【医療ニュースPickUp 2017年9月16日】日本人17万人の解析から「肥満に影響する遺伝マーカー」を解明
2017年9月12日、大量の日本人のゲノムを解析することによって、肥満に関わる193の遺伝的変異が確認されたことが、日本医療研究開発機構(AMED)より公表された。
そのうち112については、今回初めて明らかになったものだ。解析と検証を行ったのは、理化学研究所や東北大学、岩手医科大学、国立がん研究センターなどの共同研究チーム。
肥満はさまざまな疾患のリスク要因となる。その原因は、食べすぎや運動不足などの環境要因だけでなく、4割~6割は遺伝的な影響によると考えられているが、そのメカニズムについては十分に解明されていない。
今回、解析に用いられたのは、東京大学医科学研究所内の「バイオバンク・ジャパン」に蓄積されている日本人約16万人の遺伝情報だ。
大規模なゲノム解析(GWAS)を行い、さらに日本人1万5000人と欧米人32万人のデータを用いて検証を行った。
現時点では、アジア人を対象とした遺伝学研究の中で最大規模となり、欧米人の結果と統合すると、約48万人のビッグデータを用いたことになる。
研究の結果、ヒトゲノム上において肥満に関わる193の遺伝的特徴が確認された。また、脳の細胞に加えて、免疫細胞のリンパ球が体重の調節で主要な役割を果たすこともわかってきた。
さらに33の病気と遺伝子との相関を調査し、生まれ持った太りやすさ・やせやすさと、さまざまな疾患発症の関係を確認したところ、9つの疾患について体重と遺伝的な関係があることがわかった。
やせ型の人は遺伝的に関節リウマチ、思春期突発性側弯症、統合失調症を発症するリスクが高く、肥満の人は2型糖尿病や心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)といった生活習慣病だけでなく、気管支ぜんそくや後縦靭帯骨化症の発症リスクが高いという。こうした発見は、将来的には病気の発症予防対策に役立つかもしれない。
なお、この研究で利用したバイオバンク・ジャパンのサンプルの遺伝情報は、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)を通じて公開される。
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参考資料
科学技術振興機構 NBDC Research ID: hum0014.v6
https://humandbs.biosciencedbc.jp/hum0014-v6#JGAS00000000114
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
肥満=遺伝 というのは、ある程度は誰でもが予想できることではないでしょうか。
「この子は結構、太っているかな」というお子さんの保護者をみると、やはり似た様な体型であることは、よくあると思います。
それが、遺伝子によるものなのか、生活環境や生活習慣によるものなのかは分かりませんが、「親と子は似ている」というのは、誰でもが考えることだとは思います。
しかし、体重と「発症しやすい疾患」がリンクするというのは、目から鱗でした。
【やせ型】
関節リウマチ、思春期突発性側弯症、統合失調症
【肥満型】
2型糖尿病、心血管疾患(脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)、気管支ぜんそく、後縦靭帯骨化症
この他にも、体重と「発症しやすい疾患」はあると思いますが、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症など、日本人の中には「肥満=生活習慣病」というイメージがあると思います。しかしここに気管支喘息が加わると、少し状況は変わってくるのではないでしょうか。
最近、「アレルギー科」という標榜科を見かけることが多くなりました。診療の内容をみると、花粉症やアトピー性の疾患のほかにも、喘息に対応しているクリニックなどがあります。
つまり、喘息もアレルギー疾患である、ということです。肥満型の人が気管支喘息の発症リスクが高いのであれば、こういった疾患も体重と関係あるのでしょうか。
ニュースリリースでは「今後“免疫細胞における遺伝子調節機構がどのようにして体重の個人差をもたらすのか”」とありますが、今後の研究にも注目したいと思います。
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