【医療ニュースPickUp 2016年2月15日】看護師による特定行為の「手順書例集」公開 全日本病院協会
2016年2月5日、全日本病院協会は「特定行為に係る手順書例集」を公表した。同様の手順書例集は、厚生労働省でも公開されている。
「手順書」に基づき特定行為を実施することが可能となる
日本は現在、2025年までの今後10年間で、高齢化率が過去最高になる見込みであることから、さらなる在宅医療等の推進を図っていくことが求められている。
そのため、医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により一定の診療の補助を行う看護師を養成し、確保していくという国の施策により、2015年4月より施行された制度である。
これにより、一定の研修(特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、作成された「手順書」に基づき、特定行為(38項目)を実施することが可能となった。
今回公表された「特定行為に係る手順書例集」によると、例えば在宅でも行われることが多い、非侵襲的陽圧換気を行っている患者に対しては、看護師が以下の内容を確認する。
- pH、PaCO2(ETCO2)が治療目標範囲から軽度逸脱している
- PaO2(SpO2)が許容される範囲から逸脱している
- 呼吸仕事量が増加している
- 呼吸管理に至った原疾患の状態に著しい変化がない
- 意識状態が安定
- 循環動態の著しい変化がない
これらが認められた場合、次のような「非侵襲的陽圧換気の設定の変更」を行えることとなっている。
- 肺酸素化を許容される範囲に保つようにFIO2、呼気圧を調節する
- 肺胞換気を許容される範囲に保つように吸気圧、1回換気量、呼吸回数(強制換気数、 S/Tモードバックアップ呼吸数)を調節する
- トリガー感度、ライズタイムを調節する
手順書ではこのほか、人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静剤の投与量の調整や、気管カニューレの交換、心嚢ドレーンや胸腔ドレーンの抜去など、全38項目に関しても同様に、看護師による確認内容や、特定行為を行う手順について明示している。
特定行為を行うために必要な「特定行為研修」は、すでに日本看護協会や日本慢性期医療協会で開始されている。2016年10月には、特定行為を行える看護師が誕生する見込みとなっており、今後はさらに、看護師による特定行為が行われる可能性が高い。
今回の手順書例集を参考にし、それぞれの医療現場の実情に合った手順書の作成が望まれている。
尚、2016年2月3日には「保健師助産師看護師法に基づく特定行為研修の指定研修機関の指定等に関する審議」が行われ、新たに7つの医療機関等が、指定研修機関の指定を受けている。
参考資料
公益財団法人 全日本病院協会 厚生労働省 平成 27 年度 看護職員確保対策特別事業
「特定行為に係る手順書例集作成事業」特定行為に係る手順書例集
http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/160205_1.pdf
厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070423.html
同上 保健師助産師看護師法に基づく特定行為研修の指定研修機関の指定等に関する審議結果
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10803000-Iseikyoku-Ijika/0000111401.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
国は、とにかく「在宅医療へ」を推進していますが、この「看護師による特定行為」ができるようにすること、という施策もその一環ですよね。個人的には、実父が亡くなる前の数週間、在宅介護をしていましたが、やっぱりドクターはなかなか来てくれないものです。
家族が「何か変?」と思って電話をしても、来てくれるのは看護師さんで、電話で指示を仰ぎながら…というシーンばかりでしたね。幸いにも(?)「看護師による特定行為」にあたるようなケアはありませんでしたが、「医師と看護師の違い」を理解している自分のような家族の前では、色々とやりにくいだろうな、とは思います。
研修さえ受ければ「看護師による特定行為」は出来るようになるはずですが、かなり関係が出来上がり、信用できる看護師が相手じゃないと、家族の方はどうなのでしょうか。
それでも、「医師の訪問による診察やケア」よりも、「看護師の訪問による診察やケア」の方が、家族が負担する金額も安くなりますし、長い目で見れば良いと思いますけどね。在宅介護って、必ずしも終わりが見えるものではありませんし。
ただ、看護師側の負担は大きくなるだろうなとは思います。最近は「新人でも採用可」とする訪問看護師の募集も増えているようですし、人手不足な上に責任のある仕事をやらざるを得ない状況は、さらに看護師不足を招く要因には、ならないのでしょうか。
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