Eテレ「まいにちスクスク」 H29年1月30日/31日/2月1日19:55~20:00より
※画像はEテレ「まいにちスクスク」ウェブサイトより http://www.nhk.or.jp/sukusuku/maisuku.html
2017年1月30日、31日、および、2月1日放送のEテレ「まいにちスクスク」では、それぞれ「冬にかかりやすい病気1~3 インフルエンザ、呼吸器の病気、おなかの病気」をテーマに放送していました。以下は番組内容の要約ですので、番組を見落とした方などはチェックしてみてください。
出演医師:聖路加国際病院 小児科医長 草川功
※3回分の放送内容を1記事にまとめてあります。
冬にかかりやすい病気(1)「インフルエンザ」(2017年1月30日(月)放送)
<ナレーション>
冬は感染症が流行る季節です。そこで乳幼児が冬にかかりやすい病気について、基礎的な内容を知っておきましょう。
<医師>
乳幼児は抵抗力が低く、かぜの症状も重症化しやすいため早めの対処が必要です。
<ナレーション>
原因となるインフルエンザウイルスは感染力が非常に強く、毎年12月から3月にかけて流行します。患者の咳やくしゃみによって、人から人に感染します。
症状は咳、鼻水など普通の風邪に似たような症状に加え、38℃以上の発熱が出るのが特徴です。頭痛や関節痛、体のだるさなどの全身症状もあり、特に初期には症状が強く現れます。
発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を飲むと、発熱期間が短くなると言われています。
<医師>
インフルエンザで最も怖いのは痙攣です。痙攣を起こしたときは緊急を要するため救急車を呼んでください。痙攣とは、手足のピクピク、白目をむく、泡を吹くなどの症状が出て呼びかけても状態です。
<ナレーション>
小児科を受診して子供がインフルエンザだと診断された場合、家ではどのように見守るのが良いのでしょうか。家では安静が一番です。高熱があるときは脱水になりやすいので、水分をこまめに与えてください。
インフルエンザは流行する前に予防接種を受けることで重症化を防ぐことができます。子供は2回接種することを進められます。その理由は、1回目の接種が終わって、免疫効果が出始める頃に2回目を接種することにより、効果が増強されるためです。
Q:インフルエンザワクチンを2回接種してもインフルエンザにかかるのはなぜでしょうか?
<医師>
インフルエンザの予防接種とは1回目で50%、2回目で80%くらいの免疫力(抵抗力)がつきます。そのため効果は100%ではありません。したがって発病予防ではなく、重症化予防として考えていただきたい。3ヶ月から半年くらい効果は持続します。
<ナレーション>
予防接種は生後6ヶ月から接種することができますが、1歳を過ぎてからの接種の方がより効果が高いと言われています。大人に比べて予防接種の効果が出にくい乳幼児のために、周りの大人も予防接種を受けて、ウイルスを家に持ち込まないようにしましょう。
Q:一度インフルエンザにかかると、抵抗力がつくから残りのシーズンはかからないのでしょうか?
<ナレーション>
インフルエンザウイスルは形や含まれるタンパク質の種類によって、大きくA型、B型、C型の3種類に分けられます。
<医師>
抵抗力がつくのは、かかったインフルエンザの型に対してのみです。そのため、A型にかかった後にB型にかかることはあります。
<ナレーション>
インフルエンザウイルスは同じ型でも毎年のように少しずつ変化して、巧みに人の免疫から逃れて生き延びてきました。
インフルエンザにかからないためには、ウイルスにふれないことが一番です。人混みに子供を連れて行くときには注意が必要です。
冬にかかりやすい病気(2)「呼吸器の病気」(2017年1月31日(火)放送)
<ナレーション>
ほとんどの子供が2歳までに一度は感染すると言われているのが、RSウイルス感染症です。乳幼児の呼吸器疾患の代表的な病気です。風邪の一種ですが、非常に感染力が強く、冬に流行します。症状は鼻水・鼻づまりから始まり、2~3日後に咳に移行します。その後熱が出て、咳がひどくなり、ゼイゼイヒューヒューといった気道が狭く苦しそうな呼吸をすることがあります。
Q:子供が咳き込んだときの寝かしつけ方は?
<医師>
冷たい空気や乾いた空気は咳に良くないので、若干温度と湿度を高めにすることが大切です。また、頭を上げた姿勢(ちょっと寄りかかった姿勢)で寝かせると良いでしょう。
<ナレーション>
RSウイスルの感染ルートは患者の咳やくしゃみからの「飛沫感染」と、患者やウイルスの付いたものからの「接触感染」があります。
<医師>
兄弟の場合、上の子供が幼稚園や保育園からRSウイスルを持ってきてしまい、下の子供が感染してしまうと重症化しやすいです。初めてRSウイルスにかかると、3割くらいの子供は細気管支炎を起こします。細気管支炎とは空気の細い通り道が感染によって、ぐっと狭くなってしまい、呼吸するときに上手く空気の出入りができなくなってしまい苦しくなる病気です。6ヶ月未満の子供は入院が必要になることもあります。
<ナレーション>
RSウイルス感染症の予防には手洗いのほか、アルコール消毒が効果的です。日常的に触れるおもちゃやテーブルの上などはこまめに消毒しましょう。
ヒューヒューゼイゼイといった呼吸を引き起こす危険性のある病気は他にもあります。秋から冬にかけて流行する「マイコプラズマ肺炎」、冬の終わりから春にかけて流行する「ヒトメタニューモウイルス感染症」です。感染ルートはRSウイスルを同じく、患者のくしゃみや咳による飛沫感染や接触感染です。
Q:冬に病気にかかりやすくなるのはどうして?
<医師>
病原体は冬の低温・低湿の状態では増殖しやすくなります。
<ナレーション>
空気が乾燥するとウイルスの水分が蒸発して、軽くなり舞い上がります。舞い上がったウイルスは体の中に入り込み、くしゃみや咳の飛沫によってさらに飛んでいきます。このように冬は感染が広がりやすいのです。
<医師>
寒いときは免疫力(抵抗力)が少し低下すると言われていいます。鼻は本来、加湿・加温して、ウイルスを処理する働きを持っています。しかし、鼻の内部が乾くとウイルスの防御機能が失われてしまうのです。
<ナレーション>
感染症の予防は部屋を感染させないことです。加湿器を利用したり、濡れたタオルを干したりして湿度を保つようにしましょう。
冬にかかりやすい病気(3)「おなかの病気」(2017年2月1日(水)放送)
<ナレーション>
乳幼児がかかるおなかの病気と言えば感染性胃腸炎です。中でも感染力が強いのはロタウイルス感染症です。発症しやすいのは生後6ヶ月から2歳乳幼児で、5歳までにほぼすべての子供がかかると言われています。
症状は激しい嘔吐や下痢、発熱です。受診の目安は嘔吐や吐き気が続く場合、食べない・飲めない状況が続く場合、そして最も急を要するのが痙攣を起こした場合です。
<医師>
ロタウイルス感染症の下痢の特徴は、「米のとぎ汁のような白い水っぽい便」です。色の目安は母子健康手帳に記載されている1番の色(本来は胆道閉塞症を早期発見するためのもの)を参考にしてください。
患者の便1ミリリットル中にロタウイスルが1億から100億個いると言われていますが、実際の感染はわずか10個のウイスルで感染してしまうため非常に強い感染力を持ちます。
<ナレーション>
病気が進むと脳症を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
そして、もう一つ知っておきたいのがノロウイルス感染症です。ノロウイルスに汚染された生牡蠣などの二枚貝が原因の食中毒です。症状は同じく嘔吐、下痢、発熱ですが、便の色は白くなるわけではありません。
嘔吐や下痢が続くと、体の水分が急激に少なくなってしまいます。経口補水液などを少しずつ与えて、脱水症状に気をつけましょう。ただし水分などを摂りすぎると戻してしまうこともあるので注意しながら与えましょう。
ロタウイルス感染症もノロウイルス感染症も、患者の便や吐瀉物の中に含まれるウイルスが体内に入って感染します。乾燥して空気中に飛んだウイルス口に入ったり、手についたウイルスが知らないうちに口に入って感染します。
<医師>
この病気の注意点は家族内の二次感染です。飛び散ったものの消毒などが重要になってきます。
Q:部屋の中で吐いた場合の消毒方法は?
<ナレーション>
処理するときには捨ててもよいエプロン、マスク、手袋、ビニール袋を用意し、直接触れないように注意します。汚物中のウイルスが飛び回らないように、まずペーパータオルなどで静かに覆います。その上から塩素系漂白剤を薄めたものをたっぷりスプレ-します。
Q:なぜ塩素系漂白剤なのか?
<医師>
ノロウイルスやロタウイルスは通常のアルコール消毒は効果がありません。ここが他のウイルスとは違う所です。
<ナレーション>
スプレーした後は、静かに汚物を包み込むようにビニール袋に入れます。さらに床をもう一度浸すようにスプレーし、拭き取った後水拭きをします。使ったマスクや手袋も一緒に密封して廃棄しましょう。
手洗いはウイルスの数を減らす最も有効な方法です。石鹸をよく泡立てて、流水で洗い流しましょう。
Eテレ「まいにちスクスク」2017年1月30日、31日、2月1日放送「冬にかかりやすい病気1~3 インフルエンザ、呼吸器の病気、おなかの病気」」より引用、要約、および台詞等一部書き起こし
この記事を書いた人
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