【医療ニュースPickUp 2016年2月16日】厚労省「先駆け審査指定制度」に医療機器や再生医療等製品5品目を指定
2016年2月10日、厚生労働省は、「先駆け審査指定制度」に基づき、医療機器及び再生医療等製品を指定したことを公表した。今回指定された医療機器及び再生医療等製品は以下の5品目。
成長戦略に掲げるイノベーション促進に期待
<医療機器>
- チタンブリッジ(甲状軟骨形成術 2 型):甲状軟骨形成術 2 型で用いられるチタン製の蝶番型プレート
- 癒着防止吸収性バリア:トレハロースを用いて臓器や腹膜の術後癒着を低減させるもの
<再生医療等製品>
- STR01 (自家骨髄間葉系幹細胞):患者自身の骨髄から採取した骨髄液から分離、培養した間葉系幹細胞
- G47Δ:悪性脳腫瘍(神経膠腫)への適応を目的とした、制限増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型
- 自家心臓内幹細胞:小児先天性心疾患(機能的単心室症)患者に実施する外科的修復術後の心機能改善を目的とした、患者自身の心臓から採取した組織から分離、培養した心臓内幹細胞懸濁液
いずれも、これらの製品を研究している日本の大学発のシーズを元に開発、あるいは国内中小企業・ベンチャー企業が開発に携わるものである。
厚生労働省では「日本における早期実用化を支援することで成長戦略に掲げるイノベーションの促進にもつながることが期待できる」としている。
厚生労働省では、2015年4月より、「先駆け審査制度」を導入している。2015年12月までに申請のあった医療機器などについて審査を行った結果、今回初めて、上記5品目を指定した。いずれも、導入効果が高いと見込まれる製品であり、一般的な医療機器等の審査には12か月以上を要していたが、これらの製品は、6か月を目途に、審査が行われるという。
具体的には
- PMDAにて行われる「治験相談」を、2か月から1か月に短縮
- 第Ⅲ相試験後の「承認審査」を、12か月から6か月に短縮 される見込み。
対象となるのは、
- 治療方法の画期性があるもの
- 一刻も早い実用化が求められている疾患に対するもの
- 対象疾患に係る著明な有効性がるもの
- 世界に先駆けて日本で早期開発・申請されるもの
などが対象となる。
これらの条件をすべて満たす場合に、「先駆け審査指定制度」への申請・審査が行われる。
参考資料
厚生労働省 「先駆け審査指定制度」に基づき、医療機器及び再生医療等製品を指定
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000111934.html
同上「先駆け審査指定制度」の試行的運用を開始します
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000081013.html
同上 薬事分科会 資料No.34 「日本再興戦略」改訂2014
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/0000081010.pdf
同上 薬食審査発 0401 第6号 先駆け審査指定制度の試行的実施について
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/0000081011.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
厚生労働省が「先駆け審査指定制度を始めますよ」と公表してから、10か月ほど経過していますが、やっと!本格的になったかな、という気がします。
これまでの承認審査には、結果的に1年半以上ほどかかる場合も多かったのではないかと思いますが(目標として12か月なだけで、実際はもっと長かったのでは?)、これを「半年にする!」と公言しているわけですから、新しい医療機器等を開発する期間全体が、ほんの少し早くなるはずです。
昨年秋ごろには、「ロボットスーツ HAL」が保険適応となりましたが、この審査に係った期間は8か月という、まさにスピード承認でした。今回指定を受けた5つの医療機器や再生医療等の製品は、これよりも早くなるわけですから、「世界に先駆けて、革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品を日本で早期に実用化」に対し、国も本腰を入れましたね、という印象です。そうか、「先駆け」って、「世界に先駆けて」の意味だったのですね。
試しに、いくつかを調べてみましたが、例えば「チタンブリッジ(甲状軟骨形成術 2 型)」は、そもそもこれを使用する術式が日本で開発された医療技術であり、現在、熊本大学を中心に治験中。実際の製品を製造しているのは福井県のものづくり企業、販売元はノーベルファーマ株式会社(東京)のようですから、広域での医工連携の成果ともいえるでしょう。
こういった、日本発の医療技術やものづくり技術が、世界で求められる日は、近いのではないでしょうか。
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