【医療ニュースPickUp 2017年6月8日】検診でがんの見つかりにくい「高濃度乳房」、通知推進へ 厚生労働省有識者検討会
2017年6月5日、厚生労働省は有識者検討会を開催し、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)で異常が見つかりにくい「高濃度乳房」について、自治体が乳がん検診の受診者に通知する体制づくりを進める方針を固めた。
乳房内は、乳腺の密度が高い順に「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」の4段階に分類される。現在の日本では、「乳がん検診のガイドライン」に基づいて、40歳以上の女性に原則としてマンモによる検診を2年に1度受けるようすすめている。
ところが、乳腺組織が発達して密度が高い高濃度乳房の場合、マンモグラフィーの画像では、乳房全体が白く写るため、同じように白く写る“がん”のしこりが発見されにくい。そのため、以前から「高濃度」の乳房の場合は、受診者にその旨を知らせるべきだとの指摘があった。
独自に通知を行っている自治体や検診施設もすでにあり、アメリカの各州でも、「乳腺濃度」に関する情報を本人に提供するよう医療機関に義務付ける法律の制定が進んでいる。
今回の有識者検討会では、高濃度乳房について正しく理解できるよう、受診者に通知する場合の標準的な内容を、厚生労働省が市町村に提示する方向で了承された。
また、検査の確度を高めるための方策として、マンモグラフィーと共に、高濃度乳房でも異常が見つけやすい超音波検査を併用することなどが検討された。超音波検査では腫瘍が黒く、乳腺は白く写るため、併用すれば乳がんが発見されやすくなることが期待できる。
しかし、まだ乳房超音波検査の実施体制が整っていないこと、超音波検査の有効性(乳がんによる死亡率の減少効果があるか)がまだ明らかではないこと、また、高濃度乳房は病気ではないため、マンモグラフィーと併用する際に医療保険が適応されないなど、いくつかの課題があるのが現実だ。
厚生労働省の資料によれば、対策型検診を元に通知した場合、約 4 割の受診者(地域保健・健康増進事業報告から試算すると約 120 万人)が、「高濃度乳房である」との通知を受け取ると推定されている。
参考資料
厚生労働省「第21回がん検診のあり方に関する検討会 資料・参考資料抜粋
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000166910.pdf
厚生労働省 乳がん検診における「高濃度乳房」への対応について(厚生労働省健康局がん・疾病対策課)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000166903.pdf
E-BeC 乳がんに際して知っておきたい情報「乳腺のタイプに合った検診方法を知ってください」
http://www.e-bec.com/archives/5878
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
このニュースはここ数日、テレビなどのメディアでも取り上げられていますので、一般の方の目にも止まっている内容かと思います。実際に、「高濃度乳房であったために、乳がんに気付いてもらえなかった」という、一般の方への取材動画も拝見しました。
こういった動画が全国ネットで流れてしまうと、「自分の乳房はどうなのか?」と、不安になる方が一気に増えるのか?と感じました。
今回の検討会では、川崎市の事例が取り上げられていました。川崎市では平成28年4月から、「高濃度乳房であること」や「マンモグラフィーですべての乳がんを発見するのは難しい事」などを、受検者へ通知しているそうです。この通知を開始したことによる影響はまだ見られていないようですが、川崎市内のある病院によるアンケート調査によると、「乳腺密度」についておよそ半数の方が「知らなった」と答え、8割以上の方が「自分の乳腺密度を知りたい」と回答しているそうです。
ただ、「高濃度乳房」は一度見つかったらずっとそうなのではなく、年齢や体重の増加、ホルモン療法の有無などでも変わってくるようですので、そのことも含め、「自分の乳房は(今回)どうだったのか」を通知することは、必要なのかなと思います。
私自身、定期的に乳がん検診を受けてはいますが、確かに今までこういった指摘を受けたことはありません。でも、もしそうだったら。年齢的に「乳がんの罹患ピーク年齢」に突入していますので、教えて頂きたいと考えています。
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