【医療ニュースPickUp 2015年7月27日】 夏本番、デング熱への対策
7月に入り、厚生労働省検疫所 FORTHでは、「夏休みに海外へ渡航される皆様へ!」と題した、啓発情報を公開した。あくまで一般向けの情報ではあるが、渡航先の情報、渡航先での医療機関情報など、渡航先で流行している感染症などについてのリンクが張られており、必要な情報にアクセスしやすくなっている。
専門の医師がいる医療機関リストを公開
海外で感染する恐れのある感染症としては、経口感染によるもの、昆虫などを媒介するもの、ヒトとヒトの間で血液を媒介するものなどがあるが、FORHではそれぞれのケースを想定した注意事項を掲載している。
実際に海外で感染する可能性が高まる感染症はいくつもあるが、この時期、もっとも感染するケースが増加し、注意を要する感染症の1つが、デング熱である。
日本における感染例は、毎年報告されてはいるものの、2013年までの70年間、それらはすべて海外での感染によるものであった。しかし2014年に、70年ぶりに国内での感染例が報告され、大きな問題となったことは記憶に新しい。日本国内での感染が確認されたうちの多くは、東京都代々木公園内およびその周辺での感染であり、160人以上の感染者を出した。これが拡大した背景には、デング熱など蚊を媒介する感染症の診断経験を持つ医師が少なかったことが指摘されている。
そんな中、日本感染症学会では、デング熱やチクングニア熱など、蚊を媒介する感染症に対応できる、専門の医師がいる医療機関リストを公開した。これによると、対応可能な医療機関は、全国44の都道府県に154施設あり、中ニは「指導助言のみ」としている医療機関もあるが、ほぼ全国的な規模で専門医が存在していることになる。
2015年1月以降、全国で報告されたデング熱の発症例は、2015年7月21日の時点で127名、そのうち6名は2015年第28週のうちで報告されている。これらはすべて海外で感染した例であると考えられているが、昨年のように日本での感染が起こらないとは限らない。医療機関としては、何らかの対応を可能としている、最寄りの専門医療機関を確認しておくべきであろう。
参考資料
厚生労働省 夏休み期間中における海外での感染症予防について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/travel/2015summer.html
厚生労働省検疫所 夏休みに海外へ渡航される皆さまへ!
http://www.forth.go.jp/news/2015/07101603.html
国立感染症研究所 IDWR速報データ 2015年第28週
http://www.nih.go.jp/niid/ja/data/5800-idwr-sokuho-data-j-1528.html
NHK デング熱 専門の医療機関リストを公開
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150721/k10010160861000.html
日本感染症学会 蚊媒介感染症専門医療機関一覧
http://www.kansensho.or.jp/mosquito/medical_list.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
夏休みに入り、子ども達が街中から、自然のある場所へ大移動する時期となりました。国内だけではなく、国外へ行く人も多いでしょう。ここ数年、夏休み=8月の盆休シーズンではなく、すこしずらして取得する人も増えているようですし、総じて“夏休み”の時期が長くなっている気がします。
昨年の「デング熱、70年ぶりに日本で感染!」というニュースは驚きましたが、今年はまだ国内感染者は出ていないようです。しかし、昨年同様、
国外で感染 → 蚊が媒介 → 国内で感染
という感染ルートはあり得ますし、むしろそれまで日本での感染が確認出来ていなかったことの方が、驚くべきことなのかもしれません。
昨年夏は、毎日のように「●●で国内感染例が!」というニュースを目にしましたし、まさにデング熱パニックだったかもしれません。これを受けて、自治体などでも様々な対策を取ってきたようですが、今年はどうなのでしょうか。もしもの時、専門医のいる病院への確認をしやすくなる、というのは良いことなのだと思います。しかしこれが一般の目にも触れるように公開されていることで、リストに挙がっている医療機関に、一般の人が殺到しなければ良いのですが。
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