【医療ニュースPickUp 2016年2月2日】ジカ熱に対するWHOの緊急事態宣言 厚労省、全患者の報告義務化へ
2016年2月2日、厚生労働省は、WHO(世界保健機関)により、小頭症及び神経障害の集団発生に関する「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」が宣言されたと公表した。これを受けて厚生労働省は、患者を診断した医師に対して保健所への届け出を義務付ける方針を固めた。蚊が活動を始める前の春ごろには、感染症法の「4類感染症」に指定するという。
ジカウイルス感染対策の予備的措置
ジカ熱に対しては、2月1日にWHOが緊急委員会を開き、緊急事態を宣言した。WHOは、今後のジカ熱への対策として、特に問題となっている地域における小頭症及びギランバレー症候群に関するサーベイランスの標準化及び強化、小頭症及び神経障害の集団発生に対するジカウイルス及びその他の因子等との因果関係に関する研究、などを進める。
さらに、妊婦等へのジカウイルス感染対策を進める必要性から、予防的措置として
- ジカウイルス感染症のサーベイランスの強化等の流行対策
- ワクチン、治療法及び診断法に係る研究開発等長期的対策
- 流行地域への渡航者に対する注意喚起等
- 情報共有
を行うこととしている。
WHOが今回、緊急事態を宣言した背景には、「ジカ熱が広がったフランス領ポリネシアでも小頭症が増えたと報告された」ことも挙がっている。
これに対し、厚生労働省は今後の日本の対応として
- 感染症法及び検疫法への位置づけ、届出基準等の検討(政省令改正)
- 日本医師会を通じ、臨床情報を医療機関等へ周知
- 自治体及び検疫所における検査体制の整備
- 蚊媒介感染症の対応・対策の手引き(自治体向け)と医療機関向けの診療ガイドラインの改訂
- 自治体及び医療関係者向けの研修会の開催
- 治療・予防法の研究開発
を明示した。
一方、日本の外務省では、「感染症危険情報」を発出した。注意を要する渡航先として挙がっているのは、ブラジル・メキシコ・パラグアイ・エクアドルなどを含む20か国。
危険度のレベルとしてはいずれも「レベル1:十分注意してください」となっているが、渡航・滞在にあたっては、蚊に刺されないように十分注意することのほか、規則正しい生活などで抵抗力をつけること、感染が疑われる症状がみられたら直ちに専門医を受診することなどが記載されている。
参考資料
厚生労働省 ジカウイルスと小頭症などの増加に関するWHO緊急委員会報告について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000111219.html
WHO
WHO statement on the first meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR 2005) Emergency Committee on Zika virus and observed increase in neurological disorders and neonatal malformations
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/1st-emergency-committee-zika/en/
外務省 海外安全ホームページ 感染症危険情報
http://www2.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/pcinfectioninfo.asp#danger
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ジカ熱の問題、ついにWHOも動き出しましたね。
万が一、日本でもジカ熱の患者さんが出たら、確かに大事です。春前には、なんとか世界中で沈静化してほしいですね。今のところ、日本での発症はないようですが、過去には2例ほど、東南アジアなどへの旅行者で、発症例があったようです(ただし、国内での感染ではない)。
ところで、オリンピックを控え、さらにこの時期は「カーニバル」で多くの観光客が訪れるはずだったブラジルですが、今年は「リオのカーニバル」が中止になったそうです。
景気衰退が主な原因として報道されていますが、ジカ熱の問題も関係があるのではないでしょうか。
カーニバルで妊婦さんが踊り子さんになるとは考えにくいですが、実際には肌の露出が多いスタイルですので、感染が爆発的に拡大、ということも考えられます。ブラジルの方には申し訳ないですが、むしろ良い決断だったのではないのかなと、個人的には思います。
それにしても、ジカ熱が「4類感染症」ですか。鳥インフルエンザ(4類)はともかく、新型インフルエンザは5類までの中にも無いのですよね。正直、そうなのか、という感想です。4類には、デング熱や日本脳炎も含まれますが、新型インフルエンザも季節性のインフルエンザになりましたし、それよりもジカ熱の方が、生まれた赤ちゃんへの影響も考えると、危険性が高い感染症、ということになるのでしょうか。
いずれにしても、あと3か月もたてば、日本でも蚊が活動を始めます。それまでに、世界中で沈静化できていると良いのですが…
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