テレビ朝日「ワイドスクランブル」 H25年8月7日12:00~より
2013年8月7日放送のテレビ朝日「ワイドスクランブル」では「ピロリ菌は宿敵」胃がん撲滅を目指す医師をテーマに放送していました。以下は番組内容の要約ですので、番組を見落とした方などはチェックしてみてください。
※画像はテレビ朝日「ワイドスクランブルび」ウェブサイトより http://www.tv-asahi.co.jp/scramble/
胃がん大国ニッポン!
胃がんのり患者は、12万2910人(国立がん研究所がん対策情報センター2008年)になるという。毎年10万人以上が患い、5万人が死亡しているというのだ。「ワイルドスクランブル」では、その胃がん撲滅にすべてをささげる医師の紹介とともに、胃がんの予防や治療について紹介された。
若き医師の江田クリニック院長・江田証博士は、胃がんとピロリ菌の真実とは何かについて説明する。
江田クリニックは、栃木県南西部岩船町にある無医村だった場所に設立された。江田証院長は2004年に、胃がん発生のメカニズムの研究で日本消化器病学会奨励賞を受賞している。胃がんのスペシャリストとして、2005年、生れ育った町に34歳で地域唯一の病院を開業。地域に根差した治療を行いながら、胃がんの早期発見や早期治療を目指すためにクリニックを開業したのだ。
毎年、新たに10万人以上が発症するという胃がん。江田院長は
「胃がんは遺伝ではなく、ピロリ菌で感染する」
と言及しながら、
「胃がんはこれまで遺伝やストレス、お酒というイメージがあったが、研究が進みまして、胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌という細菌によって99%以上起こっていることが分かったのです。」
と話す。
人の胃に住み着くピロリ菌(正式名称ヘリコバクター・ピロリ)は、元来井戸水に存在している。これを飲むことで人に感染するのである。さらに日本人が感染しているピロリ菌は、胃に住み続ける強毒性の細菌なのだ。江田院長は
「日本人は60歳以上の方だと、7~8割の人がピロリ菌に感染しています。ピロリ菌に感染すると、100%無症状の胃炎を起こします。これが慢性胃炎というものなんですけれども、この慢性胃炎が長く続くと、胃の細胞遺伝子が傷ついてしまって、それががん化につながることが分かっています。」
と説明した。
ピロリ菌は大人から子供に「うつる」
ピロリ菌に感染している人全員が重篤な病気を発症する訳ではない。しかしピロリ菌が慢性胃炎や十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因になることが分かっている。江田院長は、ピロリ菌の一番厄介なところは“うつる”ことだと指摘する。
「大人になってからは基本的にうつりにくいのですが、ピロリ菌を持っているお父さんやお母さんが口移しで離乳食をあげたりしてそれでうつったと言われています。小さい頃の胃袋は胃酸を出す細胞が未熟なんですね。そうするとピロリ菌が口から入ってきても胃酸で殺すことができないので小さいころだとうつってしまうんですね。」
と、江田院長は気が付かない間の感染に注意を促す。小さいころに一端感染すれば、ピロリ菌は体の中に住み続けるという。
「世代を超えてうつっていくという病気ですので、ここで伝播をブロックすることが次の日本にとって重要です。今よく言われているのが、学童期に全員学校にいるときに調べてその段階で除菌してしまえば将来胃がんはほとんど撲滅できると言われています。」
と、江田院長はその可能性を言及。
日本人の宿敵、ピロリ菌
そもそも江田院長が胃がんについて志を持った出来事は小学校の時にさかのぼり、近所のお年寄りが次々と胃がんで亡くなる状況に、恐怖から「胃がんってうつるの?」と両親に聞いたことが始まりだという。
映画監督の山本晋也さんは江田院長へ、次のような質問を投げかけた。
「先生にとってヘリコバクター・ピロリ菌とは。」
すると江田院長は、
「日本人の宿敵ですね。我々の愛する近くで亡くなったおじちゃんやおばあちゃん、そういう人たちの命を奪ってきた宿敵だと思います。」
と涙ながらに答えていた。
江田院長は現在、多くの人にピロリ菌の感染検査を勧めている。ピロリ菌の検査は自費の場合、血液による検査が2000~3000円程度。呼気による検査は8000円程度で、便による検査は3000円程度で受けられる。
検査によってピロリ菌が発覚した場合、ピロリ菌の除菌として3種類の薬を朝・夕2回1週間服用するが、費用は自費負担の場合3万円程度でできる。胃がんの原因のほとんどがピロリ菌であることを考えると、ピロリ菌を撲滅することで胃がんも撲滅できる可能性が高いのだ。
山本晋也監督は、さらに次のような質問をした。
「江田先生は、これから何を目指したいですか。」
対して江田院長は、次のようにその志を語った。
「2020年に日本の胃がん患者はマックスになると言われています。団塊の世代を中心にぜひこの機会に除菌していただいて、胃がんに苦しむ人を少しでも減らして頂きたいというのが私の夢です」
ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの疾患を引き起こす。胃がん患者の90%以上がピロリ菌感染者という。さらに口から感染し、特に乳幼児期へその親から感染する細菌でもある。
注意しなければならないのは、ピロリ菌に感染しているすべての人が重篤な病気を発症するわけではないので、必要以上に恐れすぎないことが大事だという点だ。
経済ジャーナリストの荻原博子さんが
「胃がんで亡くった人を思い浮かべて涙ぐんでいる姿を見てお医者さんならでは命をまっとうさせてあげたいという思いにあふれた方なんでしょうね。」
とコメントしていたように、無医村に開業し、胃がん撲滅のために日夜活動される姿には頭が下がる。江田院長が推進しているように、胃がんの早期発見や早期治療のためにも、まずはその原因となるピロリ菌検査と除菌を意識して受けていきたいものである。
テレビ朝日「ワイドスクランブル」2013年8月7日放送「ピロリ菌は宿敵、胃がん撲滅を目指す医師」より引用および要約
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート