【医療ニュースPickUp 2016年2月15日】スマートフォンなどよる遠隔診療「ポケットドクター」が4月から提供開始
2016年2月4日、IoTプラットフォームサービスを提供する株式会社オプティム(本社:東京都港区)と、医療情報プラットフォームの提供を行うMRT株式会社(本社:東京都渋谷区)は、「ポケットドクター」を4月から提供開始すると発表した。これは、スマートフォン、タブレットを用いた遠隔診療サービスであり、スマートフォン等を利用したサービスとして提供されるのは国内初となる。
今後の拡販は法整備が鍵となる
「ポケットドクター」が開発された経緯には、遠隔診療の重要性にある。これまでの遠隔診療は「原則禁止」、一部の離島や僻地の患者を診察する場合のみ、対面診療が物理的に困難なケースとされて認められてきた。しかしその一方で、高齢化社会が進むにつれ、通院が困難となる高齢者が急増する可能性が高くなっており、「遠隔診療の重要性」が高まっていた。
これらの状況が明らかになったことから、政府は2015年6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針2015)の中で、「遠隔医療の推進」を盛り込んでいる。
従来でも、通院が困難な場合は、電話を利用した診療が行われることもあったが、医師は「相談者が話す内容でしか症状を判断できない」という課題があった。今回、サービスが提供されることが明らかとなった「ポケットドクター」は、医療を必要としている人々と、遠隔地にいる医療の専門家をつなぐサービスであるという。
相談者と医師とのスマートフォンなどを通信させることで、相談者のスマートフォンやウェアラブル機器からの、画像や数値データなどを共有し、医師はさまざまなデータを確認、より具体的なアドバイスや診療を行うことができる仕組み。
また、受診するほどではない体調の変化がある場合や、仕事がなどで受診が難しい場合でも、「ポケットドクター」を利用することで、医師からの適切なアドバイスを受けることができるという。
現在、電話による診療に対しては保険点数上、「電話等再診」が請求できるが、テレビ電話による遠隔診療も同様。診察を行ったことのある患者に対して、再診料を請求できることとなっている。
実際に療養指導などを行った場合でも、指導料などとして請求できない。さらに、往診には「16㎞以内」という原則があるため、それ以上遠方の患者に対して、「電話等再診」を請求することも難しいのが現状であり、今後は、さらなる法整備が望まれている。
参考資料
株式会社オプティム プレスリリース オプティムとMRT、国内初となるスマホ・タブレットを用いた遠隔診療サービス「ポケットドクター」を発表
http://www.optim.co.jp/news-detail/19209
内閣府 第2回近来技術実証特区検討会資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/kinmirai/dai2/shiryou1.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
日本では現在、医療分野はかなりの成長分野だと考えられています。阿部内閣の政策によるところもあると思いますが、これまで医療とは関連が無かったいわゆる「ものづくり企業(IT関連だけではなく、金属加工業とか樹脂加工を行っているような企業です)」でも、医療分野への参入を目指すところが増えてきました。
医療とITで考えてみます。国の目標値よりはかなり低いものの、全国の医療機関では、電子カルテを初めとする「医療システム」が導入されつつあります。しかし大病院になるほど大手企業が独占しているのが現状です。システムの規模感や、メンテナンス要員の確保を考えたら、とにかく人手を要するわけですし、仕方ないのかなとは思います。
しかし、「電話による遠隔診療の解禁」とか「ウェラブル端末によるバイタルデータの利用ができる」となったあたりから、企業規模に関係なくチャンスが広がったわけですから、IT企業間の競争が激化するかもしれません。
これまでも、TV電話を使ったサービスはありましたが、より多くの人が導入しやすい(すでに持っている)スマートフォンを利用できるサービスは、広まるのも早いでしょうし、より使いやすいものではないかと思います。
今後も、こういったサービスは広がると思いますが、医師の方は複数のサービスを利用することになるのでしょうか。患者と同じものでなければ診療には使えないと思いますので、広がりすぎるのも問題なのかもしれません。
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