の保険適用を承認したものであり、間もなく発売される見通し。
薬価は20㎎で約2400円、10㎎で約1500円。成人や体重40㎏以上の小児の場合、20㎎を2錠服用するので、1回の治療にかかるのは4800円。体重が80㎏以上の場合は20㎎錠を4錠服用する。保健適用のため、実際の患者負担はそのうち1~3割となる。
参考資料
中医協 新医薬品一覧表(平成30年3月14日収載予定)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000196671.pdf
厚生労働省 参考資料1-1 抗インフルエンザウイルス薬の添付文書
www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vftu-att/2r9852000001vg67.pdf
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【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
抗インフルエンザウイルス薬として、異例のスピードで保険収載された感のある「ゾフルーザ®」、近日中には一般の医療機関でも入手できそうな勢いです。ただ、欲をいえばあと半月、可能なら1か月くらい早かったら、今季これを服用した患者さんは非常に多かったのではないか、という気がします。
試しに、2018年第09週(2月26日~3月4日)のインフルエンザ流行マップをみてみると、日本全国がほぼ真っ赤。「警報」の出てない都道府県がゼロという状況だったようです。この時に「新薬があれば……」というケースは、多かったのではないでしょうか。
季節性インフルエンザの流行は、この先(まだ続きますが)終息へと向かっていきます。そう考えると「なぜ今なのか?」という印象が強く残ります。個人的には、良い薬剤ではないかと思いますので、もう少し上市が早ければ……と、少し残念な気がします。
試しに、2018年3月2日に公表されている、全国での「インフルエンザ様疾患発生報告(第25弾)」によると、もっともはやく学級閉鎖や学校閉鎖があったのは、沖縄県で2017年9月4日だったようです。逆にもっとも遅かったのは高知県で2017年12月8日でした。インフルエンザウイルスが全国へ行き渡る(という言い方も変ですが)までに、3か月を要していることになります。
また、学級閉鎖や学校閉鎖となった施設数は、東京都がもっとも多く、累計で3,456でした。これに、大阪府、千葉県、埼玉県、神奈川県などの都市部が続きます。
この辺りは大都市であるが故に人口密度が高く、一人が大きな咳をすれば、あっという間に周りの人たちへも広がっていきますので、施設数が多くなるのも当然なのかもしれません。
いずれにしても、今シーズンにお世話になることは無いのかもしれませんが、来シーズン、再び季節性インフルエンザが流行する頃には、この薬剤の是非が問われているのかもしれません。
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