【医療ニュースPickUp 2015年9月14日】 新たなカテーテル治療の国内第一例治験に成功 国立循環器病研究センター
大阪府にある国立循環器病研究センターは2015年9月9日、「開心手術が困難な重症僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療の国内第一例治験に成功した」と公表した。
国内治験の第一症例登録
同病院のハートチーム(心臓血管内科・安田聡部門長、心臓血管外科・小林順二郎部門長、手術麻酔科・大西佳彦部門長)が行ったもので、国内治験(治験識別記号:AVJ-514)の第一症例登録だという。
ここ数年、ヨーロッパをはじめとする海外の医療機関では、外科的手術が困難であり、手術適応とならない症例に対し、“AVJ-514”カテーテルによる、低侵襲治療が行われるようになった。
今回の患者は、重度の僧帽弁閉鎖不全症で心不全を繰り返す、開心手術が困難な80歳代の男性。国立循環器病研究センターのハートチームは、AVJ-514によるカテーテル治療を行い、結果的に僧帽弁逆流の程度は、重度から軽度に改善した。
この治療法は、大腿部の血管からカテーテルを挿入し、心房中隔を経て僧房弁に到達、専用の“クリップ”で弁をつかんで引き合わせる。これにより、僧房弁の閉鎖不全を軽減させ、逆流量を減らすというもので、開胸を要する従来の心臓手術よりも、患者への身体的な負担を軽減できる。
年齢や心機能低下などの臓器障害を含む合併症により、外科的手術の適応にならなかった症例でも、治療を行うことができるようになる。
国立循環器病研究センターによると、海外でのランダム化比較試験(EVEREST II:図3)では、AVJ-514は従来の開胸手術と同等の弁逆流、心不全(NYHA重症度分類)の改善が得られたことが報告されているという。
この治験は、AVJ-514 Japan Trialとして、2015年8月に登録された。国立循環器病研究センターでは今後も治験への取り組みを続ける意向。「外科的治療が困難な重症僧帽弁閉鎖不全症例に対して、より低侵襲なカテーテル治療の有効性・安全性が本邦においても明らかにされることが期待される」とコメントしている。
参考資料
国立循環器病研究センター 開心手術が困難な重症僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療の国内第一例治験に成功
http://www.ncvc.go.jp/pr/release/post_12.html
ClinialTrials.gov AVJ-514 Japan Trial
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02520310
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
色々調べてみると、このAVJ-514は、アボットバスキュラージャパン社のもののようです。アボットバスキュラージャパンといえば、心臓血管外科の手術につくと、良く目にする社名だと記憶しています。コーポレートサイトを見ると、「体内で自然に分解されるステント」とか、10年前なら考えられなかったような製品もあるようですね。
数年前には、TAVIという手術も保険適応になりました。TAVIは、開胸手術が適応とならない大動脈弁狭窄症の患者に適応される治療法で、大腿から挿入したカテーテルに付属している人工弁を、バネの力でバーンと開いて、従来の大動脈弁を押しのけるようにすることで弁置換を行う、という手術です。
最初にTAVIの情報を見た時は、画期的なのか?という気もしましたが、開胸手術に比べたら侵襲はかなり低いと思われますので、術後の社会復帰も早そうです。
ここ数年、より低侵襲な手術が増えてきたと思います。ダヴィンチもそうですが、開胸や開腹といった治療法が減ってくると、いわゆる鋼製小物の出番も減ってきそうですよね。手術室看護師の数も減ってきますし、10年後くらいには、緊急手術のみが開腹手術、なんて時代になるのかもしれません。
この記事をかいた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート