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【医療ニュースPickUp】2015年2月26日

医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。

アジアの子どもの腸内細菌叢に2タイプ -九州大学-

【2015/2/26】アジアの子どもの腸内細菌叢に2つのタイプ -九州大学-

 

2015年2月24日、九州大学は「アジアの子どもの腸内細菌叢に 2 つのタイプがあることを発見」という研究成果を公表した。

 

公表された資料によると、アジアの子どもたちは、地域によって腸内細菌叢のタイプが、大きく2つに分かれることが分かったという。

 

九州大学大学院農学研究院の中山二郎准教授、ヤクルト中央研究所の渡辺幸一博士らの研究グループが、シンガポール国立大学の Yuan-Kun Lee 准教授らが率いる Asian Microbiome Project(以下、AMP)の研究として、アジア5カ国の子どもたちを対象に、腸内細菌叢の調査を行った。

 

その結果、アジアの子どもには大きく2つの腸内細菌叢のタイプがあること、日本の子どもの腸内細菌叢は特徴的で、他国と比較するとビフィズス菌を豊富に有しており、その一方で大腸菌などの悪玉菌が少ないことが分かった。

 

この研究成果は、2015年2月23日(月)付で、国際的科学雑誌「Nature」姉妹誌のオンラインジャーナル、「Scientific Reports」に掲載されている。

 

これまで行われてきた多くの研究により、腸内細菌叢は人により異なることが知られている。

 

個人差が生じる要因としては、食生活や薬、健康状態、生活環境、遺伝的要因などが挙げられる。そもそもアジア諸国は食と人種のるつぼであり、アジア諸国の人々がどのような腸内細菌叢を有しているか、医学や健康科学の観点からも非常に興味深いと言われてきた。

 

こういった背景もあり、本研究グループはアジア5カ国の研究者グループと共に、AMPという国際研究プロジェクトを設立し、アジア人の腸内細菌叢についての大規模な調査を行なった。本研究成果は、AMPによる調査結果の第一報であるとのこと。

 

調査の対象となったのは、日常生活の中で比較的外国文化の影響を受けていないと考えられる小学児童(7歳から11歳までの子どもたち)。

 

日本、中国、台湾、タイ、インドネシアの5ヵ国、それぞれの国の都会と地方の2か所、計10か所において、各地域25名以上、計303名の糞便の細菌組成の分析ならびに食習慣のアンケート調査を行った。その結果、次のようなことが分かった。

 

1)アジアの子どもは欧米と比較し、いわゆる善玉菌と言われるビフィズス菌を多く保有しており、特に日本と中国の蘭州の子どもでは、ビフィズス菌量が多かった。

 

2) アジアの子どもには大きく2つの腸内細菌叢のタイプがあることが分かった。

 

一つは、日本、中国、台湾の子どもに多い、ビフィズス菌とバクテロイデス属細菌を主体とするBBタイプ、もう一つは、インドネシアとタイのコンケンに多い、プレボテラ属細菌を主体とするPタイプだった。

 

プレボテラ属細菌の特徴として、食物繊維の分解酵素が強いことがあげられる。東南アジアに多い、難消化性でんぷんや食物繊維の多い食生活が、Pタイプが多い要因と推測される。

 

3)日本の子どもの腸内細菌叢は、非常に特徴的であった。

 

他国に比べてビフィズス菌が多く、一方、悪玉菌と言われる腸内細菌科の細菌が少なかった。

 

さらに検出される細菌の種類や、個人差も少ないことが分かった。日本特有の食習慣や生活習慣が、腸内細菌叢の特性に関係していると推測される。

 

この研究では、アジア諸国の子どもたちに、いわゆる善玉菌といわれるビフィズス菌が多いことが示される結果となった。

 

これにより、アジアの食文化に大きな注目が集まると考えられ、今後はアジアの食文化のうち、どの要素が腸内のビフィズス菌を増やしているか、引き続き研究を進めていくとしている。

 

また、ビフィズス菌が多いことが、子どもたちの健康にどの様な効果をもたらしているのか、さらなる検討が続くようだ。

 

日本の子どもの腸内には、特にビフィズス菌が多く、逆に大腸菌などの悪玉菌が少ないという、非常に優良な腸内細菌叢が見られた。

 

その一方で、現在の日本の子どもは、アレルギーや感染症に罹患するケースも多い。つまり、免疫系の観点からは、必ずしも良好とはいえないという現実もある。

 

今後さらに、日本人特有の腸内細菌叢が及ぼす、宿主の健康への影響について、研究が必要となる。

 

また、東南アジアについては、プレボテラを主体とするPタイプ細菌叢を有する子どもが多く、「同じアジア諸国でも地域性があることから、日本のようなBBタイプの子どもとは、違った尺度で腸内の健康を考えていく必要性がある」としている。

 

参考資料

 

九州大学プレスリリース アジアの子どもの腸内細菌叢に 2 つのタイプがあることを発見-日本の子どもにはビフィズス菌が豊富に存在-
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2015/2015_02_24.pdf

 

SCIENTIFIC REPORTS
Diversity in gut bacterial community of school-age children in Asia
http://www.nature.com/srep/2015/150223/srep08397/full/srep08397.html

 

【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】

 

同じアジア諸国でも、子どもたちの腸内細菌叢には地域によって大きな違いがある、というのは驚きました。

 

日本では東京都と福岡県の子どもたちが研究対象となったようですが、この2つの地域では多少の差がみられたものの、他の国や地域とはやはり大きな違いがみられています。

 

中国や台湾が比較的似ているのは、やはり食文化の違いなのでしょうか。

 

個人的には、福岡も東京と比較的近い「都会」と感じていますので、東京vs東北地方とか山陰地方とか、他の地域との比較もあると面白いかと思いました。

 

また、個人的に興味深いと感じたのは、同じタイの中でも、バンコク(都会)とコンケン(地方)で、PタイプとBBタイプとが、逆転しているような結果となった点です。

 

同じ国であれば食生活も似ていると思っていましたが、食文化の地域性もあるということなのでしょう。

 

環境省が公表している2009年版の「子どもの健康と環境に関する統計集」によると、都道府県別で見た時、アトピーの子どもは福井、鳥取、島根などで多く、九州地方や青森、沖縄などで少ないようです。

 

その一方で、東北地方や九州地方は、子どもの肥満が比較的多い地域となるようです。逆に福井・鳥取・島根では比較的少ない。何か関連があるのでしょうか。

 

アトピー性皮膚炎が腸内細菌叢と直接関係するかは分かりませんが、善玉菌・悪玉菌との関連性が深いのであれば、こういった地方で子どもたちの腸内細菌叢を比較しても有益なデータが得られるのではないかと、個人的には思います。

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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