【2015/7/5】 胃の中にガーゼ異残30年、病院側が事故を公表
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
胃の中にガーゼ異残30年、病院側が事故を公表
2015年6月30日、新潟大学医歯学総合病院は、医療事故が発生したことを公表した。30年前に胃潰瘍の手術を受けた県内の80歳代男性の胃の中に「ガーゼの置き忘れ」があったというもの。
この男性は県内在住で、今年6月に別の医療機関で貧血の検査を受けた際、胃の中に腫瘤があることが分かり、腫瘤の摘出手術を受けた。
摘出された腫瘤の中にガーゼがあることが分かり、男性患者の既往歴などを確認した結果、およそ30年前に、新潟大学医歯学総合病院での胃潰瘍の手術歴があることが分かったという。
また、男性は他に胃の手術を受けたことが無かったことから、過去の手術の際に「ガーゼが遺残した」可能性が高い、となった。この30年間、男性患者には特にガーゼ遺残による症状はみられていなかった。
新潟大学医歯学総合病院では現在、
- 手術で使用したガーゼの数と、回収したガーゼの数が一致することを、手術中に繰り返し確認している
- X線不透過のガーゼを用いて、手術後にX線撮影を行い、遺残がないことを確認している
などの対策を取っているという。
手術中のガーゼ遺残という事故は、年間数件は起きているようだ。
少し古いデータだが、日本医療機能評価機構によると、平成14年から平成22年までの間に報告された医療事故情報の中で、年間数件~30件余りの「ガーゼ遺残事故」が起きている。その発生要因は多岐に渡るが、中でも注目されたのが「ガーゼをカウントするルールを守らなかった」という、ルール違反に起因するものだった。
この患者は、ガーゼ遺残による症状はみられていないようだが、病院側は「再発防止策を徹底する」としている。
参考資料
新潟大学医歯学総合病院 医療事故の公表
http://www.nuh.niigata-u.ac.jp/news/%E5%8C%BB%E7%99%82%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E5%85%AC%E8%A1%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-6/
日本医療機能評価機構 医療事故情報収集事業 医療事故情報等分析作業の現況
共有すべき医療事故情報「ガーゼが体内に残存した事例」(第14回報告
書)について
http://www.med-safe.jp/pdf/report_2010_3_R005.pdf
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ガーゼ遺残って、怖いですね。私自身、手術室での勤務経験がありますので、「ガーゼが合わなかった時の焦燥感」は、何度も経験しています。ガーゼカウントをくり返すことで、結果的には全て術中に見つかっているので、ガーゼ遺残という事故にはなっていないのが救いです。
私が手術室に最初に勤務したのは、今から20年ほど前ですが、「ガーゼカウントの徹底」は、もっとも最初に教わったことの1つです。実際に、ガーゼカウントが合わず、閉腹前にポータブルでX線撮影をしたことも何度かありました。
大抵の場合は、お腹の中などではなく、ドレープの隙間に入り込んでいたり、助手の先生(研修医)とドレープの間に挟まっていて気付かず、という状況でしたが(そういう時の助手の先生は、可哀そうになるくらい、執刀医の先生の怒られていましたけどね)。
しかし当時は、開腹や開胸、脊椎や大腿の手術以外では、X線不透過加工がされたガーゼではなく、普通のガーゼを使っている手術もありました。直接介助の看護師が手に持っている「器械拭き用ガーゼ」は、X線不透過加工の無いものでしたし、「ガーゼが入り込んでしまう余地」は、結構あったのかもしれません。
それから10年以上が経過して復職した手術室(違う病院です)では、眼科以外すべての手術でX線不透過加工がされたガーゼを使っていましたし、「器械拭き用ガーゼ」も同様のガーゼを使うことになっていました。耳鼻科で使う「鼻込めガーゼ」にも、X線不透過加工がなされていましたので、今はそういう時代なのだと思います。強いて言えば、綿球にも加工を施してほしいと思いますが、綿球の場合、手術中に器械出し看護師が小さく丸めて適切な物を作る、という場合もありますので、すべてにおいて、というのは難しいのかもしれません。
でも、手術から何日も経って、鼻から綿球が出てきたら、驚きますよね。鼻とかだと「症状がない」ことは無いと思いますし。何とかならないのかな?と、個人的には考えます。
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