【TV】「チョイス@病気になったとき(Eテレ)」まとめスペシャル 肺の病気
※画像はEテレ「チョイス@病気になったとき」ウェブサイトより http://www4.nhk.or.jp/marutoku/
2017年1月28日放送のEテレ「チョイス@病気になったとき」では「まとめスペシャル 肺の病気」をテーマに放送していました。以下は番組内容の要約ですので、番組を見落とした方などはチェックしてみてください。
出演者 藤崎奈々子
出演者:中條誠子、八嶋智人、大和田美帆
専門家: 国立病院機構東京病院 呼吸器センター部長 永井英明
国立がん研究センター東病院 呼吸器外科科長 坪井正博ほか
第1章 肺炎
肺炎は日本人の死因第3位で年間12万人以上が亡くなる。
肺炎で亡くなる97%以上が65歳以上。
風邪と肺炎は明らかに違う病気だが、風邪をこじらせて肺炎になると要注意。
ケース① 風邪をこじらせ肺炎に?
73歳男性。
体力に自信があったが、風邪をひき、激しい咳が出始め、呼吸困難になった。
病院での検査で肺炎と判明。
のどの下は気管、気管支、肺胞と分かれている。
肺胞に炎症が起きるのが肺炎で、原因は細菌・ウイルス・カビなどがある。
一般的な風邪は細菌やウイルス入り、鼻やのどで炎症を起こすものを言う。
なぜ体力に自信のあった73歳男性は肺炎になったのか
原因①
のどと気管を結ぶ細胞にある線毛細胞という組織。
線毛細胞は細菌などが肺に入らないように働いている。
ところが風邪によって線毛細胞が壊れてしまうと、その機能が果たせなくなり、細菌を肺に入れてしまっていた。
原因②
さらに、肺炎になった当時の生活にも原因があった。
男性の家に夏休み中だった小学生の孫が泊まりに来ていた。
男性は毎日、孫を遊びに連れて行ったため、疲れがたまり、睡眠不足もあった。
治療
睡眠は7時間とるようにすると風邪や肺炎の予防になる。
風邪と肺炎の症状の違い
一般的な風邪の症状は咳、のどの痛み、くしゃみ、鼻水、38℃未満の発熱などがあり、症状は1週間くらい続く。
肺炎の症状は激しい咳、胸の痛み、黄色や緑色の痰、息苦しさ、38℃以上の発熱があり、症状は長引く。
肺炎は風邪よりも症状が重症になることが多い。
高齢者の肺炎
肺炎でも症状が軽く始める人もいる。
高齢者の中には、軽い咳、息切れ、だるさ、食欲がない、微熱という軽めの症状が長引く人もいる。
若い人は症状が激しく出ることが多いが、高齢者は弱く出ることがある。
実は風邪から肺炎よりも「インフルエンザからの方が重い肺炎になりやすい」ため、高齢者は特に注意が必要。
高齢者がインフルエンザに罹り、その後二次性の肺炎を起こして亡くなるということは結構ある。
肺炎の検査・治療方法
レントゲン検査、血液検査、喀痰検査などを行い、肺炎の場合は抗菌薬で治療する。
肺炎の原因菌は肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、マイコプラズマなど様々あるため、原因菌が特定できれば抗菌薬の種類を変えて治療を行う。
最も多く重症化しやすいのは肺炎球菌。(全体の3割)
ケース② 重症化しやすい肺炎球菌とは
74歳女性は胸の痛み、全身のだるさを訴え、肺炎と診断された。
68歳男性は38℃以上の高熱、激しい咳、胸の痛みを訴え肺炎と診断された。
どちらも肺炎球菌に感染していた。
肺炎球菌は悪化すると毒素を出して、激しい炎症を起こし、呼吸不全(肺が機能しなくなり)から死に至る危険もある。
肺炎球菌に対抗するのが肺炎球菌対策ワクチン。
高齢者には肺炎球菌のワクチンの接種が勧められている。
肺炎球菌ワクチン
ワクチンには2種類ある。
23価肺炎球菌ワクチンは65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、85歳、90歳、95歳、100歳で定期接種対象。5年間有効。上記の年齢以外は任意接種で受けることができる。
13価肺炎球菌ワクチン定期接種対象外で、任意接種、1回のみの接種となっている。
→実は、肺炎球菌の膜には型があり、90種類以上ある。
これらは悪さをする程度も違う。
その中の代表的な(悪さをする)菌を23種類集めたワクチンが23価肺炎球菌ワクチン。(13価の方は、13種類の菌を集めたワクチンということ。)
肺炎球菌の予防接種は医師とよく相談を。
予防接種をしても100%肺炎を防げるわけではないが、接種しておけば肺炎になったとき
に重症化を防げる。
誤嚥性肺炎
92歳女性、これまでに2度誤嚥性肺炎で入院。
検査をすると、食べ物を上手く飲み込めていなかった。
喉頭蓋という食べ物が口から胃に運ばれる際に、間違って気道に落ちていかないように閉
まるはずの蓋がうまく閉まらず(嚥下反射という)、食べた物がのどにひっかかってい
た。
蓋が上手く閉まらずに食べたものや水分が気管から肺に入ってしまうことを誤嚥という。
飲み込んだものには口の中に存在する細菌が混ざる。
細菌は通常であれば、胃の中の胃酸で死滅する。
しかし誤嚥した場合、細菌は肺に到達して繁殖し、肺炎を起こす。
これを誤嚥性肺炎という。
女性は抗菌薬で肺炎治療をしながら、あるチョイスをした。
誤嚥性肺炎予防のチョイス
①口腔ケア
歯と歯茎の間をしっかり磨き、口の中に細菌を溜めないようにする。
②舌の運動・発声練習
飲み込む力を取り戻すためのトレーニングとして、舌の運動や発声練習が効果的。
これによって喉頭蓋の反射がよくなる。
③食事の工夫(嚥下食)
最初はそれほど噛まずに食べれる物から始まり、状態を見ながら少しずつ噛んで食べる食
事に切り替えていく。
④日常生活のリハビリ
立ち上がりなどの日常生活の動きを回復させるリハビリも行う。
肺炎予防ベストチョイス
○風邪やインフルエンザにならないために、外出の際はマスクを装着する、帰宅後は手洗
い・うがいをしっかりする、人混みにはあまりでないなど注意する必要がる。
○誤嚥性肺炎予防のためには口の中の清潔を常に保つ。(特に寝る前の歯磨きは重要)
○インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種をする。
第2章 肺がん
肺がんはがんの中でも最も死亡者数の多く、年間7万人以上が亡くなる。
なぜたばこを吸わないのに肺がんになったのか
83歳女性、2010年の肺がん検診で右肺に影を指摘され、専門病院で肺腺がんと診断。
主に肺の奥にできるがんで、女性は右肺に3cmのがんがあった。
さらに左肺にも別の種類のがんが見つかった。
女性も家族も非喫煙者。
幸い、初期の段階だったため手術で摘出となった。
右上葉の全摘除を行い、4ヶ月後に左上葉の一部を切除、いずれも成功し、5年後も元気
に暮らしている。
→なぜ非喫煙者が肺がんになるのか、原因は特定するのは難しい。
肺がんの症状
気管支付近にできる肺がんは気管支が刺激されるため、咳、痰、血痰などがある。
進行すると、発熱、胸痛、息苦しさ、呼吸困難が出て来るが、初期は症状がない。
風邪の症状と似ているため、症状が長引いている人(約2週間)は一度検診を受けた方が
良い。
女性に多い腺がんは、初期はほとんど症状がなく、症状が出た時点ではかなり進行してい
ることが多い。
肺がんを早期発見するための検査
○胸部X線検査
腺がんの発見に有効。
○喀痰細胞診
喫煙者に多い肺の入口付近に多いがんの発見に有効。
50歳以上のヘビースモーカーや40歳以上で6ヶ月以内に血痰があった人は自治体の肺がん検診で受けることができる。
○CT検査
人間ドックで受診可能で、X線検査よりも精度が高く、2cm以下の小さながんの発見に有効。
アメリカの調査では、ヘビースモーカーが年1回のCT検査を受けることで、肺がん死亡
のリスクを約20%減らすことができるという。
非喫煙者の肺がんは急に出てくることはなく、CT検査は5年おきに受けることがお勧め。
肺がん発生のリスクは非喫煙者を1とした場合、男性喫煙者は4.5倍、女性喫煙者は4.2
倍である。
禁煙した場合は、男性は2.2倍、女性は3.7倍に減ることが分かっている。
喫煙は肺がん以外の病気とも関連性が高いこともあり、禁煙は何歳からでも始めるべき。
肺がんの治療方針を決める5要素
①病期(ステージ)
②組織型
③遺伝子異常の状態
④体力
⑤気力
組織型別の治療方法
組織型は4つのタイプがある。
肺がんのうち、小細胞肺がんが15%、非小細胞肺がんが85%(うち腺がん60%、扁平上
皮がん20%、大細胞がん5%)に分けられる。
小細胞肺がんは進行が早く、発見された時点で転移していることが多いため、抗がん剤治
療が選択される。
非小細胞肺がんは初期であれば手術となる。
早期の腺がんのあるタイプであれば、ほぼ100%完治できる。
肺がんステージ別標準治療法
ⅠA、ⅠB、ⅡA、ⅡB、ⅢA、ⅢB、Ⅳの7段階に分けられる。
ⅠA~ⅢAでは手術可能で必要時、化学療法を追加する(がんの進行度、年齢、体力に応じ
て)
その他、体力的な問題等で手術ができない場合(Ⅳ以外)は、放射線療法を行い、必要時
化学療法を追加する。
Ⅳでは化学療法を行う。
肺がん診療ガイドラインといって標準的治療方法を作り、一応はそれに則って治療を勧め
ていく。
しかしがんの治療に絶対はないため、説明を受けて最終的には治療法を選んでもらうイン
フォームド・チョイスがいい結果を生む。
分子標的薬
がんは遺伝子の異常によって引き起こされる。
分子標的薬はある特定の遺伝子異常に狙いを定めて、ピンポイントで攻撃することで、
がんを抑制したり進行を抑えたりする効果が高い薬。
保険適応されている肺がんの分子標的薬は9種類ある。
最新の分子標的治療薬
2015年12月肺がん治療の画期的な薬が承認された。
それが免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ)である。
免疫細胞はがん細胞を攻撃する。
がん細胞はやられっぱなしではなく、免疫細胞の攻撃をくい止めるために腕を伸ばしてあ
るスイッチを止めてしまい、攻撃できないようにして増殖している。
そこで、免疫チェックポイント阻害剤はスイッチを保護し、がん細胞の腕を切る働きをする。
こうして免疫細胞が、がん細胞を攻撃し続けられるようにする。
ニボルマブの治療を受ける条件
①非小細胞がんの人、②手術が受けられない人または手術後再発した人、③すでに抗がん剤治療を受けた人のすべての項目を満たした場合に保険適応で受けられる。
現在、ニボルマブは肺がんの2割に効果があるとされている。
ニボルマブにも副作用はある。
肺がんベストチョイス
○医師としっかりコミュニケーションをとる。
○十分納得して治療をチョイスする。
Eテレ「チョイス@病気になったとき」2017年1月28日放送 「まとめスペシャル 肺の病気」より引用、要約、および台詞等一部書き起こし
この記事を書いた人
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