【医療ニュースPickUp】2015年6月2日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
再発食道がんに対するPDT 88%で完全奏功
2015年5月26日、京都大病院などの研究グループは、再発食道がんに対するレザフィリンおよび半導体レーザを用いた光線力学療法(PDT)が、世界初の救済治療法としての薬事承認を得たと発表した。
治験の段階では、食道がん化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発のある患者26人に対し、レザフィリン投与後に、口腔から挿入した専用プローブを用いてレーザ照射を行った。その結果、88.5%の確率で完全奏功が確認できたという。
PDTは、腫瘍親和性の高い光感受性物質(ポルフィリン関連化合物など)を投与し、病変部位の腫瘍組織に対してレーザ光を照射する。
これにより、変性・壊死といった局所変化を起こす治療法であり、正常組織への影響が少ないこと、身体への負担が軽減されることなどから、すでに早期肺がん、表在性食道がん、表在性早期胃がん、子宮頚部初期がんおよび異形成、加齢黄斑症などが、保険適応となっている。
今回の治験結果に基づき、Meiji Seika ファルマ株式会社、パナソニックヘルスケア株式会社は、光線力学的療法用剤である「注射用レザフィリン®100mg」、PDT 半導体レーザである「PD レーザ」/単回使用PDT半導体レーザ用プローブ「EC-PDT プローブ」について、「化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道癌」に対する、適応追加承認を取得した。
救済治療としては世界初の薬事承認となった。尚、「EC-PDT プローブ」については新規承認。
食道がんは、40歳代以降になると、罹患率・死亡率ともに急激に増加する。男性は女性の5倍ほど、罹患率・死亡率ともに高くなる。食道がんの再発の多くは、リンパ節や肺、肝臓、骨へと転移する。再発部位・症状・初回の治療法やその反応などを考慮した上で治療法を決定するが、手術になることはほとんどない。
胸腹部内部のリンパ節への再発の場合には、放射線治療あるいは化学療法が選択されてきた。
今回の医師主導治験は、京都大学医学部附属病院、国立がん研究センター東病院、兵庫県立がんセンター、名古屋市立大学病院、大阪府立成人病センター、静岡県立静岡がんセンター、長崎大学病院の7病院で実施された。
本治療法の開発を行ってきた京都大学の武藤学教授は、「本治療の承認により、化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道癌に対する、新たな根治的低侵襲治療として、医療現場に貢献できるものと期待している」と話している。
参考資料
京都大学 報道発表資料 食道癌化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発に対するレザフィリンおよび半導体レーザを用いた光線力学療法(PDT)の世界初の救済治療法としての薬事承認のお知らせ
http://oncology.kuhp.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/05/%E8%B3%87%E6%96%99_PDT_201505xx_%E6%8F%90%E5%87%BA%E7%94%A8%EF%BC%88%E6%AD%A6%E8%97%A4%E5%86%8D%E4%BF%AE%E6%AD%A3%EF%BC%89%E5%B1%A5%E6%AD%B4%E3%81%AA%E3%81%97.pdf
Meiji Seika ファルマ株式会社 プレスリリース
光線力学的療法用剤「注射用レザフィリンR100mg」の化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残再発食道がんに対する適応追加承認取得に関するお知らせ
http://www.meiji-seika-pharma.co.jp/pressrelease/2015/detail/150526_01.html
JPA 日本光線力学学会 PDTとは
http://square.umin.ac.jp/jpa/whatPDT.html
がん情報サービス 最新がん統計
http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ここ数年、芸能人や著名人などで「食道がんで手術」や「食道がんで死亡」などというニュースを目にすることが多い気がしますが、そういえばいずれも男性ですね。
食道がんが男性に多いのは、お酒とタバコとストレスのせいだと言われていますが、それだけなら女性の罹患率や死亡率も、もう少し高くてもおかしくない気がします。
食道がんは元々、5年生存率が低い方ですし、再発すると……というイメージもありますので、9割近くで完全奏功が確認されたというのは、かなり朗報なのではないでしょうか。
新しい専用の(?)プローブも開発されたようですし、今後、この術式がもっとより多くの患者さんを救うであろうことに、期待したいと思います
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