【医療ニュースPickUp】2015年6月9日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
2大学病院への「機能取り消し」処分 厚生労働省
厚生労働省は、2015年6月1日付の「厚生労働省告示第287号」において、群馬大学医学付属病院および東京女子医科大学病院に対する、「特定機能病院」としての承認を取り消したことを公表した。
また、この2大学病院については、「がん診療連携拠点病院」の指定も解除することを決めた。厚生労働省ではこの決定の理由について、「医療安全の体制が確保されておらず、質の高いがん医療を提供できない」としている。
東京女子大学病院では2014年2月、2歳男児へのプロフォール大量投与後に、この男児が死亡する事故が起きている。
群馬大学医学部付属病院では2014年11月、腹腔鏡下肝臓摘出手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していたことが発覚した。
これらの事態を受け、厚生労働省では今年2月から、両病院の処分を検討していた。
東京女子医大病院は、集中治療室で人工呼吸器をつけた小児へのプロポフォールの使用が原則禁止されていることが、病院内で周知徹底されていないことが原因であったと報告。同病院は2002年に心臓手術の事故により、特定機能病院の承認を1度取り消されており、改善策を提案して2007年に再承認されたが、今回2度目の承認取り消しとなった。
群馬大学医学付属病院では、全8症例に対し、十分な術前評価が行われていなかった、診療記録の内容に不備が多く執刀医の思考過程に不明な点が多かった、診療科管理体制に問題があったなどの報告がなされている。
群馬県として群馬大学病院の再生に期待をかけているが、2015年3月に行われた「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」の段階でも、座長預かりとなっていた。
尚、厚生労働省は2015年4月にも、腹腔鏡下手術により患者が相次いで死亡した千葉県がんセンターに対する「がん診療連携拠点病院」の指定を更新しないことを決めている
特定機能病院の要件は、15以上の診療科、特定機能病院に求められる機能(高度医療の提供、高度医療技術の開発及び評価、高度医療に関する研修)に対して専門医を配置すること、紹介率50%以上・逆紹介率40%以上であること、などが決められている。
大学病院などを中心に計86病院が指定されていたが、承認が取り消されると、診療報酬上の優遇が受けられなくなり、年数億円規模の減収となる可能性がある。
いずれにしても、その地域の住民にとって、必要な病院である。特に群馬大学病院は、院内がん登録数・悪性腫瘍の手術件数ともに群馬県内でトップの病院であることから、今後の群馬県内における診療体制の見直しにも、大きな影響があると考えられる。
参考資料
NHK 厚労省 2病院にがん拠点病院指定せず
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150601/k10010099701000.html
厚生労働省 厚生労働省告示第二百八十七号
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H150602G0070.pdf
尚、厚生労働省は2015年4月にも、腹腔鏡下手術により患者が相次いで死亡した千葉県がんセンターに対する「がん診療連携拠点病院」の指定を更新しないことを決めている
特定機能病院の要件は、15以上の診療科、特定機能病院に求められる機能(高度医療の提供、高度医療技術の開発及び評価、高度医療に関する研修)に対して専門医を配置すること、紹介率50%以上・逆紹介率40%以上であること、などが決められている。大学病院などを中心に計86病院が指定されていたが、承認が取り消されると、診療報酬上の優遇が受けられなくなり、年数億円規模の減収となる可能性がある。
いずれにしても、その地域の住民にとって、必要な病院である。特に群馬大学病院は、院内がん登録数・悪性腫瘍の手術件数ともに群馬県内でトップの病院であることから、今後の群馬県内における診療体制の見直しにも、大きな影響があると考えられる。
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参考資料
NHK 厚労省 2病院にがん拠点病院指定せず
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150601/k10010099701000.html
厚生労働省 厚生労働省告示第二百八十七号
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H150602G0070.pdf
同上 医療法第四条の二第一項の規定に基づく特定機能病院の承認(厚生省告示第二百三十八号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=207
同上 2015年3月13日 第10回 がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(議事録)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000083779.html
同上 第10回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会資料 資料3 がん診療連携拠点病院等の整備について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000052131_8.pdf
同上 資料6 がん診療連携拠点病院等一覧
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000052134_8.pdf
同上 資料7 実態と報告が異なるがん診療連携拠点病院等に対する対応について(案)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/img-316135313.pdf
同上 特定機能病院及び地域医療支援病院の承認要件の見直しについて(中間取りまとめ)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000035564.pdf
日本経済新聞(2015年4月15日付)拠点病院の指定更新せず、千葉県がんセンター 厚労省が決定
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H0J_V10C15A4000000/
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
今回の厚生労働省の処置は、結構厳しい処分だったのかなという印象があります。もちろんこれらの病院での事故は、あってはならない事故でしたので、戒めの意味も含めた処置なのかもしれませんが。
東京都のように、大学病院や●●センターと言われる大病院が集中している地域は、1つの大学病院が「□□承認を取り消し」となっても、患者目線ではそれほど驚かないことかもしれません。しかし、群馬大学病院は(本文にもありますが)、群馬県内でもっともがん患者さんの登録数が多く、手術実績も多い病院のようです。
いわば群馬県内のがん治療の中心だったわけですよね。その病院が国から「がん診療拠点として優れているとは認めない」となったわけですから、地域移住民の気持ちとしてはどうなのでしょうか。やっぱり「がんになったらどこへ行けば良いの?」と、不安が大きくなるのかなと推測します。
病院内の体制ももちろんですが、医師(だけじゃなく医療者全部)の一人ひとりのモチベーションとかモラルとか、そういった「形はないけど、病院経営には重要なもの」が、1日も早く回復し、「群馬県内での中心的病院」として復活して欲しいと思います。
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