【医療ニュースPickUp 2018年1月24日】勤務医の負担軽減を目指し、業務移管を - 医師の働き方改革
2018年1月15日、厚生労働省は「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)において、勤務医の長時間労働を是正するための緊急的な取り組みとして、医師の労働時間管理のほか、予診や服薬指導、静脈注射などの業務移管をさらに推進するなどの骨子案を示した。
国が目指す「働き方改革」は、時間外や長時間労働が常態化している医療分野も例外ではない。
今後、医師の時間外労働の上限規制が罰則付きで施行されるが、検討会では「それを待たず自主的に対策に取り組むべき」として、全医療機関で実施するべき医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組みを以下のようにまとめた。
- 医師の在院時間を把握する労働時間管理の適正化
- 職員の週40時間を超える労働を認める36協定の自己点検
- 医師の労働時間を短縮するため既存の仕組みを活用
- 他職種へのタスク・シフティング(業務移管)の更なる推進
- ライフイベントを踏まえた女性医師のキャリア形成支援
特に4については、
- 初診時の予診
- 検査手順の説明や入院の説明
- 薬の説明や服薬の指導
- 静脈採血
- 静脈注射
- 静脈ラインの確保
- 尿道カテーテルの留置(患者の性別を問わない)
- 診断書などの代行入力
- 患者の移動
という9つの業務を原則、看護師や事務職員が分担して実施すべきと指摘して。一方で、大学病院では特に、業務移管が進んでいないことが明らかとなった。
骨子案では、医師の業務内容を再検討し、特定行為研修を修了した看護師等への適切な業務分担を促すだけではなく、研修場所の拡大による修了者の拡大、新たな職種の国家資格化などを提案。
さらに医療機関の状況に応じて、可能であれば緊急でない時間外対応の禁止や当直明け勤務の負担緩和、完全休日の設定、複数主治医制の導入などに努めるべき、としている。
こうした医療機関の自主的な取り組みを基本としつつも、実現に向けて厚生労働省が事例を積極的に発信するほか、各種補助金による医療機関への財政的支援、医療勤務環境改善支援センターや病院団体などによる支援も重要としている。
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
ここ数年、内閣府による「働き方改革」はさまざまな方面での応用が進んでいるようですが、いよいよ医療の分野でも必要とされるときが来たようです。
もっとも、医師の労働時間短縮については、数年前から問題視されている事柄ではありますので、やっと「働き方改革」という名目での制度化が検討され始めたというところでしょうか。
一般企業であれば、一部の業務の自動化(最近はRPAという言葉が流行り始めていますが)や、ダイバーシティ(人材の多様化)的な人材確保を進めるなど、「人手が足りないところに少しだけ“違う手”を入れる」という方法もあるでしょう。
しかし医療者にはそれが難しい。そもそも「資格」ありきの職業ですから、誰でも「ちょっとこれ手伝ってくれる人やシステムを探そう」というわけにはいきませんよね。
「この部分は医師の仕事」「この部分は看護師の仕事」というように、仕事の内容がきっぱり分かれてしまう、これが通説でした。
しかし超多忙な医師の仕事も、よくよく考えてみれば「この部分、他の人でも良いのでは?」という部分が、明らかになってきた、ということでしょうか。
そのうち、人ではなくてもシステム(ロボットかもしれませんが)が一部を代行するような仕組みも、出来てくるのかもしれません。
実際、今回ピックアップされた「医師の業務」でも、一部は看護師や他の職種が代行できる(すでに行われている)項目があります。
でもだからといって、誰が代行しても良いのではなく、そこにはやはり「相手を信用しているから」という前書きが必要です。
さらに「すべてを代行してもらう」ことも、医療機関によっては難しいこともあるでしょう。
医師が人手不足なのと同様、他の職種も人手不足となっている医療機関、地域はたくさんあります。
その中でどうやって業務を分担していくのか。一部は「人」ではなく「システム」に分担させることも、検討する時期にきているのかもしれません。
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