【医療ニュースPickUp 2017年5月24日】一般病院の建設費、定員1人当たり2000万円超。5年前より約70%増加
2017年5月19日、福祉医療機構(WAM)が福祉・医療施設の建設費に関するリサーチレポートを公表し、一般病院※1の定員一人当たり単価が、5年前の1201万円と比べ69.3%上昇し、2000万円を超えた。仮に200床の病院を新設する場合、現在の単価では40億円以上かかる計算となり、5年前に比べて建設費だけでも約16億円以上のコスト増になる。
病院の 定員1 人当たり建設費は、2011年度に底を打ち、病院全体で1130万8000円、一般病院では1201万円だった。これ以降、上昇傾向が続き、2016年度は病院全体における 1 人当たり建設費が1746万8000円、一般病院では2033万8000円となり、直近5年間で最も高い数値となった
。一般病院の1人当たり建設費が病院全体より高いのは、病院全体よりも平米単価が高く、1人当たり延べ床面積が大きい(病院全体では55~65平米程度、一般病院では60~70平米程度)ことに起因する。
1人当たりの延べ床面積はさほど大きな変動がないにもかかわらず、建設単価が高くなっていることから、建設費そのものが上昇していることが見て取れる。
平米単価に注目すると、2011年度以降、上昇を続けている。2016年度の病院全体における平米単価は、全国平均が34万6000円と前年度の 30万1000円から 4万5000 円上昇。一般病院は35万1000円で前年度の30万1000円から5万1000円の上昇となった。
前年度から大幅な上昇となったのは、「(2016年度は)建設費の水準が高い首都圏のサンプルが増加しており、このことが全体平均を押し上げたと考えられる」とWAMは説明している。
東京オリンピック開催までは、全国的な建設費の高騰は避けられない見通しだ。医療の質を担保するという意味でも、1床当たりの面積をコントロールしてコストを抑制するのには、限界がある。WAMは今後、施設整備を検討する際には、資材の見直しなどコスト低減のための方法を模索するよう求めている。
※1 一般病院:全病床に占める一般病床の割合が 50%以上の病院
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
病院の建設費は非常に膨大な投資が必要だとは思っていましたが、1人あたり単価で計算すると2000万円を超える、というのはかなり驚きました。もちろん、病棟全体や病室の設備の向上や、使いやすさの追求などもあるのだと思いますが、建設資材や人件費の高騰も、その理由となるのかもしれません。
確かに現在は、2020年の東京オリンピック開催に向け、特に東京都を中心とした首都圏では、至る所で建設・工事が行われています。こういった状況を鑑みると、建設資材や人件費は高くなるだろうな、ということが容易に予測できます。
病院をつくるために必要なのは、建設費だけではありません。今回のリサーチデータは、あくまでも「建設費」についての調査です。ということは、高額な医療機器や設備費は、含まれていないことになります。
これから新たに病院をつくるのであれば、最新の画像検査機器(CTやMRIなどを含む)も導入されるでしょうし、最初から電子カルテシステムや医療情報を集約するサーバーなどのIT機器も導入されることでしょう。
WAMでは、建設資材のコスト見直しなどを提言しているようですが、かといって病院を建設するのであれば、見直しが出来る部分と出来ない部分があると思います。
おりしも、来年は診療報酬と介護報酬のダブル改訂の年。今後の病院経営はどうなっていくのか。様々な面での見直しが必要になるのではないでしょうか。
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