【医療ニュースPickUp 2017年7月26日】マダニ感染症の野良猫にかまれた50代女性が死亡。厚労省が注意喚起
2017年7月24日、厚生労働省は、野良猫に咬まれた女性が、マダニが媒介する感染症マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」により死亡したことを確認、注意を呼び掛けている。
この症例は、西日本に在住していた50代女性。2016年に、衰弱した猫を病院に連れて行こうとした際に手をかまれて発症、10日後に死亡していた。女性の体にはダニにかまれた形跡はなく、国立感染症研究所では、野良猫が最初にSFTS感染して女性に移ったと見ている。
一般にはSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染、発症する。患者体液との接触により人から人への感染も報告されているが、今回のように哺乳類(猫)に噛まれることによる感染で死亡するのは非常に稀なケースだという。
SFTSは、2011年に中国で初めて存在が報告された。日本国内で初めて確認されたのは2013年1月。現在でも西日本を中心に患者が報告されており、2017年6月28日現在、発症例266例が報告され、そのうち57例が死亡している。死亡例はすべて50代以上で、高齢者が重症化しやすい傾向にある。また、今年に入って飼い犬や飼い猫が発症した例も、日本では初めて確認された。
SFTSウイルスに感染すると、6日~14日の潜伏期を経て発熱や消化管症状、意識障害を含む神経症状、出血症状などが現れることがある。致死率は6.3~30%程度だが、有効なワクチン等は無い。
動物から感染する可能性が確認されたことから、厚生労働省は獣医師会などの各関係機関に注意喚起を行った。また、ペットとして犬や猫を飼う人には
- えさの口移し、同じ布団で寝るなどは控える
- 触ったら手を洗う
- ダニ駆除剤などを使用して予防に努める
- 弱っている動物を見かけたら動物病院を受診する
などの対策を呼び掛けている。弱っている動物を扱う場合は、手袋や防護衣などで感染予防策を取ることも必要だ。
一方、屋外にいる体調不良の動物に接触する場合は注意するが必要だが、屋内で飼っている犬や猫については感染するリスクが低いことから、獣医師には過剰な不安をあおらないことにも配慮を求めている。
参考資料
厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に係る注意喚起について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000172201.pdf
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
国立感染症研究所 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html
【医師紹介会社研究所’s Eye =記事への所感=】
厚生労働省、国立感染症研究所のWebサイトには、マダニの写真が掲載されていますが、見ただけで手足がかゆくなります。マダニに咬まれたことは無いのですが、その辺の草むらなどにも、普通に居そうなので怖いですよね。普段は草むらに入り込むような生活をしない方でも、犬の散歩中やゴルフのラウンド中など、その可能性はゼロではありません。
ましてや野良猫や野良犬が存在する地域は、今でもたくさんありますので、どこに感染リスクが潜んでいるのかが分かりません。
野良の動物が「調子が悪そう」というのは、普段から接していないと分かりませんし、自分の家のペットは大丈夫でも、野良猫がなついてきたからとか、野良犬がかわいそうだからといって、むやみに手を出すのは考え物なのかもしれません。
厚生労働省からの注意喚起文書には「SFTS ウイルスに感染した疑いのある患畜の取扱にはPPE(手袋・防護衣等)により感染予防措置をとり、汚物等を処理する際には次亜塩素酸ナトリウム含有消毒剤による処理やオートクレーブなどの加熱滅菌処理を行う。」とあります。
これ自体は、他のウイルス感染に対しても大きな違いは無いとは思うのですが(ヒトのウイルス性胃腸炎等の場合も似た様なものです)、体調不良の猫や犬は、触れようとするヒトの手を容赦なく噛みますから、やはり感染している可能性のある動物には、むやみに手を出さないこと、が一番重要な防護策なのかもしれません。
万が一「ダニがくっ付いている」のを見つけたら、素直に獣医さんに連れていこうと思います。
この記事をかいた人
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