【医療ニュースPickUp】2015年6月11日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
MERS 韓国内からの入国者へ警告
韓国でのMERS感染拡大がますます深刻化している。
そんな中、日本の厚生労働省は、2015年6月9日、感染症の専門家を集めた有識者会議を開き、日本国内でのMERS感染者への初動対応などを決めた。
基本的には、感染拡大を予防するために、患者のいる都道府県内の指定医療機関へ入院し、治療を受けるように勧告する。
厚生労働省では、各地方の地方衛生研究所の検査で陽性と確認された時点で、患者が発生したことを公表し、同時に国立感染症研究所から専門家を派遣し、現地での疫学調査を開始する方針。
これが難しい場合には、国立感染症研究所へ検体を送付し、ここで感染の判定が行われる。2014年6月現在では、患者の受け入れが可能な医療機関は全国でおよそ340(感染症病床を有する指定医療機関数)ある。
尚、厚生労働省は、MERS類似患者を以下のように定めている。
以下のア、イ又はウに該当し、かつ、他の感染症又は病因によることが明らかでない患者(対象地域:アラビア半島又はその周辺諸国)
ア:38℃以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈し、臨床的又は放射線学的に肺炎、ARDSなどの実質性肺病変が疑われる者であって、発症前14日以内に対象地域(※)に渡航又は居住していたもの
イ:発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症の場合を含む)を呈する者であって、発症前14日以内に対象地域(※)において、医療機関を受診若しくは訪問したもの、MERSであることが確定した者との接触歴があるもの又はヒトコブラクダとの濃厚接触歴があるもの
ウ:発熱又は急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者であって、発症前14日以内に、対象地域か否かを問わず、MERSが疑われる患者を診察、看護若しくは介護していたもの、MERSが疑われる患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に滞在した場合を含む。)していたもの又はMERSが疑われる患者の気道分泌液若しくは体液等の汚染物質に直接触れたもの
この定義がなされた時点では、対象地域はアラビア半島又はその周辺諸国となっていた。しかし、ここ数日の韓国における感染拡大を受け、韓国からの帰国・入国者へも注意喚起を促す目的で、空港や港湾の検疫窓口・ブースなどで、ポスターの掲示およびリーフレットの設置を行う方針。検疫所への申告が必要な対象は
MERSが疑われる患者を診察、看護、介護した者
MERSが疑われる患者と同居(患者が入院する病室や病棟に滞在)
MERSが疑われる患者の体液糖尿病の汚染物質に直接触れた者
などが挙がっている。
参考資料
日本経済新聞 MERS、指定医療機関に入院 厚労省が初動対応決定
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09HB1_Z00C15A6CR8000/
厚生労働省 韓国における中東呼吸器症候群(MERS)への対応について
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10906000-Kenkoukyoku-Kekkakukansenshouka/0000087965.pdf
同上 第二種感染症指定医療機関の指定状況(平成26年4月1日現在)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02-01.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
6月10日現在、韓国内での感染者数は100人を超えたようです。元はといえばたった一人の感染患者さんが、「よく分からない」状況の中、複数の病院を転々としたことが、今回の感染拡大のきっかけだったのかもしれません。
韓国内で最初に「感染」が確定してから、およそ3週間で100倍になった計算です。
韓国政府は今のところ「病院内での感染に限られている」としていますが、感染が確認された患者さんが増えるにつれて、感染確定前に行った病院、などでさらに拡大させてしまっている可能性もありますよね。もしくは家庭内での感染も、今後は増えるのではないでしょうか。
厚生労働省も、「MERSが疑われる患者と同居(患者が入院する病室や病棟に滞在)」という言葉を使っていますが、結局のところ、医療者がウイルスを持ちかえる→医療者の家庭内で感染→学校などでさらに拡大 ということも視野に入れる時期なのだと思います。
そういえば、先週あたりには「感染者の家族が中国国内で身柄を確保され、感染が確認された」というニュースもあったと思います。中国国内では、感染拡大はしていないのでしょうか?
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