【医療ニュースPickUp 2016年7月18日】2016年がん罹患数・死亡数を予測 国立がん研究センター
2016年7月15日、国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区、略称:国がん)がん対策情報センター(センター長:若尾文彦)は、2016年中に新たにがんに罹患する人数と死亡数の「がん統計予測」を算出し、がん情報の総合サイト「がん情報サービス」にて公開した。
これによると、罹患数予測は101万200例で、統計が作成され始めた1970年代から一貫して増加していることとなる(2015年は98万2千100例)。死亡数は37万4千人で、こちらも戦後一貫して増加を続けている(37万900人)。
国立がん研究センターでは、「罹患数、死亡数とも増加の主な原因は日本の高齢者人口の増加」であるとしている。
男女計で約2万8千例増加が予測される
【がんの罹患数】
- 2016年のがん罹患数予測は、2015年の予測(98万2千100例)と比較すると、男女計で約2万8千例増加
- 部位別では、大腸、胃、肺、前立腺、乳房(女性)の順にがん罹患数が多い(大腸、胃、肺はほぼ同数)
- 順位を2015年のがん統計予測[大腸、肺、胃、前立腺、女性(乳房)]と比較すると、上位5位のがんに変化はなかった
【がん死亡数】
- 2016年のがん死亡数予測は、37万4千人(男性22万300人、女性15万3千700人)
- 2015年の予測と比較すると、約3千人の増加
- 肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順にがん死亡数が多い
- 2015年の予測(肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順)から順位の変化はなかった
国立がん研究センターによる「がん統計予測」の公開は、次のような目的をもって、毎年行われている。
- 国や地域の確実ながん対策のためには、過去の実績と将来予測の両方のデータを見る必要があるため、国立がん研究センターでは、2014年より予測値を算出し、公開している
- 短期予測を活用することで、がん対策の目標設定、評価を行うことに役立つ
さらに、これらのデータを、後に公開される実測値と突き合わせを行うことで、がん対策によりどれだけの罹患、死亡が変化するのかを評価、分析することが可能であるという。
参考資料
国立がん研究センター プレスリリース
2016年のがん統計予測公開 罹患数予測約101万例、死亡数予測約37万人
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160715.html
がん情報サービス 2016年のがん統計予測
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html
同上 2015年のがん統計予測
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
国立がん研究センターでは、2014年からその年の「がん罹患数」と「がん死亡数」の予測値データを公開していますが、これ元となるのは、数年前の罹患データと死亡データです。
例えば、2016年の推計値は、2012年のがん罹患数全国推計値(国立がん研究センターがん対策情報センターによる)および2014年のがん死亡数(厚生労働省統計による)です。諸外国ではすでに、これらのデータを元に、数学的な調整を行うことで、がん罹患数・がん死亡数の予測値を算出することが一般的になっている国もあるようですが、日本は世界の動きからやや遅れて、2014年から、推計値を算出・公開しています。
これらのデータによると、罹患数と死亡数との間には、部位による特徴があり、未だに罹患数と死亡数がほぼ同等レベルであるのが膵臓がんです。
大腸がんでは、罹患数のおよそ3割程度が死にいたると推計されていますが、膵臓がんの場合は8割以上が死に至るという計算です。膵臓がんの罹患数予測値は40,000例で男女合わせて7位ですが、死亡数の予測値は33,700人で第4位です(死亡数では肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がんという順に多いと予測されています)。
「気づいた時にはすでに遅い」といわれる膵臓がんですが、罹患数と死亡数との間にどれだけの開きをもたらすことができるのか、今後の研究等に期待したいと思います。
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