【医療ニュースPickUp 2017年7月7日】「対面診断なし」でも、医師による遠隔地からの死亡診断が可能に
2017年6月、厚生労働省は、「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン(案)」(以下、ガイドライン案)を公表した。これには、情報通信端末などを利用することで、「対面診断なし」でも遠隔地の医師が死亡診断書を交付できるための要件や手順などがまとめられている。
現在、死亡診断書を作成するための要件として「医師の対面診察」が必須となっているが、そのために不要な救急搬送が行われるほか、医師が到着するまで実質的に死亡している人を放置せざるを得ない、といった状況も発生している。
こうした現状から、在宅での穏やかな看取りを目指し、政府の規制改革会議は2016年度の答申において、死亡診断書に関する規制緩和を求めていた。
今回公表されたガイドライン案では、医師が死亡に立ち会えなくても、対面診断に代替できる程度の情報が得られる場合には、遠隔による死亡診断を行うことは法令上可能としている。
その上で、どのような条件下ならば対面診断に代替し得る程度の情報が得られるかを明確にするため、「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を策定するとした。ガイドライン案が提案する要件は以下の5点。
- 医師による直接対面での診療の経過から早晩死亡することが予測されていること
- 終末期の際の対応について事前の取決めがあるなど、医師と看護師と十分な連携が取れており、患者や家族の同意があること
- 医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること
- 法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め医師とあらかじめ決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること
- e. 看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等のICTを活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること
尚、確認を行う看護師には、法医学等に関する講義や実地研修などを課す。今後、情報通信機器や看護師の研修体制の整備を行い、2017年度内には遠隔での死亡診断を行える体制を整える予定となっている。
参考資料
厚生労働科学研究成果データベース
ICTを利用した死亡診断に関するガイドライン策定に向けた研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201605019A
内閣府
規制改革推進会議 会議情報 > 第13回医療・介護・保育ワーキング・グループ 議事次第 医療・介護・保育WG資料
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20170411/170411iryou01.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
このニュース、色々なニュースサイトなどで掲載されていますが、「厚生労働科学研究成果データベース」にある情報が元となっており、実際に見つけるまでは結構な時間がかかりました。それだけ、未だ「分かりやすい」ようにはなっていない、ということです。
「医師が来るまで死亡確認ができない」というのは、私自身も経験があります。親族を自宅で看取った際、「多分、これくらいの時間に臨終を迎えたと思う」という時間と、実際に死亡診断書に書かれた時間には7時間くらいの開きがありました。都内に住んでいるはずなのですが、契約していた訪問看護ステーション経由で医師に連絡して頂いたのですが、なかなか捕まらなかったのだそうです。
たまたま、その日は祝日だったため、数名いるはずの医師が捕まらないという状況でしたので、私自身は特に疑問は感じなかったのですが、もっとも近しい親族は「医師が来ない!」と憤っていましたので、遺族側からするとそんなものなのかなとも思います。
祝日とはいえ、都内某所でもこういう状況ですので、これが「離島である」とか「病院まで車で〇時間」かかるような山間部などでは、もっと深刻なのだと思います。「(恐らく)遺体となった親族を目の前にしながら、何もできない時間」を過ごさなくてはならないというのは、残された遺族にとってはとても辛い経験になるのではないでしょうか。
日付を跨ぐようなことがあれば「死亡日」が変わってしまうわけですから、在宅医療が推進されている現在には、必要な対応なのかもしれません。
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