【医療ニュースPickUp 2017年4月26日】厚生労働省 医療施設(動態)調査・病院報告を公表 有床診は7500施設を下回る
2017年4月24日、厚生労働省は医療施設動態調査(平成 29 年 2 月末概数)を公表した。この調査は、病院及び診療所の分布、及び整備の実態を明らかにし、医療施設の診療機能を把握し、医療行政の基礎資料を得る目的で、毎月行われている。
たった1ヶ月の間に、1つの病院、200床以上の増加
調査結果によると、2017年2月末の医療施設総数は、全国で17万8814施設であり、前月と比較すると2施設の減少。病院では、1施設が増加、病床数としては223床が増加している。
一方の診療所は、全体で5施設が増加しているものの、病床数は448床が減少している。
これは、有床診療所が38施設減少、無床診療所が33施設増加、歯科診療所が2施設増加と、減少傾向が続いていた「無床の一般診療所」が増加しているものの、それ以上に「有床の一般診療所」が減少していることが背景にあると考えられる。
有床診療所は、地域包括ケアシステムにおいて
- かかりつけ医機能
- 後方病床機能
- 在宅医療提供機能
を併せ持つ、重要な施設として位置づけられている。
例えば、比較的軽い傷病の診療、回復期のリハビリテーションなどを担う有床診療所が減少すれば、そのエリアの病院負担はさらに増大する。病床数の減少とあいまって、地域包括ケアシステムの維持は困難になるだろう。
しかしここ最近、有床診療所は減少傾向が続いている。厚生労働省でも設置要件の緩和などを進めているが、その効果が現れているとは言い難い状況にある。
2018年度には、次の診療報酬改定が行われるが、その中で、有床診療所に対してどのような対策が取られるのだろうか。
病院における病床数の増減については、ある程度、計画的に進められているという部分もある。各都道府県では、第6次(地域によっては第5次)保健医療計画の中で、平成30年頃を目標とした、都道府県全体での病床数を導き出しているが、全国的に見ても、減少させていく傾向にある。
こちらも、今後どのような計画が立案され、病床数がコントロールされていくのか、注目していく必要がある。
前例のない世界一の少子高齢化が進行する日本。地域医療における人材や施設の偏在をどう克服していくのか。今後の厚生労働省の対応に注目と期待が集まっている。
参考資料
医療施設動態調査(平成 29 年 2 月末概数)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/m17/dl/is1702_01.pdf
同上 医療施設調査(基幹統計)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1b.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回は、医療施設動態調査の結果から、ニュースをお伝えしました。たった1ヶ月の間に、1つの病院、200床以上の増加、ということも驚きましたが、診療所の増減の大きさにも驚きました。過去のデータを遡ってみると、有床診療所の施設数は1か月あたりおよそ30施設、病床数はおよそ300床あまりが減少していることになるようです。
自分の居住エリア、自分が働くエリア等ではそれほど大きな変化は無いように見えますが、全国的にみるとこれだけ大きな動きがある、ということです。
ところで、病床数、特に病院病床数をみると、全国的に大きなバラつきがあります。都道府県ごとの病院病床数は、自治体がある程度コントロールしていることになりますが(当サイトの保健医療計画コラムを参照)、そのもととなるのは各年齢層による構成なども加味した人口です。
都道府県内を複数の保健医療圏に分け、それぞれの現在の人口や将来の人口推計などのデータを元に、将来的な病床数(基準病床数)を導き出しています。
つまり、人口減少が続くエリアでは、病床数も減少していくということです。試しに、都道府県ごとの現在の病床数(平成29年2月末概数)と、人口10万対病床数(平成 26 年)を比較してみました。
これを見ると、病床数全体が少ないとされる地域でも、人口10万対の病床数が多いことが分かります。
比較しているデータの年数が違うので、必ずしも現状を表しているとは言い難いのですが、この様な地域では、人口の減少に対する病床数の増減が追い付いていない、という可能性もありそうです。
その理由としては、年齢ごとの人口構造、医療圏の範囲(広さや交通機関等)など、複数の要因がありますので一概にはいえませんが、今後どのように変化していくのか、注目していきたいと思います。
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