NHK「総合診療医ドクターG」 H28年10月5日 より
2016年10月6日放送のNHK「総合診療医ドクターG」では患者の訴え「頭が痛くてだるい」をテーマに放送していました。以下は番組内容の要約ですので、番組を見落とした方などはチェックしてみてください。
※画像はNHK「総合診療医ドクターG」ウェブサイトより http://www4.nhk.or.jp/doctorg/
今回の患者の症状は?
患者はダンス部に所属する女子高生(16歳)。2週間ほど前から熱っぽくてだるく、練習を休んでいたのだが、大会が近付いてきたので、この日は無理をして練習に参加した。それほど激しく踊っていないのだが、ひどい頭痛と息切れがして倒れてしまった。小さいころから頭痛持ちで。うるさい音や光が耐えられないようなことがあるが、この日の頭痛はいつもと違う。何か恐ろしい病気が潜んでいるのか…。
再現ドラマ
患者「なんだか頭がすごく痛くて、体もだるいんです。」
患者新垣恵利さんの主訴:頭が痛くてだるい
先生「新垣さん、頭痛がいつからどのようにはじまりましたか?」
患者「放課後、ダンス部で練習をしていたんですけど、踊りはじめてすぐに頭が痛くなり始めて、息切れしてめまいもして倒れてしまいました。」
先生「意識を失ったんですか?」
患者「いえ、一瞬目の前が白くなりました。だけど、意識はありました。」
先生「頭は打っていませんか?」
患者「打ってないです。」
先生「バイタルは?」
ナース「体温37,4度、血圧114の62、脈拍114、呼吸数22、SpO295%です。」
先生「ダンス部の先生は一緒におられたんですか?」
ダンス部の先生「いえ、私はその時にいなくて」
ダンス部の部長「私がその時一緒にいました。」
先生「どんな様子だったんですか。」
ダンス部の部長「恵利は久しぶりだったんで、最初は見学させてその後、恵利のパートをあわせたんです。でもその後によろよろとして倒れこんだんでまずいなと思って保健室に連れて行ったんです。すぐに水分をとらせて休ませました。熱中症かと思ったんで。そしたら落ち着いてはきたんですけど、30分ほどしてもまだ頭のほうが痛みがとれないというので連れてきたんです。」
先生「頭のどの辺が痛いんですか」
患者「両側のこめかみあたりです。」
先生「どんなふうに痛みますか?」
患者「ズキンズキンって感じです。」
先生「今も痛いですか?」
患者「学校にいたときよりはだいぶよくなりましたけど、まだ痛いです。」
先生「吐き気はありますか?」
患者「ないです。」
先生「手足のしびれや動かしにくいことはありますか?」
患者「手足が痛い感じです。」
先生「熱はいつからありますか?」
患者「熱は測っていませんが、2週間前からなんだかだるいです。」
先生「痛いですか?」
耳の後ろが赤くなっているが、痛くはない。
先生「おすと痛いですか?」
患者「大丈夫です。」
瞳孔異常なし、のどの腫れなし、バレー症状なしだった。
先生「今日は月経ではないですか?」
患者「いいえ、違います。」
先生「月経は不順ではないですか?」
患者「ちゃんときてます。」
先生「最近月経の量はどうですか?」
患者「いいえ、かわりません。」
先生「前に同じような痛みをかんじたことはありませんか?」
患者「今日ほどではないですが、2週間前にも同じような痛みを感じました。2週間前はすごく暑くて、今日と同じズキンズキンという痛みでした。その日から練習は休んで見学してるんです。」
先生「頭痛は2週間前と今日だけですか?」
患者「いいえ、実は私ときどき頭が痛くなるんです。小学校からなんですが。」
先生「どれくらいの頻度ですか?」
患者「月に1、2回です。心配されると困るので皆には内緒にしていたのですが、いったん頭が痛くなると音や光がしんどくなってその場を離れたくなるんです。」
先生「新垣さん、今回の頭痛はいつもの頭痛と違ったんですか?」
患者「はい、なんとなく。」
先生「頭痛がしたとき、息切れがしたとおっしゃいましたね。いつもの頭痛でも息が苦しいのですか?」
患者「いつも頭が痛くなっても息切れはしません。でも最近階段を上ったりするとき、しんどいです。
」
先生「いつごろからですか?」
患者「2週間くらい前からです。頭がいたくなりはじめたころからです。」
さて原因は何か
脈も呼吸も早く、酸素飽和度がわずかに低下している。
3人の研修医が病名を予想。
1人目
乳突洞炎
頭蓋骨の耳の下にある乳突突起から菌がはいり、乳突洞に炎症が起こる病。
主に中耳炎が原因。
耳の後ろが赤く腫れていたから。
首の
2人目
全身性エリテマトーデズ
免疫システムが本来菌を攻撃するが、誤って自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患。
全身にさまざまの症状がでるのが特徴。
鼻の周り蝶形紅班ができることが特徴。
若い女性に多い。
節々の痛み、耳の後ろが赤いので。
3人目
くも膜下出血
くも膜の内側から出血する病。
激しい頭痛、吐き気、嘔吐、急激な血圧低下、意識喪失が起こる病。
3分の1が死に至る。
ほかにあげられる疾患は、脳腫瘍。
頭痛、吐き気、視界がぼやけるなどの症状がでる。
悪性の場合は手術が難しい。
朝に強く痛む、腫瘍が大きくなると痛みも強い。
いつも頭痛、2週間前の頭痛、今回の頭痛、時系列で考えるとどうですか?
同じなのか。
研修医1「違うと思います。」
研修医2「頭痛の時に、光や音を敏感に感じる。いつもの頭痛は偏頭痛ではないかと思います。」
偏頭痛
頭部の血管が拡張されて起きる頭痛で、こめかみが痛く、光や音に敏感になる病。
2週間前と今回の頭痛は偏頭痛ぽくはない。
今回のほうがひどい。
ならばその病気は?
くも膜下出血はすぐにひどくなるので2週間も続かないので考えられない。
乳頭洞炎も考えにくい。
これまでの経過で考えられるのは
全身性エリテマトーデスと脳腫瘍。
どちらも2週間以上続く病。
診断の所見で気になった点はあるか。
研修医1「頑健結膜の蒼白で貧血の症状があったかと思うので。」
ということで患者には貧血がある。
頭痛と貧血の因果関係は?
研修医3「貧血になって運動をしたことで酸素が頭にいかず頭痛が起きたのではないか。」
研修医1「血管がひろがることで頭痛が起きるのでないでしょうか。ズキンズキンとした頭痛が起きたとおっしゃってますし。」
貧血と痛み
血管の中で酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなると、脳内にたくさん酸素を送ろうとして血管が広がります。
この時、巻き付いていた神経が動くことでズキンズキンとした痛みが起きます。
もっかいVTRをみて検証。
ハァハァ言いながら痛くなっている。
なぜハァハァしているのか?
研修医1「貧血がおきていても全身に送られる酸素の量が減って呼吸数を上げて補うため息苦しい。」
貧血だけの症状なのか。
研修医2「心臓で何か起きている可能性もあるのでないかと思います。」
心不全の可能性はありますか。
研修医2「可能性はあると思います。」
貧血が続くと心酸素が不足になる。
心臓に負荷がかかります。
大量の血液を送り出しながら心不全になる状態を高拍出性心不全といいます。
心不全だったらどんな問診や症状を聞きたいか。
研修医2「横になったらしんどくないか」
再現ドラマに戻る。
先生「寝ている姿勢はつらくなかったですか?」
患者「そうですね、確かに横になっているほうがしんどいような気がしました。」
ダンス部の先生「熱中症だと思って足を高くして寝かせていたのですが、寝ていると苦しいと言って起き上がってきたんです。」
母親が到着。
先生「2週間前から恵利さんに変わった様子はありましたか?」
母親「疲れたというわりにはぐっすり眠れていませんでした。寝ているのに、疲れているのは変だなと思いました。」
患者「2週間前から変なんです。父親に風邪をうつされて、治ったと思ったらそれから1週間たつとまた調子悪くなるんです。」
先生「病院ではどんな指摘をされましたか?」
患者「血小板の値が少ないと言われました。」
先生「熱と腹痛意外に症状は?」
患者「ひじとか手足の関節が痛くなりました。」
先生「じっとしていても痛いんですか。」
患者「はい。いつも朝起きた時が痛くてそのうち気にならなくなります。」
さて病名は何か。
研修医1
若年性特発性関節炎。
16歳未満に発症、原因不明の慢性関節炎。
貧血が起きた時、熱があがったりさがったりするスパイク熱がある。
研修医2
特発性血小板減少性紫斑病
血小板減少によって出血しやすくなる病気。
ウィルス感染をきっかけに発症。
研修医3
IGA血管炎
自己免疫疾患で全身の細い血管に炎症がおき出血しやすくなる。
ウィルス感染をきっかけに発症。
ふたたびカンファレンス。
IGA血管炎では血小板は減るのか。
血小板の値は保たれているのでかんがえにくい。
Dこかで出血が起きて貧血が起きたということだがそのようなシーンはあったか。
出血の症状がなかったので考えにくい。
研修医3人があげたのは考えにくい。
心不全の可能性は。
診察の所見では、貧血で全身の酸素を必要していると心雑音が聞こえる。
2か月前から微熱があって心雑音が聞こえるこの方はいったい何の病気か。
感染性心内膜炎は外せないと研修医3が言った。
最近が心臓の中にはいる病気。
弁の動きがわるくなるため血液が流れる時に心雑音が聞こえる。
全身に広がると貧血が起きる。
全身性エリテマトーデスを考え直していいのかと研修医1が言った。
全身性エリマストーテスでは貧血はおきるのか。
研修医1「汎血球減少によって血小板も減るし、ヘモグロビンも減少し貧血もおこりやすい。」
全身性エリテマトーデスは、細菌やウイルスに感染して、免疫システムに異常をきたし、発病する。
新垣さんは2、3か月前にウイルス性の風邪にかかっている。
新垣さんは、全身性エリテマトーデスなのか、感染性心内膜炎なのか。
どうやって区別する?
研修医1「血液検査をしたい。」
血液検査の結果
ヘモグロビン、白血球、血小板は低下、総ピリルピン、MCVは増加。
この結果から赤血球が壊されて貧血になっているのではないか。
全身性エリテマトーデスは赤血球が壊されて貧血が起きる場合、ピリルビンの値は上昇する。
感染性心内膜炎は赤血球が作られずに貧血が起きて、ピリルピンの値は上がらない。
以上をふまえて、
全身性エリテマトーデスはではないのか。
研修医2「全身倦怠感や食欲不振は比較的にでやすいと思います。
関節痛もあてはまる。」
症状はすべてあてはまる。
これによって病名は全身性エリテマトーデス。
この病気は完治がないが、管理をすることはできる。
ドクターの見解
一つ一つの確認作業を患者さんをみるうえで考えさせられます。
頭痛だけではみにくいだけ症状をまとめることが大切。
NHK「総合診療医ドクターG」2016年10月5日放送 患者の訴え「頭が痛くてだるい」より引用、要約、および台詞等一部書き起こし
この記事を書いた人
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