【医療ニュースPickUp 2016年4月7日】リウマチによる関節の炎症を抑える仕組みを発見 名大など研究チーム
2016年4月6日、名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞化学・機能分子抑制学分野の大海雄介特任助教らの研究グループは、「関節リウマチに認められる“IgG抗体”状の糖鎖を改変することにより、リウマチの症状を抑制できることができる」と公表した。この研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」の同年4月5日付けの電子版にて公開されている。
使用法の向上などに寄与
関節リウマチ(以下、RA)は、慢性的な破壊性関節炎を起こす。一方、自己抗体であるIgGは、Fc領域にN型糖鎖結合部位を有しており、多様な糖鎖構造を形成しており、特にRA患者では、血清IgG上のシアル酸およびガラクトースが減少する。
しかしこれらの役割は不明であった。
今回の研究では、IgG上のシアル酸を欠損させたマウスを作成して関節炎を誘発させ、正常なマウスとの比較を行った。その結果、IgG上のシアル酸を欠損させたマウスでは、正常なマウスよりも、リウマチ症状がより重篤となることが分かった。
つまり、IgG上のシアル酸の減少は、リウマチ症状の増悪に働くことが示唆された。さらに研究チームでは、in vitroにて、シアル酸を付加したIgGを、RA発症モデルマウスに投与したところ、RAの症状が緩和されることが明らかとなった。
研究チームでは、「この研究成果により、様々な自己免疫疾患の病態の解明や、抗体治療薬のあるべき性状の検討、使用法の向上などに寄与することができる」と期待している。
参考資料
名古屋大学 Press Release
関節炎惹起性IgGのシアル酸修飾は、コラーゲン誘発性関節炎の抑制機能を付与する
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20160406_med.pdf
NatureCommunivcations
Sialylation converts arthritogenic IgG into inhibitors of collagen-induced arthritis
http://www.nature.com/ncomms/2016/160405/ncomms11205/full/ncomms11205.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
関節リウマチによる関節炎って、本当につらそうですよね。大阪大学のサイトによると、日本人の有病率は、0.3-1.5%程度、患者数は約50万-100万人、男女比は約1:3で女性に多く、好発年齢は30-50才、だそうです。
発症要因は、遺伝的要因と環境要因があるようですが、遺伝的に何かしらの要因があって、さらに環境要因(喫煙、腸内細菌のバランス、歯周病菌への感染など)が加わると発症、といわれているようですが、環境要因は誰にもありそうなことなので、親族にRAの人がいたら、要注意なんですね。
抗リウマチ薬やNSAIDsなどの薬剤が治療の中心のようですが、関節破壊が起こると手術が必要とか。いずれにしても経過は長くなりそうですし、画期的な治療薬の登場が、待たれる疾患なのではないでしょうか。
今回は、RAが対象でしたが、他にも「自己免疫疾患」はいろいろありますので、今回の研究成果だけではなく、他の自己免疫疾患にも効く薬や治療法などが、出てくると良いと思います。
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