【医療ニュースPickUp 2015年8月23日】 災害時アレルギー児対応マニュアルを医療者向けに公開
2015年8月17日、日本小児アレルギー学会は、「災害派遣医療スタッフ向けのアレルギー児対応マニュアル」を、ホームページ上で公開した。これは、災害が発生後、早期に災害現場へ派遣されるDMATなどの医療スタッフが、アレルギー児への応急対応を行う際、迅速で的確な処置や指導ができることを目的として作成された。
アレルギーを持つ小児への支援を検討
日本小児アレルギー学会では、2011年の東日本大震災発生直後より、災害対応ワーキンググループにて、アレルギーを持つ小児への支援を検討してきた。同年5月には「災害時の子供のアレルギー疾患対応パンフレット」を作成していたという。
今回公表されたマニュアルは全6ページで、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーに対する対応策がまとめられている。
気管支喘息に対する対応としては、喘息発作時と、喘息発作後とに分けて記載されている。喘息発作発生時には
- 発作強度に合わせた治療
- 必要によって酸素投与(SpO2 95%以上を目標に)
- 基本はβ2 刺激薬吸入(吸入手技に注意、20分毎に評価)
などの対応が必要としており、発作の強度(小発作、中発作、大発作・呼吸不全)に分け、それぞれの所見や対応策が記載されているほか、吸入ステロイド薬の用量対応表も記載されており、使用可能な薬剤とそれぞれの用量などが分かるようになっている。
また、食物アレルギーを持つ小児への対応としては、アナフィラキシーへの対応のほか、非常食や炊き出しに対する指導として、
- 非常食や炊き出しには、アレルギーの原因となる食物が混入している可能性があることを伝える
- 加工食品を食べる前には、原材料表示(鶏卵、牛乳、小麦、ソバ、ピーナツ、エビ、カニは、微量の含有でも必ず表示されている)を確認するよう伝える
などの具体的な指導方法が記載されている。
日本小児アレルギー学会では「災害派遣医療スタッフのみならず、災害拠点病院や救急指定病院の医療スタッフの皆さまにも、いざという時にご活用頂きたい」としている。
参考資料
日本小児アレルギー学会
「災害派遣医療スタッフ向けのアレルギー児対応マニュアル」発刊のお知らせ
http://www.jspaci.jp/modules/membership/index.php?page=article&storyid=113
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
私自身は幸いなことに、これまで大規模災害の被災者となったことはありません。自分自身が災害現場などで医療活動をしたこともありません。
自分自身には多少の食物アレルギーやいわゆる花粉症はありますが、日常生活で困るほどではありませんし、自分の子どもたちは今のところアレルギーが見つかってはいません。こういった状況ですので、身につまされたことは無いのですが、職務上はやはり、アレルギーにはそれなりに気を使っていたとは思います。
私自身が子どもの頃は、「アレルギーを持つ子ども」はかなり珍しかったように思うのですが、現在はアレルギーを持つ子どもたちが増えたなぁという気がします。例えば子どもの小学校でのイベントなどで模擬店が出る時、すべてのブースで使用している食材のパッケージを集めたりします。
食物アレルギーのお子さんを持つ保護者が、「うちの子は何が食べられるか」を、確認するためです。また中には、普段の学校生活の上で、給食が出るにも関わらず、お弁当を持参する子どもたちもいます。
看護師という立場ではなく、1保護者としてみると「大変だなぁ」と、若干他人ごとのように思ってしまうのですが、確かに災害時に避難所生活を余儀なくされる場合は、より厳しい状況になるわけですし、DMATの方たちがアレルギーの専門家とは限らないわけですから、こういったアニュアルがあるというのは、双方にとって心強いものだと思います。
いつ起こるか分からない自然災害。こういったものが活用され、子どもたちの避難生活が少しでも楽になったら良いなと、個人的には考えています。
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